2017年11月15日、英語圏以外の女性作家を対象としたイギリスの翻訳文学賞 The Warwick Prize for Women in Translation の第1回受賞作が決定した。選ばれたのは多和田葉子の『Memoirs of a Polar Bear』(スーザン・バーノフスキー訳)で、賞金は1,000ポンドが贈呈される。なお、翻訳にフォーカスした賞とあって、規定により賞金は作者と訳者で折半となる。

The Warwick Prize for Women in Translationは、近年評価が鰻登りのウォーリック大学が新設した文学賞だ。公式サイトによると「翻訳文学におけるジェンダーの不均衡を是正すること」「英国内で読むことのできる女性作家を増やすこと」が創設の目的だという。英訳済みの女性作家作品であればジャンルは問われず、今回のノミネート作品にはスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチのルポルタージュなども含まれていたが、最終的に栄冠を勝ち取ったのは多和田の小説だった。

受賞した『Memoirs of a Polar Bear』は、2011年に野間文芸賞を受賞した『雪の練習生』の英訳版だ。ただし少々ややこしいのは、これが日本語から翻訳されたものではないという点だろう。30年以上ドイツ在住である多和田は日本語だけでなくドイツ語でも執筆することで知られるが、この作品についても先に自ら『Etüden im Schnee』のタイトルでドイツ語版を発表していた。『Memoirs~』は、多和田本人の希望によりこのドイツ語版からの訳出となっている。

これまでクライスト賞などドイツの文学賞も複数受賞してきた多和田だが、英語圏での受賞は今回が初だ。国際的に評価されている作家だけに、これを機にますますの飛躍が期待される。