今月は新潮、文學界、群像、すばる、文藝の5誌が発売された。5誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2025年8月号

・【創作】では、間宮改衣「弔いのひ」、滝口悠生の短篇「テレポートの軌道」、佐藤厚志「熊谷草」、筒井康隆による掌編「チャンス」、高山羽根子の連作「パニック」が掲載。
「第13回河合隼雄賞」物語賞受賞作は、小池水音「あのころの僕は」。学芸賞受賞作は、鈴木俊貴「僕には鳥の言葉がわかる」。岩宮恵子(物語賞)、中沢新一(学芸賞)による選評も併せて。

・辻原登による新連載「山吹散るか ほろほろと」(第1回)がスタート。

文學界 2025年8月号

・【特集 24人のショートショート】として、多和田葉子/円城塔/青柳菜摘/豊永浩平/田中慎弥/上坂あゆ美/朝比奈秋/伴名練/砂川文次/高山羽根子/野崎有以/近藤聡乃/児玉雨子/柴田聡子/島口大樹/のもとしゅうへい/文月悠光/ニシダ/吉田靖直/戌井昭人/市街地ギャオ/南翔太/市川沙央/俵万智という豪華執筆陣によるショートショートが一挙掲載。

・【創作】では、筒井康隆「車椅子の男」、町田康「覚書」、小野正嗣「空き家の妊婦」、高瀬隼子「鉛筆の瞑想」が掲載。そして、何と言っても注目したいのは大木芙沙子による中編「篝火」。破滅派からついに芥川賞候補が誕生するのか、刮目せよ。

・【文学フリマ東京40 ルポ】として、先日東京ビックサイトで開催された「第40回文学フリマ東京」の様子を古賀及子と坂崎かおるがルポで伝える。

・頭木弘樹「痛いところから見えるもの」が最終回を迎える。

群像 2025年8月号

・【特集・柴崎友香の時と場所】として、『帰れない探偵』を上梓した柴崎友香に注目。柴田元幸×柴崎友香による対談「時空を探偵する小説」、柴崎友香によるエッセイ「知らない街と知っている街の隙間で」。さらに、書評ではマイケル・エメリック「探偵と私たちの未来」、島口大樹「記録と忘却のあわいへと分け入る眼差し」。

・創作では古川日出男「夏迷宮」、鳥山まことによる中篇「時の家」、【掌篇シリーズ】筒井康隆「恐怖の配当」がそれぞれ掲載。

・大谷能生「音と言葉のデジタリティ」、川内有緒「ロッコク・キッチン 浜通りでメシを食う」がそれぞれ最終回を迎える。

すばる 2025年8月号

・ピンク地底人3号による小説「カンザキさん」、遠野遥による【小説短期集中掲載 最終回】「吸血鬼」(4)がそれぞれ掲載。

・岡本隆司による新連載「中国怪人列伝」がスタート。

・小森陽一×成田龍一「大江健三郎を読む――文学と歴史の複眼的視点から」が最終回を迎える。

文藝 2025年秋季号

・【特集 戦争、物語る傷跡】として、創作では、村田沙耶香「忘却」、柴崎友香「おだやかな日常について」、町屋良平「少年AB」、芦沢央「ペグマン」、高橋知由「咬傷」、エッセイでは宮地尚子・清水加奈子「〈内海〉の声は聴こえるか」、五所純子「青っ恥」、大田ステファニー歓人「八十年ぶんのかさぶた」、マユンキキ「父の傷、私の傷」、大前粟生「戦争の身体」が一挙。

 さらに、小林エリカ×永井玲衣×奈倉有里による鼎談「語りたい、でも忘れたい」、齋藤美衣の読書ノート「傷跡をまなざすための読書」、信田さよ子の論考「被害と傷、そしてトラウマ」も。

・いとうせいこうによる新連載「難民移民モノローグ」、岸政彦の新連載「犬は人生」がそれぞれスタート。

・創作では、児玉雨子「目立った傷や汚れなし」、佐佐木陸による文藝賞受賞第一作「ごみのはての」、小原晩「今日はユーカリ食べちゃったから眠くて眠くて」が掲載。

・朝吹真理子による連載「ゆめ」が最終回を迎える。

以上、2025年7月発売の5誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。