オルタナキュレーション「惑星と口笛」が主催する「第6回ブンゲイファイトクラブ (BFC6)」 決勝の結果が11月24日に発表され、「静かなるもの」作者の藤崎ほつまが優勝者となった。準優勝は「プールの記憶」作者の深澤うろこ。決勝ジャッジは松本勝手口が担当した。

 ブンゲイファイトクラブは西崎憲が運営する「惑星と口笛」が2018年から毎年開催するオンラインの文芸イベント。文芸による名誉をかけた戦いで、賞金なし、参加資格もジャンルの制限もなく、原稿用紙六枚以内で書かれた作品で戦う文芸トーナメント。出場ファイターを同じく公募で集めたジャッジが判定して勝ち上がりを決める。さらに、ジャッジ自身もファイターによってジャッジされるというルールが特徴的だ。

 「静かなるもの」は、イタリア・ボローニャで静物画を描き続けた1890年生まれの画家ジョルジョ・モランディをモデルにしたと思われる小説で、ムッソリーニ政権下のイタリアの不穏さとは隔離されたような閉じられた世界観の中でも芸術に対する並々ならないこだわりを感じさせる。巧みな言語表現それ自体が芸術的な作品。

 「プールの記憶」は、学校を舞台にしたらしき小説で、屋上にある水の入っていないプールに理由も明示されずに生徒たちが次々と押し込まれて、さらに教師も最終的に詰め込まれる。アウシュビッツやガザの虐殺を想起させつつ、その中で不満を漏らす生徒たちの声がどこかポップで、突き放したような終わり方とのギャップが不思議な読み心地のする作品。

 藤崎は2014年からセルフパブリッシングで小説を発表しており、2016年から2021年までセルパブ有志によるムック本『このセルフパブリッシングがすごい』の編集長も務めている。昨年刊行された『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』(Kagya Books)に短編「かつて公園と呼ばれたサウダーヂ」が収録されている。BFC3で「明星」、続くBFC4で「柱のきず」でファイターとして出場しており、今回ついに栄冠を手にした。深澤は今回初出場ながら、準優勝という躍進を見せた。これからの活躍に注目したい。

 今回は破滅派同人の本戦出場は残念ながら観測できなかったが、本戦前の最終候補として一希零「ぼくはぽんた。」が選出されている。来年は同人の活躍にも期待したい。