KADOKAWAが主催する「第15回山田風太郎賞」を蝉谷めぐ実『万両役者の扇』(新潮社)が受賞した。

 「山田風太郎賞」は戦後日本を代表する大衆小説家の山田風太郎の独創的な作品群と、大衆性、ノンジャンル性、反骨精神など氏が貫いた作家的姿勢への敬意を礎に有望な作家の作品を発掘顕彰するために創設された。新人、新進、中堅作家の作品が対象となる。今回の最終候補作には、受賞作のほか、逢坂冬馬『歌われなかった海賊へ』(早川書房)、河野裕『彗星を追うヴァンパイア』(KADOKAWA)、長浦京『1947』(光文社)、早見和真『アルプス席の母』(小学館)の五作が挙がっていた。

 蝉谷は、1992年7月生まれ。大阪府豊中市出身。早稲田大学文学部で演劇映像コースを専攻。2020年『化け者心中』で「第11回小説野性時代新人賞」を受賞しデビュー。21年、同作で「第10回日本歴史時代作家協会賞新人賞」、「第27回中山義秀文学賞」を受賞。22年『おんなの女房』で「第10回野村胡堂文学賞」、「第44回吉川英治文学新人賞」を受賞している。

 『万両役者の扇』のあらすじは、江戸森田座気鋭の役者・今村扇五郎にお熱のお春が、女房の座を狙って近づいたのは……。芸を追求してやまない扇五郎に魅せられた面々の、狂ってゆく人生の歯車。ある日、若手役者の他殺体があがり、ついには扇五郎本人も――「芸のため」ならどこまでの所業が許されるのか。芝居の虚実を濃密に描き切ったエンタメ時代小説。

 10月21日に都内の日東京會館で選考委員の朝井まかて、恩田陸、貴志祐介、夢枕獏の審査(筒井康隆は欠席)による選考会が行われた。

 本賞の贈賞式および祝賀会は11月下旬に都内で開催される。角川三賞として、本賞と、「第44回横溝正史ミステリ&ホラー大賞」「第15回小説 野性時代 新人賞」の贈賞式・祝賀会もあわせて行う。蝉谷には、正賞として記念品(名入り万年筆)と副賞100万円が贈られる。

 なお、選評は『小説 野性時代 特別編集 2024年冬号』に掲載予定。