今月は新潮、文學界、群像、すばる、文藝の5誌が発売された。5誌の概観をここで紹介しよう。
新潮 2025年11月号
・「第24回小林秀雄賞」受賞作は、川本三郎「荷風の昭和」(≪前篇≫関東大震災から日米開戦まで≪後編≫偏奇館焼亡から最期の日まで)。片山杜秀、國分功一郎、関川夏央、堀江敏幸、養老孟司による選評も。
・【創作】では、村上春樹「夏帆とシロアリの女王――<夏帆>その3」筒井康隆の掌編「列車と刑罰」、髙村薫の連載「マキノ」(第2回)、村田喜代子の連載「その後の桜」(第3回)がそれぞれ掲載。
・「第33回萩原朔太郎賞」受賞作は、大崎清夏「暗闇に手をひらく」。選考委員の杉本真維子、日和聡子、松浦寿輝、三浦雅士、和合亮一による選評も掲載。
・「第57回新潮新人賞」は、内田ミチル「赤いベスト」と有賀未来「あなたが走ったことないような坂道」。内田の受賞者インタビュー「方言を使い、自分から離れたところへ」、有賀の受賞者インタビュー「目を逸らさずに「痛み」を書く」、選考委員の上田岳弘、大澤信亮、小山田浩子、金原ひとみ、又吉直樹による選評も併せて。
文學界 2025年11月号
・【特集】「作家はAIと何を話すのか」として、村田沙耶香×栗原聡による対談、『19人の「あなたはAIと何を話していますか?」』と題し、上田岳弘、奈倉有里、小池水音、竹中優子、北村匡平、待川匙、羽田圭介、犬山紙子、暮田真名、豊永浩平、大木芙沙子、奥野紗世子、綿矢りさ、永方佑樹、市街地ギャオ、児玉雨子、間宮改衣、樋口六華、滝口悠生のエッセイを一挙。
さらに、古川真人、向坂くじらの体験記、三宅陽一郎のインタビュー「なぜ人はAIと話すのか」も。
・【創作】では、杉本裕孝「刻印」、板垣真任「おとうsea」が掲載。
・斧屋による新連載「不完全なものにとってのparfait」がスタート。
・【特集】「市川沙央『女の子の背骨』の背骨」として、『女の子の背骨』が刊行される市川に注目。聞き手・岩川ありさによるインタビュー「障害者として(も)純文学の中心に居座りたい」、創作「Pow(d)er」、朝比奈秋との対談、柳楽馨による作家論。
群像 2025年11月号
・創作では古川日出男「冬迷宮」、筒井康隆による【掌篇シリーズ】「一斉手入れ」がそれぞれ掲載。
・【特集・口訳 町田康】として、対談では京極夏彦×町田康「突破口としての「文体」」、小川哲×町田康「説明、情報、順番――ぜんぶ小説の話」、渡辺祐真による書評「利権と騒乱の世で愛と平和を望みつつも少しシニカルなあなたへ」、町田康によるエッセイ「又やってまいました」、ポリマ真一の創作「口訳 太平記 平和にチャンスを与えなさい」。
・武塙麻衣子による連載「西高東低マンション」が最終回を迎える。
・石井美保の新連載「恋文の行方」がスタート。
すばる 2025年11月号
・【小説】では、金石範「ゴルゴタの丘のゲリラ」が掲載。
・「第49回すばる文学賞」受賞作は、更地郊「粉瘤息子都落ち択」。選考委員の奥泉光、金原ひとみ、川上未映子、岸本佐知子、田中慎弥による選評と受賞者インタビュー(聞き手・構成 編集部)も併せて。
・綿矢りさによる新連載「シャブシャブ上海」がスタート。
・【『百日と無限の夜』刊行記念対談】として、『百日と無限の夜』を上梓した谷崎由依×中村佑子による対談「〈母〉の深淵を巡り語る」。
文藝 2025年冬季号
・【特集1山田詠美デビュー40周年「女流」の矜持、文学の倫理】として、デビュー40周年を迎える山田詠美を特集。特別エッセイ「私は私の さっか道」、聞き手を斎藤美奈子が務めるロングインタビュー「個人の文学を、自分だけの言葉で」、山田詠美・選「ザッツ女流作家作品Best10」、松浦理英子との対談「年月が熟成させるもの」。
さらに、「本人不在のAmy放談」として島田雅彦×奥泉光「文学的青春時代を振り返る」、渡邊英理による論考「『女流』と呼ばれた女たち 山田詠美『三頭の蝶の道』と女性作家の歴史」、はるな檸檬による漫画「ラビット病」(みみみ警報器)、「私たちのAmy」として、金原ひとみ「終わらない救済」、平松洋子「あたかも蟷螂のような」、ジェーン・スー「確かにそこにあるもの」、鈴木涼美「蝶の罠とギャルの道」、安堂ホセ「山田詠美さま、」。
・【特集2再起動する日本語文学】として、『BUTTER』英訳版が英「ダガー賞」の最終候補になった柚木麻子と、同じく『ババヤガの夜』英訳版で「ダガー賞」を受賞した王谷晶による対談「アイス・エイジを燃やす、私たちの勇気」、レベッカ・ブラウン×木村紅美「ケアは巡り合う」。王谷晶のダガー賞受賞記念エッセイ「アメスピ半カートン、根暗作家のロンドン滞在記」、エッセイでは、サム・ベット「ヒーリングするのか?化かして消す『消化文学』」、デビッド・ボイド「太宰とディズニーランド」、米田雅早「邯鄲ライフの翻訳畑」、手嶋優紀「ロサンゼルスの放課後」を一挙。
・「第62回文藝賞」受賞作は、坂本湾「BOXBOXBOXBOX」。坂本湾による受賞の言葉、選考委員によるそれぞれの選評、小川哲「選ぶことの難しさ」、角田光代「見えない場所、見えない中身」、町田康「選評」、村田沙耶香「作品の『強さ』を保つもの」も。受賞記念対談として、小川哲×坂本湾「どこまでいっても逃げられない、焦燥感を『箱』に託す」、選考経過を掲載。
・創作では、紗倉まな「あの子のかわり」、才谷景の文藝賞受賞第一作「庭に接ぐ」、山下紘加「聖域」がそれぞれ掲載。
以上、今月の文芸誌読みどころを紹介した。読書の一助になれば幸いである。

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