『戦前不敬発言大全』『戦前反戦発言大全』で衝撃的なデビューを飾った髙井だが、前著『鬼畜米英漫画全集』ではプロパガンダメディアとしての反米漫画を紹介した。本作『反日アニメUSA』では戦時下(1941年から1945年)におけるアメリカのアニメ放送を紹介し、そこで日本がどのように戯画化されて描かれているかを紹介している。

具体例としては、スーパーマン、ポパイ、ミッキーマウスなどのアニメで日本人がどう描かれているかが紹介される。戦況が深刻化していくに従って、日本人の「悪さ」は当然ながら「より悪く」なっていく。アメリカ国内において日本への心境がどう変化していったかを知るための最良の書籍である。著者が序文で述べているように、自由の国アメリカでさえ、人々は国民国家的な憎悪をたぎらせていったのだ。

いま世界ではウクライナ、パレスチナで大きな戦火が上がっており、SNSでもプロパガンダ合戦が繰り広げられている。一説では、ボットネットワークによって他国のSNS上でのデマ拡散に力を注ぐ国もあるという。そうした「何が真実つかわからない」状況において、民主的な国における戦時プロパガンダを知っておくことは重要だ。

また、日本人は夏になると戦争を振り返る修正があるので、季節的にもぴったりの一冊である。