阿賀北ノベルジャム実行委員会、新発田市、聖籠町共催の「第4回阿賀北ノベルジャム2023」グランプリに、破滅派同人でもある鹿嶌安路『黒羊羹』が選ばれた。また、「あがきた未来賞」にフジサワチヒロ『新発田まで傷心旅行へ行ってきました』、「デザイン賞」にチーム揚芋衆デザインチーム(蟹川森子・山桃ゆう)、「Xaris特別賞」に篠田すみれがそれぞれ選ばれた。

 ノベルジャムは、「著者」と「編集者」と「デザイナー」がリアルに集まってチームを作り、ゼロから小説を書き上げ編集・校正して表紙を付け「本」にして販売までを行う『短期集中型の作品制作・販売企画』。3者が、あたかもジャムセッション(即興演奏)をするが如く、互いに刺激を得ながらその場で作品を創り上げていく(「ノベルジャム」はNPO法人HON.jpの登録商標)。

 2020年に、それまで12年間続いてきた文学賞「阿賀北ロマン賞」を承継する形で、第1回目となる阿賀北ノベルジャムが開催された。当初の予定では本家ノベルジャム同様、2泊3日の合宿形式で実施する予定だったが、新型コロナウイルスの影響によりイベントをオンラインで実施。以後オンラインツールを取り入れた運営を行っている。2023年度は更にAIも活用。

 制作途中において、プロット完成段階、初稿ができた段階でオンライン番組を通じて各チームの進捗具合を報告しながら、創作活動をオープンにしているのが特徴。3カ月の「制作期間」後、作品の「プロモーション期間」が設けられている。アンバサダーにNwgiccoのMegu、アドバイザーを小説家の綾崎隼が務める。事前に知らされるテーマと阿賀北地域の魅力を反映した2万字以内以内も小説で昨年10月から12月までの執筆期間と、プロモーション期間を経てグランプリが決定した。

 『黒羊羹』のあらすじは、新発田藩藩主の名代として京都に上洛した窪田平兵衛武文は、弱小藩である故郷の生き残りをかけ、権謀術数を重ねてきた。いま、遠く離れた長岡攻城戦の成否に自分の命が懸かっていることを覚悟し、人質として京都薩摩藩邸で攻城戦成否の報を待つ最中、平兵衛は友人である薩摩藩士吉井友実に自らの生い立ちを語るよう迫られる。平兵衛が真に新発田のために働いたのか、また平兵衛をこの先信じられるのか、友実はこれを機会に推し量ろうとした。終には互いが互いの胸中に、信頼を越える「祈り」を見つけ出す。

 審査委員は大正大学表現学部教授の仲俣暁生審査委員長、敬和学園大学元非常勤講師の鈴木美和子、新潟日報社新発田総局長兼論説編集委員の野上丈史。デザイン審査委員を株式会社Gugenka代表取締役CEO三上昌史が務めた。