今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2025年12月号

・【特別企画・ダブルスタンダード】として、ロックバンド・クリープハイプのフロントマンとして音楽活動を行う尾崎世界観「オケラカイドー」、お笑いコンビ・ラランドとして芸人を本業とするニシダ「だけど思い出す」、そして尾崎世界観×ニシダによる対談 「二足のわらじでどう歩く?」を掲載。

・【創作】では、畠山丑雄「叫び」、筒井康隆「T字路の奥」、黒川創「大阪で海に至る」、高山羽根子「ガルダ・ロジスティクス」がそれぞれ掲載。

・湯浅学による新連載「大滝詠一と私」(第1回)がスタート。

・池澤夏樹×ホンマタカシによる対談「『新しい故郷』へのまなざし――難民の表象をめぐって」。

文學界 2025年12月号

・【新ノーベル文学賞作家 クラスナホルカイ・ラースロー】として、早稲田みかによる作家論「クラスナホルカイの文学世界」、川野芽生のエッセイ「終わらない終末と、饒舌の沈黙」。

・【創作】では、久栖博季「貝殻航路」、奥野紗世子「この人の知らない戦争」が掲載。さらに、「2025年下半期同人雑誌優秀作」に選ばれた阿部あみ「処暑」。

・【詩歌】では、西プネウマ「たのしい誤算」。

・つげ義春作品を映画化した、三宅監督の最新作『旅と日々』について、三宅唱×柴崎友香の対談「見ないとわからないこと」、王谷晶×セメントTHING「過激なのに品がいい」では、ポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作『ワン・バトル・アフター・アナザー』を語り尽くす。

群像 2025年12月号

・創作では綾木朱美「恥の龍」、市街地ギャオ「アニマル・フーガ」の中篇を一挙。さらに、井戸川射子「永遠を囲う壁」、くどうれいん「紙の爪」、乗代雄介「ある声の系譜」がそれぞれ掲載。

・【『言語化するための小説思考』刊行記念対談】として、小川哲×三宅香帆による「「言葉の向こう側」に目を向ける」。

・【論点】では、今年7月に『過疎ビジネス』(集英社新書)を上梓した横山勲による「地方を食い物にする「過疎ビジネス」」。

・田村正資「あいまいな世界の愛し方」が最終回を迎える。

・多和田葉子「不在事件」、平野啓一郎「ニューヨーク滞在記」、伊藤亜和「リンゴのくしゃみ」、九月「旅する芸人」の新連載がそれぞれスタート。

すばる 2025年12月号

・【小説】では、新崎瞳「いぬいぬ」、上田岳弘「もっと下品な男」、竹林美佳「わたしが魚になる頃に」が掲載。

・【詩歌文学館賞 第四十回記念シンポジウム】井戸川射子×小佐野彈×堀田季何×暮田真名×神野紗希「詩歌の未来を語る─越境の時代に─」。

・【エッセイ】では、阿部賢一「長文という全体論的な試み、あるいはクラスナホルカイの小説世界」、上田岳弘「終末の中で。あるいは「太陽」を書きながら」が掲載。

・村井理子「湖畔のブッククラブ」が最終回を迎える。

以上、今月の文芸誌読みどころを紹介した。読書の一助になれば幸いである。