先週、チャンドラーの長いお別れ(村上春樹の訳じゃない方)を会社の喫煙所で読んでいると、

「チャンドラーなんていい趣味してるね」と一日で二人のおじさんに言われた。おじさんはハードボイルドが

好きらしい。確かにハードボイルドの主人公は日々がスリリングではあるものの、自分だけの頑なな習慣を大切にしている。

毎日飲むマックの100円コーヒーと、探偵が自分で入れるコーヒーは同じなのかもしれない。そういえばマーロウ探偵はコーヒーを、

なんとブラックではなく、角砂糖を2つ(!)、その上、クリームまで。これはちょっとした衝撃だった。

売春婦は赤い口紅を、同棲を始めたカップルはトイレットペーパーを、秘書はガーターベルトを、儚い少女は白いワンピースをってな具合に探偵はブラックコーヒーだと思っていた。私自身ブラックコーヒーが好きというよりも、それらのイメージに流されるように苦いコーヒーをちびちびとすすっている。

暑い季節に備えて、イランの作家、サーデグへダーヤトの『生埋めーある狂人の手記より』という本を読んだ。イランの民話もあり、SFもあり、倒錯した恋愛物語もあり、とても充実した一冊だった。SF「S.G.L.L.」には、地球全域での集団自殺について書いてある。けれどこんな時代だから愛し合おうといった甘さは文中になく、孤独を選び日々を過ごす主人公は全てを受け入れるだけ。全体に漂う閉塞感、孤独感がイランという土地の持つものなの だとしたら、日本に漂うものとはどのようなものだろうか。

今日もお家で考える。。     おじさまに好かれるためには小脇にチャンドラーの本(村上春樹のロンググッドバイではだめ。あくまで邦題が長いお別れでないとおじさまには分かってもらえない)を 挟んで。きっと夕飯の心配はなくなるはず。

深川 潮

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