ここ最近、立て続けに「家庭や子どもを作りなさい」とアドバイスされました。三十も近くなってきた独身男へのアドバイスとして当たり前過ぎるアドバイスだ、と思うのだが、よくよく考えるとそうでもない。

というのは、指摘してきた彼らは高学歴で社会的な成功者たちなのです。どちらかというと、「家庭的」という言葉から程遠いように思われる雰囲気。

にもかかわらず、振り絞って投げ掛けたアドバイスは、「家庭を作りなさい」。

親に言われるなら分かる。いかにも「家族命」っぽい人に言われるのも、分かる。

え、なぜ、よりによってあなたがそのようなアドバイスを…? と、違和感を感じてしまったんです。

そりゃあ、家族がないと体裁が悪い、そもそも寂しい。そんなことは分かっている。でも、そうは言っても、「じゃあ家族を作りましょう」って易々と動けるわけじゃあないでしょ。

……そういうぐずぐずしている傾向を一蹴するかのような、強引なアドバイスに聞こえたんです。

それについて、サウナの中で、ウェルベック的に考えてみた。――近代個人主義のピーク世代にとって、あらゆる理想(LOVE&PEACEとか)の輝きが失せて見える現代、唯一言えることが「家族を持て」ということなんだ。焼き払われたなかに生き残った彼らの、唯一の牙城なんだ。或いは、少子化が進みばらばらになっていく社会を危惧する内部高級分子が、その意識下にきっちり組み込まれた構造的社会的要請に基づき、アジッてるんだ――。云々。

サウナの中でそうやって汗をかいていると、背後から歌声が聞こえてきました。

hey,jude~……”

振り向くと、白髪のおっさんが歌ってました。

BEATLESを。

5歳の息子を励ます歌を。

簡潔&旋律的。

ウェルベック的に考えるをやめて、しばし、聞き入りました。

そして、そういえば、明日はジョン・レノンの命日でした。

手嶋淳