今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2025年9月号

・最果タヒによる詩「2025の愛――萩原朔太郎賞受賞にあわせて」。

・【創作】では、八木詠美「三名一体」、松浦寿輝「坂」、筒井康隆による掌編「性」が掲載。黒川創の連作「京から、伏見へ」、村田喜代子の連載「その後の桜」と辻原登「山吹散るか ほろほろと」がそれぞれ第2回を迎える。

・高橋源一郎による評論「カルヴィーノの文学講義2025」が掲載。若い頃の高橋がもっとも大きな影響を受けたという作家がいま生きていたなら。遺稿に基づく想像的再構成。

・髙村薫による新連載「マキノ」(第1回)がスタート。

文學界 2025年9月号

・【特集】「ダロウェイ夫人なんかこわくない!」として、刊行から百年を迎えたウルフ『ダロウェイ夫人』の魅力に様々な角度からあらためて迫る。山崎ナオコーラ×辛酸なめ子×柿内正午による鼎談「「夫人」でいいじゃないか!――百年後に『ダロウェイ夫人』を読む」、オマージュ創作「百年後のダロウェイ夫人」として、山内マリコ「愉快、爽快」、沼田真佑「人狼の唄」、円城塔「Ms. Narrow Way」、大崎清夏「手招き」、鈴木結生「エル・ニモ」。

 さらに、星野真志のレビュー「「現代の『ダロウェイ夫人』」?――ナターシャ・ブラウン『アセンブリ』について」、立田敦子「AIとウルフをめぐる現代の〝意識の流れ〟――新作映画『Dalloway』評」、大森静佳の短歌十首「水底の紫陽花―クラリッサ・ダロウェイに寄せて」、【特別エッセイ】として、鈴木結生「書かれなかった自伝――ヴァージニア・ウルフ『ある作家の日記』を再読して」を一挙。

・【創作】では、筒井康隆「モンキー・ビジネス」、古川真人「近づくと遠ざかる船」、戌井昭人「あんたはだいじょうぶ」。

・原爆投下から八十年の節目に初めて東京で上演を迎えた、アラン・マレットによる英語能『オッペンハイマー』の能台本の全訳を掲載。さらに、アラン・マレットによるエッセイ「初演より十年を迎えて」、小山太一のエッセイ「オッペンハイマーのフットワーク」も併せて。

・井戸川射子「舞う砂も道の実り」が連載完結。

群像 2025年9月号

・【戦争総特集/80年目のサマー・ソルジャー】として、滝口悠生の創作「花火」、石沢麻依の新連載「この空の下で」、批評では、安藤礼二「不滅のイラン」、工藤庸子「戦争と野上彌生子」、平芳裕子「服と反戦の現在地 ウクライナのファッションから」、渡邊英理「人/類、人/種のために語り継ぐ言葉 林京子の文学世界」。

 さらに、尾崎真理子のルポルタージュ「大江健三郎と『ヒロシマ・ノート』の人々」、ノンフィクションでは、阿部公彦「父たちのこと 番外篇 フランクのこと」、伊藤春奈「トランスローカルに刻む記憶 北海道・新大久保・大村・有田」、前田啓介「「物語」の外に立つ」、イリナ・グリゴレのエッセイ「戦闘機ではなく、織り機」を一挙。

・創作では長嶋有「パルーカヴィルの夏」、筒井康隆による【掌篇シリーズ】「防衛」、乗代雄介「背番号10のヘッドスライディング」がそれぞれ掲載。

・【随筆】では、井口淳子「中国の中の小さなフランス」、九月「鳩は太陽のありかを知っている」、髙山花子「リゴドンの思い出」、チヒロ・オオダテ「頭の中の人生」、内藤由美子「映画館だけはやめておけ」、新谷和輝「ひとりでみんなと生きていく方法」。

すばる 2025年9月号

・【小説】では、古川真人「豚の泳ぐ日」、石沢麻依「糸芝居」、上田岳弘「ノー・ファンタジー」がそれぞれ掲載。

・四方田犬彦による論考「エドワード・W・サイードの〈始まり〉」。

・年森瑛による新連載「四捨五入したら趣味」がスタート。

・岡野大嗣「夜なのに、夜みたい」が最終回を迎える。

・「第49回すばる文学賞」予選通過作が発表。

以上、2025年8月発売の5誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。