今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2026年3月号

・いしいしんじ×滝口悠生による対談「『チェロ湖』の声に耳を澄ます」。無意識の底に糸を垂らし、「ものがたり」を釣る。聞くことに徹した小説家同士の、語りのありようを巡る対話。

・濱野ちひろによる評論「ドールの夫たちと他者性」が掲載。人形やロボットと性関係を持つ人々に迫る『無機的な恋人たち』の著者が掴んだ、愛についてのひとつの仮説。

・池澤夏樹×田口耕平による新連載「教室で読む文学」(第1回)がスタート。『日本文学全集』を編んだ作家と高校教師が、教科書の定番作品を読み直す。初回は芥川龍之介「羅生門」。大森静佳の新連載「うたと夢の出会う場所」(第1回)がスタート。百よりもっと多い穴あけび、古墳、洗顔……時間の割れ目からの光がやがて作品を形づくる。気鋭の歌人による、散文と短歌の享楽。

・村上春樹による創作「夏帆とモーターサイクルの男、そしてスカーレット・ヨハンソン」――〈夏帆〉その4(完結)が掲載。

文學界 2026年3月号

・【短篇競作】として、田中慎弥「一羽」、山崎ナオコーラ「脳が三つに割れる」、高瀬隼子「一息の劇場」、鳥山まこと「銭湯」、栗原知子「不思議な琥珀」、樋口六華「はろー、独房。 」。島口大樹「風景たち」、越智康貴「出現」、滝口悠生「祝日」を一挙。

・【創作】では、鳥トマト「漫画でイけ」。崖っぷち新人漫画家・ツグミはロジックを信奉する編集者・野分に出会う。『東京最低最悪最高!』が話題の漫画家による初中篇。筒井康隆「倨傲」が掲載。

・【新芥川賞作家】として、先日『第174回芥川龍之介賞』を受賞した、鳥山まことと畠山丑雄にフューチャー。鳥山まこと「芥川賞を獲りに行く」、畠山丑雄「先生と私」とそれぞれ特別エッセイを掲載。さらに、柿内正午「 空洞(ブランクスペース)の作家「時の家」論」、倉本さおり「「土地の来歴」 をめぐる想像力 ――「叫び」論」とそれぞれの作品論も併せて。

・四方田犬彦×渡邊英理による対談「二〇二六年、文学はいかに可能か」。

・江南亜美子による連載「「わたし」はひとつのポータル」と、松尾スズキの連載「家々(いえいえ)、家々家々(いえいえいえいえ)」がそれぞれ最終回を迎える。

群像 2026年3月号

・【創作】では、乗代雄介「授賞式のメンバー」、戌井昭人「地元のヨーコ」が掲載。武塙麻衣子による中篇「春の波」、【掌篇シリーズ】筒井康隆「ビル街」。

・【『はくしむるち』刊行記念特集・豊永浩平】として、池澤夏樹×豊永浩平の対談「言葉と土地の境界線上で書く」、聞き手=江南亜美子によるインタビュー「歴史といま/ここをつなぐ文学」、渡邊英理による批評「反暴力に向けて、「戦後」の不在を抱きとる言葉」、エッセイ「ムルチ、沖縄に現わる」を一挙。

・岩川ありさによる批評の新連載「自分を生きる備忘録」、エッセイでは田村正資「新書のツボ」、江南亜美子「人文のツボ」、豊永浩平「外文のツボ」の新連載がそれぞれスタート。

・酒井順子「習い事だけしていたい」、鈴木涼美「不浄流しの少し前」、永井玲衣×八木咲「せんそうって」、ブレイディみかこ「世界は誤訳でまわってる」がそれぞれ最終回を迎える。

すばる 2026年3月号

・藤井省三による論考「新美南吉と魯迅そして中国──日中戦争下の童話作家と「阿Q正伝」」。

・【小説】では、上田岳弘「ソー・ファンタジー」、古川真人「おまえにはわからん」、佐倉ユミ「ケラルの城」、三角みづ紀「嫌いなひとが死んだ」が掲載。

・【『カンザキさん』刊行記念対談】として、ピンク地底人3号×鳥山まこと(『時の家』芥川賞受賞)「言葉と物語が立ち上がるまで」。

・角幡唯介「裸の大地 第三部 エルズミア」、渡邉裕規「ナベのくちから」がそれぞれ最終回を迎える。