今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2025年10月号

・町屋良平による批評「小説の死後――(にも書かれる散文のために)―― 保坂和志、私、青木淳悟」文芸誌媒体横断の批評プロジェクト最終篇。

・【創作】では、松浦理英子による前作から三年ぶりとなる新作「今度は異性愛」、小野正嗣 「生真面目な時」、筒井康隆による掌編「父」、小山田浩子による連作「からの旅」(4)、高山羽根子「ルンタ・ホース」。辻原登の連載「山吹散るか ほろほろと」(第3回)が掲載。

・奥泉光×円城塔による対談「嘘はつかぬが、ほらは吹く――『虚傳集』と『去年、本能寺で』をめぐって」。

・「第57回新潮新人賞」予選通過作品が発表。

文學界 2025年10月号

・【特集】「綿矢りさ『激しく煌(きら)めく短い命』刊行記念」として、聞き手・江南亜美子によるインタビュー「人間くさい百合小説」、武内佳代の書評「真摯で、丁寧な、新境地としての小説」、首藤凜「生きる体で得ていく愛」。

・【創作】では、筒井康隆「蒲鉾と高下駄」、坂崎かおる「へび」、三木三奈「わずらい」が掲載。

・町屋良平による新連載「無限水晶」がスタート。

・金川晋吾による連載「でもだからこそ日誌」が最終回を迎える。

群像 2025年10月号

・創作では豊永浩平「はくしむるち」、筒井康隆による【掌篇シリーズ】「ランチタイム」、井戸川射子「一、二景」、金原ひとみ「モヤとチアーズ」がそれぞれ掲載。

・小原奈実「脳葉の蔭より」、塩田武士「メディア・スケッチブック 感熱紙の卒業証書」、平山周吉「「雑」の風景」、毬矢まりえ×森山恵「源氏百人一首 らせん譚」と新連載がそれぞれスタート。

・井戸川射子「私的応答」が最終回を迎える。

・【論点】として、島崎周「ジャニーズ性加害問題で起きた「パラダイムシフト」の行方」。

すばる 2025年10月号

・【小説】では、中西智佐乃「デーリィサワーメロン味」が掲載。

・【特集:「笑い」はむずかしい】として、滝口悠生×立川吉笑の対談「語りの自由はどこにある」、鈴木亘×鈴木ジェロニモ「笑いと兄弟の適切な距離」、浅野千鶴×西出結×佐久間麻由による鼎談「劇場にしかない笑いのために」、高瀬隼子の小説「虫のいどころ」、石田夏穂の小説「わたしを庇わないで」。

 さらに、エッセイでは星野智幸「笑いの取れる者帝国」、増田こうすけ「ギャグ漫画における笑いの難しさの考察」、牧島俊介「辛苦いかがですか」。九月のインタビュー「まだこの世にない笑いを求めて」を一挙。

・宇野常寛による新連載「第四の主体のためのノート」がスタート。

・小川洋子の連載「劇場という名の星座(8)劇場は待っている」が最終回を迎える。

・「第49回すばる文学賞」二次予選通過作が発表。

以上、2025年9月発売の4誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。