『オフライン・ナガサキ』 二
地下鉄に乗り、狭い車内で老婆と密着状態、真冬なのに油汗ダラダラとなってミナミへ着いた。西日本最大の歓楽街。まずは見廻組ごっこと、元々健脚、剣客のぼく、汗を拭いさあ闊歩してみたが、ほんの僅かでどうも感覚が違ってきた。左足は痺れ、心臓は激しく、呼吸はとめどなく乱れる。 ——アルコールを常飲して いた退薬症状かなあ、煙草の吸い過ぎかなあ、そういや、栄養とも絶縁しているなあ—— 幾らでもある原因を並べてみてもあとの祭り、いきなりに重度。このままでは、小学生に絡まれてもやられるって思い、数人の歩行者にぶつかりながら兎に角、公園を探した。
結局は道頓堀、川沿いのベンチまでソウソウロウロウふらつき、椅子取りゲームみたいに空いているスペースへとダイブした。八十パーセントくらいで虫の息、かといって救急車沙汰など嫌だ。小康を得ようと蹲ってみても、脳裏になんの関連もなさそうであるようなフレーズが、浮かんでは消えていき、フワッと召されそ うになった。 ——あぶない、あぶない、こういう時は、現実問題を考えるべきだろう—— ぼくは素早く、金銭計算を開始した。場所柄といい、これでは完全な織田作之助の登場人物だなあとも呻いたが、真実大変なのでしょうがなかった。
——ええと、最後に、日雇い労働に行ったのが七日前。先週は珍しく耐えて頑張って、四万六千元、じゃなかった、円あったのを確認。そこでちょうど切れ掛かっていた、ドヤの宿賃を十日分、一万八千円也を払ったから、単純に二万八千円残る。まあ、飲食費や煙草代で端数は去ったとしても、約二万円はある筈だ—— div>
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ぼくはヨレヨレの財布を弄り、目を凝らしてみたトコロ、悪寒でも冷気のせいでもなく、凍りついてしまった。こげ茶色の紙幣は零枚、暗い顔色の英世のみが、一、二、三、四、五、六、な……六枚。そうして愛着のベルボトムのポケットに数百数十数円のみ。あれ? なんで? って震えたが、矢張りこれしか手持ちはな し。こうなれば詮索は一応置いといて、結果に対する考慮が先であろう。小銭がポッケに結構あったから、それで済ませて安心していたのになあ。
——ああ、久々にたこ焼きを喰らおうと愉しみにしていたのは、体調も含めとてもじゃない、断念。市民の贅沢よ、サヨウナラ。いや、まてまて、それより、七日前に十日分の宿賃を入れたって事は、もうそろそろ期日にもなるじゃねえか! おいおい、こうしている場合じゃない。 ……けど、今のこの体力で、日雇い労 働なんか行ったら、本気で他界しそうだな、かといって、え、犬死?——
懶惰、堕落、似非自由、真似事、無気力、放漫、似非才能、反逆……等、諸々の自業自得なる鉄槌を下されたようで、いや、下されて、ぼくは暫くして胃液を吐いた。
つ・づ・く
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この投稿について
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- 投稿日:
- 18:18
- by 山谷感人

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