仮題『オフライン・ナガサキ』 二
ピシャピシャと、小雨が降っていた。ぼくはビニール傘をぶら下げて、宿の外へと出た。
ここから、ジャンジャン横丁までは、飛田新地、通天閣を越え、徒歩約三十分の距離である。最早、自身の匂いも染み付いた裏路地を、手にしたビニール傘は開かずに大股で歩いた。この今となってはもう、覆された事ではあるが、ぼくは、雨の往来を蠢くのが好きだった。それはただ単に、俗的な問題として。
現在でもそうであるが、幼少の頃、極端に非力であったぼくは、友人に誘われて、近所の寺へと剣術を習いに通っていた。持続性が皆無のぼくとしては、年齢もあり、その展開にしがみついた方であろう、或る程度は、血となり肉となった筈だ。棒状のモノさえあれば、他人の腕力に卑屈になる事はなく、臆する事もなく、 毅然と意見を吐ける心持ちになれた。だが、一般市民が常に竹刀を持ち歩くのは、これ所謂、パラノイア、真性病者の行動である。所詮、中途半端な隠者気取りのぼくには、出来ない仕業であった。それ故に、雨の日の、差しもしない竹刀代わりのビニール傘、その自己満足のみで喜々としていた。
こうした、下らなく哀れな自己の習性を考えながらくねくねと、やがて、待ち合わせた大衆串カツ居酒屋へと着いた。ふと、——今宵の虎徹はないている——と、何故だか呟いていた。
つ・づ・く
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この投稿について
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- 投稿日:
- 17:59
- by 山谷感人


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