破滅派きっての破滅型人間である山谷感人によるブログ。アルコール、太宰治、私小説、サザンロックの話が盛り沢山です。

2007年4月1日

掌編「四月一日」

アッサラ―ム・アレイコム! 感人です。さて、前回予告した
三国志が題材の、「私的妄想英雄伝」ですが、我ながら書いて
いて甚だ面白く、かなりの長編になりそうです。生まれてはじ
めて、推敲の楽しさを知りました。それ故、今回は掌編小説を
一つ。なに、がっかりはさせないから。


   四月一日

 電話がかかってきた。勿論、吉報の筈がない。躊躇しながら
受話器を取ると、矢張り、○×社編集部の、軽やかな声が聞こ
えた。
 ――ああ、どうも! 今日も朝から飲んでますか? エヘヘ
。で、今回の作品の件なんですが、やっぱりですねえ――
 これから長々と、おきまりの言い訳を聞かされるのも苦痛極
まりない。ぼくはその時点で、固定電話を投げ飛ばした。発作
的に冷蔵庫を蹴り上げた。そうして、旅に出た。
 東京、北千住駅から約二時間余り。諸々の現実問題を考えな
がら熱海に着くと、漸く多少は落ちついた。最早、俗に侵され
た観光地なのだが、なぜかここに来ると癒される。それは唯一
本気で交際した女の子と一度、笑いながら訪れた場所だからだ
ろう。彼方に、鶺鴒が飛んでいた。ぼくは海辺の方に降りてい
った。
 サンビーチは春満開。子供連れの若夫婦の、賑やかさに溢れ
ていた。ぼくはベンチに腰かけて、缶ビールを浴びつつその光
景を見遣る。泣けてきた。
 ――ぼくの姿が映りますか? どう思案しても、あなた達の
仲間にはなれません。でも少しは、ちょっとぐらいは、ねえ―

 涙でくしゃくしゃの、醜態を話題にされるのは嫌だったから
、素早くその場を離れた。熱海城方面に行こう。
 ひよどり越えのような道をてくてく歩き、「考え直せ」の看
板を過ぎ目的地に着くと、待ち構えていたかのように雨が降り
だした。然し、ぼくはもう動じなかった。「逝け、逝け」と、
適当なリズムを付けて鼻唄を。脳裏には、「ぼく、ぼく、笑っ
ちゃいます、君の心に」との、クソみたいな台詞が響いている
。やがてドラムが暴れたか、どしゃ降りに。
 ――あれから一人、何十回も訪れている土地だ。余り発見さ
れない奥地も知っている。あそこならば楽に。万一、それが出
来なければ、今度こそ全てを洗い流して、臆することなく書い
ていこう。なんだかんだで、選挙の公約みたいな、絵文字の如
き「お幸せ」を気にしていた。もっと「堕落の甘さ」を信じて
――
 山林からの眼下には、熱海の街並みが豪雨で霞みながらも、
美しく望めた。ぼくはふざけて、遥か遠くを、人差し指で示し
た。「四月一日」の事件だ。その後は作者を知らぬ。

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