センス

 太宰治が、違う文筆名、黒木舜平との名義で書いた作品が一
つある。
 文庫では掲載されてはいないが、全集等で探せば読めるでし
ょう。ぼくとしての意見は、はっきりいって、傑作である。
 然し、書いた本人曰く、「あれはただ売れようとして、ミス
テリーの要素を満載しすぎた、ただの駄作だよ。もう、書いた
のすら、思い出したくねえ」 との事である。そこまで言い切
られたら、ぼくら凡人は、何もむしかえせない。だが、「作者
がそうもいっているし、確かに、あれはツマラナイ」と、真剣
に読んでもなく吟味せず、そう断言する俗物、これは論外でし
ょう。

 南無。ワッショイ、ワッショイ。

 太宰の名をだしたから、ここで意識した作風を一つ。

 マイニチマイニチ、メザメトトモニ、ソウソウロウロウトコ
ノ、サビレタコウエンニキテハ、オイタジュボクヲナガメテ、
イキルユウキヲモラッテイルノデス。フケイノミナサマ、オコ
サマガタニ、ココデヤキュウヤ、サッカーヲ、サセナイデクダ
サイ。コノ、ワズカナバショダケハ、ワタクシニ、イキルタメ
ニ、クダサイマシ。タトエバ、ココデイガイデ、オコサマガ、
ワタクシニ、ツバヲハキカケヨウトモ、ソレハ、ワラッテミノ
ガシマショウ。ドウゾ、ドウゾ、コノタノミダケハ、キイテホ
シイノデス。
 ワガママヲ、オユルシクダサイ。モウスコシ、イキテ『ハメ
ツハ』ヲ、ナガメテイタイノデス。

 南無。はっけよーい、のこった、のこった。

 深夜の、一人での徘徊、自己肯定していえばパトロール。い
ろんな国、地域の、いろんな風と共に敢行して来たが、そこで
降りてきた『センス』が、ぼくの全てを、形成していると、断
言出来るでしょう。
 エジプトでの、貧民窟の丘の上から見た、暗闇のピラミッド
。熱海での、山林から眺めた海の光。まだまだ若い頃、家出し
て、長崎の異人墓地で迎えた朝焼け。ああ、そうだ、バリ島の
小さな村で、酔いどれて蛍を見に歩き、帰りに数匹の野犬に絡
まれ、必死に格闘した事なぞ、今では良い思い出です。
 旅は、止められません。

 南無。えらいこっちゃ、えらいこっちゃ。

 三日前、友人より、「お前は死ぬのか? 文章が、そういっ
ている」 との手紙を頂きました。一瞬、彼の優しさに嗚咽を
溢しそうになったけれども、やがて、鼻を穿りながら、その手
紙をビリリと破り、鼻毛と共に、ゴミ箱へと投げつけました。
 ぼくら、書き手でしょう? 例えば、LAメタルのバンドが、
バラッドでよく使う単純な台詞、「ハニー、君の為に死のう。
ベイビー」と唄えば、かれらは皆、自決しないといけないので
しょうか? まあ、かれらは、オーバードゥーズで、簡単に他
界しますが……。
 「全て、お前が発した台詞だ!」そういわれる事には、閉口
してしまいます。

 南無。ビビビのビン。

 最後に、ぼくはここで、またこうもいわなければならないの
でしょう。
 「小生の、短き愚文におつき合い頂き、感謝感激、雨霰です
!」

 南無。ズンドコドッコイ。

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