1月16日夕方、日本でもっとも有名な二大文学賞であり文学の風物詩とも言われる芥川龍之介賞・直木三十五賞の第158回受賞作が、東京・築地の新喜楽で発表された。

芥川賞を受賞したのは石井遊佳さん(54)の「百年泥」(新潮11月号に掲載)と、若竹千佐子さん(63)の「おらおらでひとりいぐも」(文芸冬号に掲載)の二作。石井さんは初候補選出で、若竹さんは同じく初候補選出かつデビュー作での受賞と言う慶事が重なった。「百年泥」はマジックリアリズムの作風を持つ作品と評され、南インドのチェンナイで日本人教師として働く女性の周囲で100年に一度の大洪水をきっかけに発生する奇妙な出来事を描いている。「おらおらでひとりいぐも」は、家族との死別や疎遠が重なり孤独な生活を送る老婦人が「老いの境地」に至る日々を描く小説である。タイトルは宮沢賢治の詩「永訣の朝」の一節から取られている。

直木賞を受賞したのは門井慶喜さん(46)の「銀河鉄道の父」(講談社より刊行)の一作。門井さんは三回目の候補選出の末の受賞となった。夭折の文学者・宮沢賢治と、その父親である宮沢政次郎の、厳しくも暖かった家族関係を描く小説となっている。

今回、芥川賞と直木賞においてそれぞれ宮沢賢治に関連する話題が出たことから、再び宮沢賢治に注目が集まることも予想される。

 

なお、デビュー作「ふたご」で直木賞の候補となり一部で話題となっていた、有名バンド「SEKAI NO OWARI」ボーカルの藤崎彩織さん(31)は受賞を逃した。これからの動向にも注目したい。