2015年に逝去した世界的SF作家テリー・プラチェットの未発表原稿が、蒸気式ロードローラーによってハードディスクごと破壊された。この破壊行為は2017年8月30日にプラチェットの公式Twitterで報告されたもので、生前からプラチェット自身が希望していたことだという。ハードディスクには、晩年に書き進めていた10本の未発表稿が入っていたとされる。

テリー・プラチェットは、20世紀末を代表するSF作家のひとりだ。SFの分野に大胆にユーモアを持ち込んだ作家として知られており、1983年からはじまった『ディスクワールド』シリーズは37ヶ国語に翻訳される大ヒット作となった。1990年代には、毎年ベストセラーの常連作家となっていたほどだ。しかし2007年にアルツハイマー病であることを公表すると、闘病虚しく2015年に66歳の若さでこの世を去っている。

今回プラチェットとの約束を叶えたのは、長年にわたってアシスタントを務めてきたロブ・ウィルキンス氏だ。当日のTwitterでは、ロードローラーに寄りかかりながら微笑むウィルキンス氏の写真も添えられている。破壊されたハードディスクの残骸は、プラチェットの旧宅に近いソールズベリー博物館で公開される予定だそうだ。

 

作家の未発表稿というと、ファンであればどうしても気になるものではあるが、一方で作家本人の意思はどうなのかという問題がつきまとう。自信作がたまたまタイミングを逸して眠っていただけというのであれば良いが、単に出来が悪くてボツにしたものだという可能性も大いにあるだろう。それを勝手に衆目に晒されるのは、作家にとって恥辱以外の何物でもない。今回の一件は、やたらと未発表稿をありがたがる出版社や読者に対する強いメッセージといえるかもしれない。