2018年3月に公開される劇場版ドラえもん最新作(第38作)のタイトルが、『ドラえもん のび太の宝島』であることが発表された。タイトルにあるとおり、本作は少年向け冒険小説の金字塔であるスティーヴンソン『宝島』(原題: Treasure Island)がモチーフとなっているらしい。脚本を務める川村元気(『君の名は。』『モテキ』などプロデュース)も「新たな宝島に期待してほしい」とコメントを寄せている。

少年たちの冒険活劇といえば、日本ではなんといっても劇場版ドラえもんだ。1980年の第1作『のび太の恐竜』以来、ドラえもん映画は春の風物詩になっているといっても過言ではない。現在40歳未満の日本人であれば、原始時代に未来に宇宙に海底に異世界にと、さまざまな舞台で非日常的な冒険を繰り広げるのび太たちの姿に心躍らせたことのない者はほとんどいないのではないだろうか。「映画のジャイアン」というフレーズの意味するところもすっかり浸透している。

筆者がはじめて映画館で観た映画も『のび太と竜の騎士』だった。『のび太のパラレル西遊記』で世界が妖怪に侵食されていく不穏な描写は長らくトラウマだったし、『のび太の日本誕生』に登場したひみつ道具「畑のレストラン」にはいまだに拭いきれない憧れがある。藤子・F・不二雄ミュージアムにもオープンから1週間と経たないうちに訪れた。映画ドラえもんには並々ならぬ思い入れがあるが、これはけっして筆者だけではなく、同世代であれば多くの人が同じような体験をしているに違いない。

そんな映画ドラえもんの最新作がスティーヴンソンの『宝島』(1883)をモチーフにするというのだから、これは大事件だ。トウェイン『トム・ソーヤーの大冒険』(1878)やヴェルヌ『十五少年漂流記』(1888)とほぼ同時代に書かれたこの作品は、さびれた海辺で暮らす何の変哲もない少年がひょんなことから大海賊の一味と行動を共にするようになるという、あらすじだけでも少年の好奇心を十二分にくすぐってくれる冒険小説の大傑作となっている。

ふつうの少年が大冒険を繰り広げるという点で、ドラえもんとの親和性は抜群といえるだろう。ジム少年的なポジションがきっとのび太でジョン・シルバー的なゲストキャラクターが出てきて云々かんぬん……と早くも妄想が広がってしまう。

なお余談だが、筆者が小学校低学年のときにはじめて『宝島』を読んだのは小説版ではなくコミカライズされたもので、作画を手がけていたのは『はだしのゲン』でおなじみの中沢啓治だった。おかげで、のちに小説を読んでからも登場人物たちの顔をついついあのアクの強い絵で思い浮かべてしまうので、先に原作を読んでおくほうがよいかもしれない。