2017年7月からスタートする特撮ドラマ『ウルトラマンジード』(毎週土曜9:00~)のシリーズ構成を担当するのが、小説家の乙一であることがわかった。乙一はこれまでにも別名義で映画脚本を担当したことはあったが、テレビドラマのシナリオに関わるのは今回が初となる。

日本の特撮文化を代表する作品であるウルトラマンシリーズは、昨年で誕生50周年を迎えた。この国で幼少期を過ごしていながら一度もウルトラマンを観たことがないという男性は、めったにいないのではないだろうか。そのため作家にもウルトラマンファンは多く、2006年の『ウルトラマンメビウス』で直木賞作家・朱川湊人が脚本を担当したエピソードがあったことも記憶に新しい。しかし、今回の乙一のようにシリーズ構成を人気小説家が担当するというのは、ウルトラマンの歴史のなかでもはじめての試みだ。

シリーズ構成という役職に馴染みのない人もいるかもしれないが、これは「脚本の監督」のような仕事だ。特撮ドラマやテレビアニメでは複数の脚本家が関わるため、各話ごとの設定の辻褄を合わせたり、シリーズ全体でのストーリー展開をコントロールする立場の人間が必要となる。スポンサーの意向を汲んで新しいキャラクターやメカをうまく物語に織り込んでいくのも、シリーズ構成の手腕が問われる部分といえるだろう。

最新作の主人公ウルトラマンジードは、シリーズ唯一の「悪のウルトラマン」だったウルトラマンベリアルの息子だという。宇宙人であることへの疎外感や葛藤はこれまでのウルトラマンでもたびたび描かれてきたが、今回は血や出自に対する苦悩がフォーカスされるように思われる。ウルトラマンシリーズはもともと相互理解と共生の物語としての一面ももっている。世界全体が国家主義に傾きつつある2017年だからこそ、乙一がどのようなウルトラマン像を紡ぎ出すのか注目していきたい。