第155回芥川賞受賞作『コンビニ人間』の著者である村田沙耶香が、スペシャルトークショー&サイン会を開催する。ファッション誌『エル・ジャポン』2月号に登場し、作家人生を決定づけた本について話した彼女が、誌面では語りきれなかったさらなる運命の本、読書の魅力について語る。さらに、創作の裏側や転機となった自著の解説、日々の生活、質問コーナーなど、今をときめく女性作家の素顔の魅力に迫る、とのこと。同イベントは定員50名となっているので、村田沙耶香に一言物申したい方は急がれたし。

 

 『コンビニ人間』は2016年を代表する作品であり、『ジニのパズル』と共に昨年は女流作家が活躍した一年であった。もっとも、一番売れた小説は『君の膵臓をたべたい』で、文庫なら『君の名は。』になるようだ。

 

実は『コンビニ人間』に関して少し気になることがある。この作品に対する「笑った」という感想がそれだ。傑作であることは言うまでもないので、「面白い」とか「ユーモアがある」という言葉なら理解できるのだが、言葉の意味は近くとも「笑った」という感想は理解できない。僕は「怖かった」。世の中にはカフカを笑いながら読む人もいるらしいが、いったい同じ世界の住人か。「芥川賞選評」でも山田詠美と川上弘美は間違いなく「笑った」と書いている。もしかしたら、女性に多い感想なのかもしれない。

 最近、織田作之助の文章を読み返していると、こんな記述があった。

 

「世界文学」七月号は世界女流作家特輯号で、マンスフィールド、コレット以下この国の中里恒子まで入れて、七つの女流作家の作品を集めた所は盛観だが、同じ号に載っている小林秀雄を囲む座談会を読むと、やはり文学は男のものだという気がする。(『肉声の文学』)

 

 あなたが取れなかった芥川賞を女性が取っていますよ。あなたの名前を冠した文学賞も女性が受賞しましたよ。オダサクはスタンダールやサルトルは愛読していたようだが、ジェイン・オースティンやエミリ・ブロンテは読んでいなかったのかもしれない。

 文学に関して老若男女でどうこうなどというナンセンスなことを言うつもりはないが、差異が全くないか、というと決してそうとも言い切れない。その辺のところ、誰か聞いてきてくれないだろうか。