スペインの詩人ミゲル・ヘルナンデス(Miguel Hernández Gilabert 1910~1942)は、日本では広く知られているとは言い難いが、スペインでは20世紀を代表する詩人の一人として知られている。ミゲルは貧しい家庭環境の中で育ったが、文学に興味を持ち、活字があれば何でも読み漁った。1933年に初の詩集「Perito en lunas」を発表し、以後様々な活動を行う。しかし左右の間で激しく揺れ動くスペインの政治状況に彼も巻き込まれる。

1936年、政権を握っていた左派の人民戦線に対し、資本家や宗教勢力の後押しを受けた軍及びファランヘ党を主力とする右派が反乱を起こし、スペイン内戦が勃発する。友人であり人民戦線派でもあった詩人フェデリコ・ガルシーア・ロルカ(天本英世の傾倒などで知られる)が右翼のファランヘ党員に暗殺された事を機に、ミゲルも人民戦線側に属し内戦に参加。しかし内戦は右派の勝利に終わり、彼は拘束された。一時は死刑を宣告されたものの減刑され、1942年に獄中で病死した。

この度、遺家族の下にあった資料や、2012年にハエンで得られた資料など、計32000点に及ぶ資料が整理され、昨月インターネットで公開された。資料はハエン学術研究所(IEG)のサイトで閲覧する事が出来る。これらの資料を通し、ミゲル・ヘルナンデスに関する研究や、20世紀前半のスペインの文学界に関する知見の広まりが進む事を期待したい。