『横浜駅SF』の刊行を記念したデジタルスタンプラリーが開催中。開催場所はもちろん横浜市内。有隣堂など各地のスタンプを集めるごとにオリジナルグッズが手に入り、スタンプを5個以上集めると、なんと横浜ビールが貰える。1月末まで開催予定なので、詳しくは特設サイトをご参照あれ。

 

『横浜駅SF』とは、自己増殖する横浜駅が本州の99%を飲み込んだ数百年後の日本を舞台とする作品である。著者の柞刈湯葉(いすかりゆば)が2015年にTwitterで即興的な短編としてスタートし、その後ブログで長編を書き上げ、現在は「カクヨム」で公開されている。第1回カクヨムWeb小説コンテストSF部門大賞を受賞し、12月24日にカドカワBOOKSから単行本が発売された。さらに、作画・新川権兵衛によるコミカライズも12月27日からヤングエースUPにて連載開始。カドカワなので、メディアミックスは今後も続きそうだ。

 

僕は生まれも育ちも神奈川県(横浜ではない)なので、この設定は興味深い。自分の知っている場所がSFの舞台になるのは素直に嬉しい。確かに物心ついた時から横浜駅はずっと工事をしていたが、現在は工事も落ち着き、大分使いやすくなっているので、工事ネタはもはや懐かしささえ感じる。乗り換えでの移動は長く、謎の地下空間が広がってはいるものの、迷宮新宿駅と比べれば難易度は低いだろう。とはいえ、まだまだ絶賛工事中で、「日本のサグラダ・ファミリア」と呼ばれているとか。

 

著者の柞刈湯葉は大学勤務の生物学研究者とのことだが、僕と同じくらいの世代だろうか。5、6年前には相鉄線からの通路は完成していたと思うので、若い人なら「この工事いつまでやってんだ!」という気持ちにはなっていないはずである。僕らの世代の神奈川県民は横浜駅と共に成長してきたと言える。その成長は今や穏やかなものとなり、やがて完成する時が来る。完成することを許さない「横浜駅SF」は、神奈川県民のノスタルジーから生まれた作品かもしれない。