全国的に“街の本屋”の消滅や所謂“活字離れ”が指摘される中、青森県八戸市は「本のまち構想」を進め市民と本・読書の距離を縮めようとしている。その八戸市で4日、全国的にも珍しい市営書店「八戸ブックセンター」がオープンした。

「本のまち構想」は、小林眞市長が2013年の市長選挙時に掲げた公約だ。この構想は3つの事業で成り立っている。1つ目は赤ちゃんに絵本と図書館利用案内を贈り幼少の頃から本に慣れ親しんでもらう「ブックスタート事業」、2つ目は小学生に独自の図書クーポンを配布し本の購買と読書を推進する「マイブック推進事業」、3つ目は市営書店「八戸ブックセンター」の開設となっている。このうち2事業はすでに開始されており、このたびの八戸ブックセンター開設により全事業が始動したことになる。

構想の推進及び「八戸ブックセンター」の開設に当っては、ブックコーディネーターとして活躍している内沼晋太郎氏がディレクターに招かれディレクションを行った。また、ロゴデザインは有名デザインスタジオ「groovisions」によるものだ。

八戸ブックセンターは、図書館の様な施設としてではなく、市内中心の複合商業ビル「ガーデンテラス」のテナントスペースに入り、「八戸に『本好き』を増やし、八戸を『本のまち』にするための、あたらしい『本のある暮らしの拠点』」をコンセプトに運営される。広い店内にはおよそ8000冊の本が並び、飲み物を片手に店内を見歩いたり、ハンモックに腰掛け気になる本を確認出来る等、従来の“本屋”や市営と言うイメージに捉われない方針が見える。

書店のオープンを歓迎する人々がいる一方、書店のあり方に疑問を持つ人々もいる。近隣には市立図書館が存在する事や、売り上げ目標2000万円に対し経費が6000万円かかり現状年間4000万円の赤字が見込まれるとされる事、また立地が八戸の中心にあるために離れた地域への効果を疑う声もある。若年層に対する読書推進や非営利施設である図書館の運営と異なり、“書店”と言う商業施設を市が運営する以上、効果について注目が集まるのは当然と言える。

全国には他に北海道礼文町など5つの市町村に公営書店があるが、いずれも図書館や書店の消滅に対する対策として行われており、市立図書館が存在する八戸市では図書館との兼ね合いあるいは住み分けをどうするのかと言う問題もある。

これから、八戸ブックセンター及び「本のまち構想」が更にどの様な進展を見せるのか、これからも注目していきたい。