2016年11月8日(火)、講談社は野間文化財団主催の文学賞三賞の受賞作を発表した。第69回野間文芸賞には堀江敏幸「その姿の消し方」、第38回野間文芸新人賞には戌井昭人「のろい男 俳優・亀岡拓次」、そして第54回野間児童文芸賞には柏葉幸子「岬のマヨイガ」がそれぞれ選ばれている。

講談社初代社長・野間清治の遺志によって設立された野間文芸賞は、1941年に純文学を対象とした文学賞だ。充分な実績を積んだベテラン作家に与えられる傾向が強く、文壇では順番待ちのような状況にもなっているが、そのステータスの高さは変わらない。堀江敏幸はこれまでに三島賞・芥川賞・川端賞・谷崎賞と純文学の賞を総なめにしてきており、今回の受賞でいよいよ主要な賞をほぼ網羅した形だ。選考委員は奥泉光、佐伯一麦、高橋源一郎、多和田葉子、町田康の五名だった。

野間文芸新人賞は、芥川賞・三島賞と並ぶ純文学新人三賞として名高い。俳優・劇作家として世に出た戌井昭人は2008年に小説家デビューを果たすと、これまでに5回芥川賞候補になり5回とも受賞を逃すというめずらしい偉業を達成している。大きな賞としては、今回が2013年の川端賞以来の受賞となる。選考委員は小川洋子、島田雅彦、保坂和志、星野智幸、松浦理英子の五名だった。

野間児童文芸賞は1963年に設立された文学賞で、児童文学や児童向けのノンフィクションを対象としている。児童向け作品も多く手がけている講談社らしい視点の賞といえるのではないだろうか。1974年に講談社児童文学新人賞に入選してデビューを果たした柏葉幸子は、これまでに日本児童文学者協会新人賞、産経児童出版文化賞受賞、小学館児童出版文化賞受賞など多くの文学賞を受賞してきた。大ヒットしたジブリ映画『千と千尋の神隠し』に多大なインスパイアを与えたことでも知られている。選考委員はあさのあつこ、石井直人、いとうひろし、富安陽子、山下明生の五名だった。

贈呈式・祝賀会は12月中旬に三賞まとめて行われる。