10月3日、講談社は『アマゾン「キンドル アンリミテッド」サービスにおける講談社作品の配信停止につきまして』と第するPDFを公開した。以前お伝えしたとおり、読み放題サービスKindle Unlimitedから漫画を中心とした売れ筋作品が一方的に排除されるという事態が発生していたが、これに抗議していた講談社は、その抗議の真っ最中に読み放題登録作品すべてを一方的に削除されたという。

これは講談社だけではなく、漫画家の佐藤秀峰氏なども同様のようで、人気作品を取り下げられたことに抗議をしたところ、全作品削除の憂き目にあったようだ。なお、佐藤氏はAmazonに内容証明を送ったとのことで、臨戦態勢に入っている。

これらの騒動を受け、「Amazonが迷走している」と受け取る向きも多い。そもそも、コミックが強い日本市場の動向を無視した戦略を取ったための「戦略ミス」だというわけだ。この論点は西田宗千佳氏の『Kindle読み放題”急変”、裏にあった「想定外」』という記事に詳しい。また、人気Kindle本紹介サイト「きんどう」の管理人によれば、Kindle事業部の日本担当者は半年間空席となっているらしく、こんなつぶやきも漏らしている。

こうした一方で、「Amazonがビジネスパートナーに厳しいのは最初からわかっていた」という一歩引いた見方もある。識者によると、Kindle Unlimitedにおける出版社との契約において、「10%でも読まれたら本が一冊売れたものとして扱う」という契約は確かにそうなのだが、「どの本を配信するか」の選択権はAmazonにあるようだ。となると、道義的にどうかはともかくとして、Amazonが一方的に作品の配信を停止したのは契約上なんの問題もない行為ということになる。仮に訴訟などを起こすとしても、優良誤認(ex. あたかも全作品の売上が保証されるかのような勧誘をした)といった「絡め手」を使う必要があるだろう。

そもそも、米国のKindle Unlimitedではビッグ5と呼ばれる大手出版社が参加していない。それが正しい戦略なのかはわからないが、とにかくAmazonにとって、業界2位の規模を誇る講談社のような大手出版社が読み放題に参加していることはマストではないということだ。はたしてこれが日本市場の特殊性を無視したことによるローカライズの失敗なのか、それともAmazonの長期戦略にとっては象が小石を踏み潰したがごとき小事なのか、今後の行く末を見守りたい。