夏目漱石の英国留学時代の資料を集めた「ロンドン漱石記念館」が9月28日に閉館した。記念館は、漱石の留学時代を調べていた崇城大学の恒松郁生教授と妻の芳子さんが、私財を投じて1984年から運営してきたもので、本来は生誕150年の来年まで運営する予定であったが、英国のEU離脱の影響で不動産価格が下落、経営も赤字続きだったことから1年の前倒しとなった。記念館は売却される予定で、およそ2000点の資料の行き先は未定。

「猛烈な神経衰弱。」「文部省への報告書を白紙で送った。」「漱石発狂。」「最も不愉快な二年間。」夏目漱石の洋行に関するエピソードには事欠かない。現在放送中のテレビドラマ「夏目漱石の妻」においても、洋行前後での漱石の変貌っぷりはもはや別人であった。まるで倫敦にも相沢がいたかのようである。

夏目漱石の英国での生活は『倫敦塔』、『倫敦消息』、『漱石日記』などでうかがい知ることができるが、やはり当時の記録を集めた同記念館の資料は貴重である。いったいどうなってしまうのだろうか。おそらくは日本のどこかの大学が買い取るのではないかと思われるが、実際にそうなれば多数のイベントが催されている今年の没後100年から、来年の生誕150周年に向けてさらに花を添えることにもなるだろう。妻・鏡子が主人公のドラマでは一切見ることができなかったが、漱石を発狂させた英国での生活に興味があるならば、今後の動向に注目である。