Kindle Unlimitedの気になるラインナップは12万冊。Kindleストアのうちどれぐらいが登録されているのかというと、Kindleストアの文学・評論が60,178冊、うち読み放題の対象作品は19,808冊となっている。約3分の1といったところだが、出版社ごとに方針は異なる。文藝春秋はKindle文学・評論カテゴリに2,041冊を登録しているが、読み放題作品はそのうち33冊に過ぎず、しかもほとんどが『別冊文藝春秋』だ。一方、光文社はKindle3,579冊のうち550冊を登録しており、中でも光文社古典新訳文庫が大量にラインナップされている。官能小説の老舗フランス書院は1,202冊、文学・評論カテゴリの最大手となっている。

ベストセラーになった『カラマーゾフの兄弟』も全巻読み放題。

ベストセラーになった『カラマーゾフの兄弟』も全巻読み放題。

個別の作品で言うと、平野啓一郎『マチネの終わりに』のようにそれなりに新しい作品も読み放題対象となっており、必ずしも古い作品ばかりというわけではないようだ。これはおそらく、出版社・レーベル・作家単位で対応が異なっているのであり、それぞれの立ち位置のようなものが透けて見えるのが面白い。

2016年4月に出たばかりの準新作も読み放題対象に

2016年4月に出たばかりの準新作も読み放題対象に

なお、破滅派から出ている電子書籍もKindle Selectというサービスを有効にしておいたものは読み放題の対象となっているようだ。したがって、読み放題作品の多くにKDPのセルフパブリッシング作品が含まれていることは想像に難くない。

破滅派の作品も読み放題対象に

破滅派の作品も読み放題対象に

読み放題サービスの今後として気になるのは、ストリーミング配信によって大変革した音楽市場のような命運を辿るのかどうか、だろう。Kindle Unlimitedでは読んだページ数と元の価格に応じて全体の売上が配分されることになっている。読み放題と売り切りのどちらが著者に多くの売上をもたらすのかは、破滅派が今後も身を賭して検証していきたい。

※本記事に使用された数字はすべて2016年8月3日時点のものであることを付記しておく。