北海道内在住のベテラン作家たちが刊行している同人誌『奥の細道 別冊』がじわじわと注目を集めている。編集同人の平均年齢が75歳という高齢であることと、それでいて月刊という驚異の刊行ペースであること、さらにそれが手作業によるコピー本であるということが、多くの文芸ファンに驚きを与えている。

編集に携わっているのは、『要塞シリーズ』で知られるSF作家の荒巻義雄、現代詩作家で医師でもある嵩文彦、ロシア文学の翻訳を手がけるとともに自らも詩を書く北海道大学名誉教授・工藤正廣、そして詩人の小杉元一という4氏だ。もともと『奥の細道』という同人誌を主宰していた工藤が呼びかけたことで、2016年2月より『奥の細道 別冊』が始動した。

発行部数は毎回150部と決まっており、執筆者自らがA4用紙に150部ずつプリントアウトするというアナログな手法をとっている。ホチキスすら使わず、ただ折るだけの本だ。現在はアマチュア同人誌であっても立派な装丁と製本が当たり前だが、 重鎮たちがあえて用紙代とインク代以外の経費をかけずにひたすら作品を書いて発表するという姿勢は、文芸同人誌界隈に新たな風を吹かせるかもしれない。

「今は同人誌が立派になりすぎた。この形式は古くて新しいと思う」(7月19日付・北海道新聞) ――荒巻によるこの発言はなかなかに示唆的だろう。

『奥の細道 別冊』は7月23日(土)に札幌市内で開催される第一回文学フリマ札幌でも販売される(う-38『ぽえとりくす舎』)。来場予定の人は、この機にぜひ手に取ってみてはいかがだろうか。