文化通信の報道によると、Kindle Unlimitedは月額980円で対象書籍(雑誌・コミックスを含む)が読み放題になる。米国では2014年からサービスを開始されており、スタート当初のラインナップは60万点。

日本でも現在このサービスのスタートに向けて出版社との交渉がはじまっており、Amazonはロングセラーを中心に、単体の電子書籍と同内容のコンテンツを求めている。つまり、「定額サービスはお試しのみ」は許さないということだ。初年度は一冊が読まれる度に単品が販売されたとのと同額を提供するという。

報道では触れられていないが、破滅派も利用しているKDPというセルフパブリッシングサービスを利用した書籍も対象となる可能性もある。その場合、Amazonとして望ましくないのは、ラインナップにセルフパブリッシング本がずらっと並んでしまうことで、トップページにはユーザーを訴求する魅力的なコンテンツを揃える必要がある。現在、8月のリリースに向けて出版社とAmazonで水面下の戦いが繰り広げられていることだろう。今回のリークも出版社側あるいはAmazonからの情報戦と見ることができる。先週もAmazonのKindle Unlimitedページが準備中のままアクセス可能になってしまう事故が起きていた。

定額サービスといえば、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービスが想い起こされる。定額聴き放題が普及した音楽業界では、テイラー・スウィフトといったトップアーティストがその収益体制に異議を唱え、すべてのコンテンツを引き上げている。超有名アーティストに市場全体の注目が集まってしまい、中堅から若手へ収益がほとんど行き渡らないという状況を指して、「音楽業界崩壊の主犯」として名指しされることも多い。はたして、定額読み放題のサービスは現在の出版業界にどのようなインパクトをもたらすだろうか。

筆者の個人的な意見になるが、Kindle Unlimitedのリリース当初は郊外の中規模新古書店のようなラインナップになることだろう。二年ぐらい前のベストセラーと、膨大に並ぶ100円の古典。できればそんな場所では戦いたくないというのが、多くの書き手の率直な気持ちではないだろうか。