四月十八日に第三十五回新田次郎文学賞の選定が発表され、劇作家故つかこうへい氏を扱った長谷川康夫さんの評伝『つかこうへい正伝 1968-1982』が受賞。五月三十一日、都内千代田区東京會舘において、第三十五回新田次郎文学賞授賞式が開催された。

新田次郎文学賞は、気象学者の傍ら小説家として多彩な文化活動を行った新田次郎(本名:藤原寛人、1912~1980)にちなみ、主にノンフィクションや自然界を題材とした作品を対象に選考する文学賞である。受賞者には正賞として気象学にちなみ気圧計が授与されると言ったユニークな面を持つ。副賞は百万円。

当日会場には、著者長谷川康夫さん始め、風間杜夫さん、平田満さん、石丸謙二郎さん、根岸季衣さん等かつてつかこうへい氏の陶酔を受けた芸能人達が集結し、受賞を祝賀した。

受賞作『つかこうへい正伝 1968-1982』は、人気劇作家・小説家であった故つかこうへい(本名:金峰雄(김봉웅)、通名:金原峰雄、1948-2010)の前半生を追った評伝であり、1982年の「劇団つかこうへい」解散前後までを扱う。長谷川康夫さん自身も故つかこうへい氏と出会い演劇の道を進んだ人物であり、当事者としての目線と、徹底的な取材による客観的な目線の融合が図られている。在りし日のつかこうへい氏の姿や劇団生活の様子を垣間見る事が出来る、貴重な資料ともなっており、ファン・関係者のみならず表現を志す者に大いに示唆を与える評伝となっている。