政治活動とは、お洒落なものである。その3。極悪非道な日本の生活保護。

千本松由季

ルポ

6,148文字

家や車や全ての財産を没収し社会的信用を失わせ、やっと受給される日本の生活保護制度の残忍さ。

今の文士は政治発言をしない。昔のインテリ作家は三島由紀夫をはじめ、なんやかんやと、東大紛争とか、なんらかの政治活動をするのが当たり前だった。この「破滅派」でさえ真面目に政治発言をする人は限られる。そもそも「破滅派」のサブカテゴリーには「政治」という項目がない。

その1 https://hametuha.com/repo/58805/

その2 ファイザーとコンビニ陰謀説 https://hametuha.com/etude/59767/

 

 

家や車や財産や社会的信用、全てを略奪されてやっと受給できる。これが先進国のやることであろうか?

 

 

丁度これを書き始めたところで、人気ユーチューバーが、生活保護受給者とホームレスはいらない、と発言し炎上した。私のお洒落でトレンディーな記事に現実が追い付いて来たのだ。最近こういう偶然がよく起こる。

 

そいつによると、生活保護とは、金のない人達が、犯罪者になって自分達に被害が及ばないように、最低限の金を与えるというものらしい。まともな社会人の言うことではない。たまたまその動画を見付けたから、観て欲しい。すぐ消されるかも知れないけど。

 

https://www.youtube.com/watch?v=4S94d3mcxzA

 

 

私には人を直接、助ける力はないけれども、ここカナダのアルバーター州の生活保護の常識がどんなもんであるかを紹介し、日本の生活保護の残虐さを分かってもらえたらいいな、と思う。

 

生活保護とは、生活が困窮し、傷付いた人を、労わり、慰めて、温めて、励まして、考えられることは全部してあげて、その人がもう助けがいらなくなるまで、または生涯にわたって、面倒をみることである。

 

しかし、日本の生活保護がやっているのは、その真逆である。本人、または先祖の土地、家を没収し、車、貴金属、その他、金目の財産を没収し、保護費を借金の返済に当ててはいけないということは、暗に個人破産しろと言ってることで、そのように社会的信用まで奪った挙句に、やっと支給されるという、残忍な制度である。全ての財産を没収される。これは病気や、その他の原因で食えなくなった人に対する、罰なのか? むご過ぎる。

 

じゃあ、例えば、病気で半年入院する。職がなくなる。各種手当もなくなり、いざ収入が全くなくなった人が、生活保護を受けるために、家も車も財産も社会的信用も全て失って、それからどうしろというのか? 全てを失った人がそこからどうやって立ち直ればいいのか? 多くの人には、また一から人生をやり直す気力が残っていない筈だ。

 

どっからそういう発想が出て来るのか分からない。まあ、色々例外もあるらしいが、まあ、やってることはそんな感じで、言ってみれば、まあ、強盗と同じである。

 

日本は先進国である。私は日本がお金を持ってることを知っている。まともな生活保護を行える体力のある国だと知っている。一番馬鹿馬鹿しいのは、生活保護のお金を借金返済に使ってはいけない、という部分である。借金があるから生活保護が必要なので、そうそう、それから、今までその人が一生懸命働いて築いた財産を全部手放せという、そこのところのとち狂った発想はどっから出て来るのだろう?

 

それじゃあ、ここでアルバータ州の生活保護について語ってみよう。私は、2015年の1月16日から生活保護を受けている。それは障害者を対象としたものである。私の病名は、なんだっけ? ええと、ううんと、日本語難しい。分かった。統合失調感情障害だ。この意味は、ドクターに、悪いけどあんたは一生働けないから、と言われる病気。その同じドクターとは、それまでの10年以上、私がフルタイムで働いていた時からずっと一緒に苦労してくれた人で、もう彼も私を治療することを諦めたのである。

 

ドクターにドクター用の書類を書いてもらい、それを州政府に提出する。その他の書類は複雑で、英語だしさっぱり分からなかったが、私の病院にはそういうヘルプをしてくれる専門の人がいて、私は毎日病院に通わされ、私の周りには日替わりで色んなセラピストが付いて、あれこれ面倒を見てくれ、生活保護がおりるまで、それは続いた。

 

生活保護の額を、私の本籍地である、東京都品川区と比べてみた。東京の方が2割ほど高いけど、こっちの方が物価が安いから、まあ同じくらいと見てもよい。すべての受給者は毎月同じ額を貰う。それをどう使おうが100%私の自由である。

 

私はローンの残ってるマンションを売らなかった。車も売らなかった。借金は残った。急の出費のある時は、貯金を崩したり、クレジットカードを使ったりした。食料はフードバンクから調達した。ついでに言えば、こっちではまだ食べられる弁当を破棄することはありえない。貧しい人に与えるノウハウがしっかりできあがっている。あのオリンピックで捨てられた食品は、TBSの取材によると、1億円を超える値だそうだ。

 

さて、私は生活保護を受ける前も、低所得だったので、マンションを抵当に入れて、超低金利で金を借りて、銀行に口座を作ってもらい、金のいる時はそれを使って、まあ、返せるわけはないから、利子だけ毎月払っていた。私が死んだら銀行が私のマンションを持って行く。それだけのことで、私には遺すべき家族はいないから、それでいい。

 

そういう状況でも、なんとかなるもんで、ほんとに不味い時はインターネット代をばっくれたりはしたけど、マンションのローンを払えなくなったのはたったの1回だった。銀行に走って行ったら、新しい低金利のクレジットカードを作ってくれた。

 

去年の8月に仕事が見付かって、現在週2日、1日4時間働いている。やや人並みの生活ができるようになった。こっちは日本より最低賃金が高いので、こんだけ働いてても、毎月お金が増えていく。このくらいでは生活保護費を減らされることはないが、クリスマス前には働き過ぎて、減らされたことがある。しかし、このお陰で、いつ今の車が駄目になっても、立派な車が買えるだけのお金が貯まった。ちなみに私の車は、2003年製の日産で、195,000Kmだかマイルだか知らないけど、走っているやつで、私にはありがたいことに友達に車の修理屋がいるので、あっちもこっちも部品代だけで直してくれる。

 

パートで働けるようになるまで6年かかった。新しいドクターは週2回以上働くな、と言う。もう仕事しないとほんとにヤバくなって、職探しをした時、コロナで一番、職のない時で、その時、私にはとんでもない酷い不安障害があって、それでも毎日レジメを送り続け、面接21回目で、自分の好きな仕事を、しかも車で10分の距離にゲットした。絶対手放さないぞ。

 

実はその車は、2005年に中古で買ったものだが、その時だけ、両親にお世話になった。しかしその後、低所得者の時も、生活保護をもらっている時も、両親にもきょうだいにも友達にも、一度も、一銭も援助してもらったことはない。そりゃあ、時々クリスマスに2万くらい恵んでくれる人はいたし、友達と一緒に食事や、お茶しても、私に払わせる人は誰もいなかった。今の仕事が見付かってから、私はちゃんとお金を出している。

 

考えてみて。

 

もし私にマンションがなかったら。今頃汚いアパートで、同じような精神病の人達とシェアして、毎日おびえる生活をしていただろう。車がなかったら、マイナス30度のふきっさらしのバス停で、来ないバスを30分以上待ってたことだろう。変な話だけど、私には借金もあるけど、貯金もある。結婚式の時(速攻で離婚したけど)母に貰った、数十万する真珠のネックレスもまだあるし、会社から御褒美に貰ったメイプルリーフの金貨も持ってるし、生活保護を受給してから手放した物はなにもない。まあ、社会的信用はないけど。でもこっちの銀行は、生活保護を貰っていても、パートタイムで2年以上働いていれば、ローンが組めるのだそうだ。別にローンはいらないけど。

 

これが私の歩いた道。同じ金額の生活保護を貰っても、品川区とアルバータ州でこんなに違う。とにかく、こっちみたいに金額を一律にして、好きなようにやらせればいいのである。借金を返したい人は、それを使って返せばいいし、どうしても家を売らないとやってけないな、と思ったら、悲しいけど売ればいいし、それは好きなように考えればいい。どう使うかは本人に選択させる。私だって異国に一人っきりで、ここまでやったのだから、頭を使って、行動すればできるのである。

 

繰り返していうけど、どうして政府が人の家や車や財産や社会的信用を剥奪するのか? そこまでしてやっと受給できる、日本の生活保護ってなんなの?

 

ちなみに私の弟は10年ほど前に離婚してから、実家に舞い戻り、以来家賃も食費も出さずに、食事の世話や、洗濯や、自室の掃除まで母がやっている。嫁に行った姉や私は、親が年を取ったら親の面倒を見るだろうと、傍観していたが、去年、大雪が降った時、弟がなにもしないので、母が雪かきをして、腰の骨を折って入院した。

 

どっちが自立してんの? 生活保護もらってる私の方がずっとしっかりしている。

 

これはね、もう一つ別の問題なんだけど、カナダではね、子供が成人したら、とっとと追い出す。親子が共依存してるの、ほんとに気持ち悪い。母はね、息子が可愛くて、手放せないの。弟の娘が学校を出たら、食費と家賃を出させる。不公平だもん、こんなの。なんにもしない癖に。

 

また生活保護に戻るけど、ハッキリ言わないと分かんない人が多いみたいだから、ハッキリ言うけど、生活保護を貰うことは恥ずかしいことじゃなくて、権利だから。社会は生活が苦しい人を温かく見守ってあげる義務があるから。貰う人は罪悪感を持ってはいけないし、遠慮する必要もないし、その人のことを他人が迷惑だと、差別意識を持つ必要もない。

 

東京にある双極性障害のピアサポートに参加してるんだけど、日本人って生活保護を貰ってると恥ずかしいんだって。親しい人にも打ち明けられないんだって。区役所に知り合いがいると、申請にもいけないんだって。そんなこと聞くこっちの方がよっぽど恥ずかしい。

 

生活保護の人は社会にいらない、と言った馬鹿は、侮辱罪だかなんだかそいつのために勝手に法律をでっち上げて、罰金1億くらい取ってやったら、支払い期限付きで、そしたら、そいつも生活保護がないと生きて行けないから。あ、でも日本の生活保護は、そのお金で借金の返済禁止だから、どうすんの? 知らない。とにかく、非人道的なことを公共の場で言うべきではない。

 

ついでにホームレスだけど、私の住んでるシティーにはホームレスの人を見付けると、通報できる機関があって、電話をするとカッコいいパトカーに似た車がマッハの速さで飛んで来て、その人を説得して、車に乗せて、温かい場所に連れて行って、傷付いたその人をいたわって、食事を与えて、面倒をみる。その人がすっかり元気になって、再び安全な社会に戻って行けるまで。そういう特別な訓練をされた人達がいる。私はたまたまその現場に出くわしたことがある。頭が下がる。私にはできない。

 

このシティーにある、双極性障害ピアサポートグループの会長は、昔、生活保護を貰ってたけど、今は使命に燃えた仕事をしている。例えば彼は精神障害者が犯罪を犯すと、それはどうして起こったのか、テレビに出演して説明する。彼はこのシティーのホームレスの顔はみんな覚えてるんだって。私はその会長と友達だから直接聞いたんだけど。そのくらい、そういう職業の人はホームレスのことを考えてる。統合失調症患者の中には、どうしても屋根のある所が怖くて外にいる人もいるんだって。それぞれ事情があるんだから。

 

若者は行政と一緒になってホームレスを優しく支援してあげないといけないのに、あのユーチューバー、なに馬鹿なこと言ってんの? ちょっと前だけど、そいつが自分の巻き毛が原因で先生に虐められたことに対して、学校名まで晒して文句を言ってたのを観た。勇気あるな、ってその時は思ったんだけど。言いたいことを言えばいいというもんじゃない。

 

もう疲れたから止めるけど、日本にはお金がある。アルバータ州よりもある。こっちにできて、あっちにできないことはない。不況だなんだって盛り上がるのは好きみたいだけど、道路には外車がゴロゴロしてるし、デパートではブランド品を買うためにコロナをうつし合っている。

 

以上。

 

あ、なんか大事なこと書くの忘れた。こっちには成人した子供、年を取った親、病気のきょうだい、親戚などの面倒を見る義務は一切ない。私が生活保護を申請する時も、親やきょうだいの情報は一切聞かれないし、申請用紙に記入する欄もない。親が億万長者でも、その子供が生活できなければ、生活保護がもらえる。こっちでは家族、親戚に共依存はない。引きこもりはありえない。

 

こういう社会もあるってことを、知ってもらうだけでいい。

 

あ、それからまた思い出したけど、日本の学校はホームレスや生活保護受給者を差別してはいけない、ということを学校のカリキュラムに入れて、分かるまでしつこく教えないといけない。こっちでは小学校低学年でも知っている。貧しい人、身体的、精神的な病気のある人、社会で少数派の人、を差別してはいけない、ということを知っている。追い詰められた人の痛みが分かるような教育をされている。教育、教育、教育、である。頭蓋骨を割って、脳に直接叫ぶ。洗脳に近い。それくらいしないと分からない。

 

あ、それから、日本の生活保護スタッフがやたら働け、と強要するのも、その人の人格を否定しているようで怖いと思う。社会復帰と称して、ちゃんと教育を受けて以前はしっかり、いい仕事をしていた人を集めて、単純な掃除をさせたり、聞いた話では、贈答用のタオルにのしをつけて、ひたすらそれをセロテープで貼るというような作業をやらせるのだそうである。刑務所のようだ。それが残酷である、ということに気付いていない。財産を没収するだけでなく、誇りをも無くさせる。単純な仕事をしている人達を差別しているわけではない。人にはそれぞれ事情がある。私だって世界最高峰のファッションスクールを出て、画材屋でレジを打っている。ちっとも人の言うことを聞いていない客に向かって、レジ袋はいるのかどうか叫んでいる。優しい友達は、それを英語でやってるんだから凄いと思えばいいじゃん、と言うが、本人的にはそう大したことではないと思っている。

 

社会復帰の訓練なら、もっとやり方がある。こっちではちゃんと朝起きて、時間通りにその場所に来る、そして他の人とコミュニケーションできるようにする、という訓練をさせるために、みんなで絵を描いたり文章を書いたりして、相互に感想を言う、と、そんなことをやっている。

 

やっと終わった。言いたいことを全部言ってすっきりしたけど、疲れた。

2021年8月16日公開

© 2021 千本松由季

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