政治活動とは、お洒落なものである。

千本松由季

ルポ

2,585文字

今の文士は政治発言をしない。昔のインテリ作家は三島由紀夫をはじめ、なんやかんやと、東大紛争とか、なんらかの政治活動をするのが当たり前だった。この「破滅派」でさえ真面目に政治発言をする人は限られる。そもそも「破滅派」のサブカテゴリーには「政治」という項目がない。

この間、カッコいいヤクザの出てくる小説を書こうと思って、日本最大規模の指定暴力団、山口組のことを調べていて、面白いビデオを見付けた。

 

日本在住のジャーナリスト、ベンジャミン・フルフォードがメガホン一つ持って、神戸の山口組総本山に行き、演説をするという快挙(暴挙?)にでた。2008年のことである。どれどれ、と思って聞いてみると、山口組に向かって、ああしろこうしろ、あれはすんなこれはすんな、と言いたい放題である。一方、山口組は完全無視を決め込んだ。

 

その後のインタビューで、なぜあんなことをしたのか、という問いに対し、彼は「日本のマスコミは暴力団に対してなんの影響力もない。ジャーナリスト達は何も言わないし、じゃあブロガーは何をしているのか?」みたいなそんなような発言をしていた。その時、思ったんだけど、ブロガーってなに? なんだ、それって私じゃん、と。

 

そう思ってnoteで東京オリンピックについて発言を始めたら、よく覚えてないけど、530人くらいいた私のフォロワーが順調に減っていく。私のフォロワーは大抵、小説を書いている人々だから、やっぱり作家っぽい人は、政治を避けようとするんだな。

 

で、まあ、ここからが本題なんだけど、今時のクラシック音楽界で一番人気のピアニスト、ヴァレンティーナ・リシッツアという人がいる。https://www.valentinalisitsa.com/

 

彼女は、余計なことを言わないで黙っていればただの美人なのに、やたら問題発言が多い。「ラフマニノフの女王」と呼ばれ、世界中のオーケストラとラフマニノフを演奏してるのに、自分のYouTubeで「私はラフマニノフが嫌いである。I hate Rachmaninoff.」という発言をして、人々を困惑させた。

 

なん年前の話かは覚えてないが、彼女がまだそんなにビッグじゃない頃、カナダ横断ツアーというのをやって、よせばいいのに政治的な発言をし、それが人々の反感を買い、大騒ぎになった。トロントでは危険であるから公演が中止になった。クラシック音楽の世界では普通、ありえないことである。

 

私はカルガリーに住んでて、過激派人口も少ないし、呑気でカウボーイの文化でもって、音楽といえばカントリーだから、人々は彼女に対してあんまり関心がなかった。

 

私達はチケットを買ってたから、どうなんのかな? って思ってたらやることになって、よかったな、って思って行ったら、コンサートホールに警官が何人かいて、クラシックのコンサートに警官? ってまたポリスフェチの私が喜んでいたら、一緒だったフィンランド系の友達が「あれは爆弾を探しているんだよ」って言ってた。彼はホールで撮っちゃいけないのにバンバン写真を撮って喜んでいた。

 

ここからが、ほんとの本題なんだけど、それでまだ時間があったから、私は表の空気を吸おうと思って外に出て、そしたら15人くらいかな、抗議する方々がプラカードを持って立っていて、メガホンとかはなくて、みんな静かで、その人達は、どうも一緒じゃなくて、各々個人的にやってるみたいだった。

 

その中に目立つ人がいて、その人は『ティファニーで朝食を』の時、ジバンシーがオードリー・ヘップバーンのために創ったみたいなシンプルでモードなワンピースを着て、それは濃茶で、結構な高さのピンヒールに、カッコいいサングラスできめていた。

 

あんまり素敵だったから、私が思わず「ここでなにしてんの?」って聞いたら、その人は「ヴァレンティーナが、自分もウクライナ人なのにウクライナにとって不利な発言をしたから」と言ってた。

 

それがカルチャーショックだったんだけど。「政治活動って、お洒落なもんなんだなー」っと。ただ一人で立ってるだけで、モードなスタイルで、お洒落なプラカードを持って、なんにも言わないで。

 

そういう政治活動をしてる人って、あとで聞いたら、ケベック州から来てる、フランス系のカナダ人が多いんだって。だからお洒落なんだって。

 

東京オリンピックの反対派にも、静かで、一人か二人でプラカード持った若くて可愛いくしてるのがいて、いいな、って思った。

 

それからあの時、ヴァレンティーナは澄ました顔で大曲を弾きこなし、コンサートが終わって、アンコールがなくて、それって物凄く珍しいから、多分エージェントに早くホテルに帰れって言われたんだな、って思って、やっぱり政治発言するんならそれほどの覚悟がいるよな、って思った。

 

私は日本にいないから、情報は向こうからは来ない。こっちから行かない限り。日本は情報垂れ流しで、嫌でも色んなことが分かって、でも日本人ってやっぱり我慢強いよね。あんまりなんにも言わないもんね。文化人もそうでない人も。ピアニストが政治発言なんて、ありえないよね。まあ私だってオリンピックでがたがたする前は総理大臣の名前も知らなかったけどさ。

 

私って統合失調症に双極性障害の混じった贅沢な病を抱えてるんだけど、日本のピアサポートのZoomに参加してて、今年の会の4か条を作ったからって、へえ、って思って見たら、可哀そうな私達はみんなで仲良く誰も排除しないような会にしよう、みたいな馬鹿馬鹿しいことが書いてあるから、どうせあなた達は戦前から変わってないし、カナダより50年は遅れてるんだから、もっと外に出て言いたいことを言ってやればいいじゃない、こんなインテリがいっぱい集まって、って言ってやったけど却下された。事実、学者が揃ってて、抽象的な話になると、私にはさっぱり分からない。車を持ってたら生活保護が受けられないとか、そういう下らないことを聞くと、日本を出て正解だったと思う。そういうあほらしい生活保護は誰かが、とっとと変えないといけない。

 

落ちがないな。要するに、政治活動とは、ただでもうるさい東京で、メガホン持って、髪を振り乱して、汚いTシャツに運動靴で、パレードするだけのもんじゃないってこと。それから私達、作家っぽい人達がなにか言わないと駄目なんだってこと。

 

それだけだけどさ、あんまり面白くなかったらゴメンね。

 

2021年7月13日公開

© 2021 千本松由季

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