第一歌集『シロクマ日和』摘録版

シロクマぽよんぽ

4,703文字

シロクマぽよんぽ第一歌集『シロクマ日和』摘録版です。2020年10月1日第1版発行。完全版が欲しい方は郵送にてお送りしますので、TwitterのDMまでお願いします。

《いまは西暦2020年》

 

セックスと数値とカメラと死によって客体と化すわたしのからだ

 

鍵垢にしても私服に着替えても夢叶えてもわたしはわたし

 

空一面 Windowsの壁紙に似た美しさ ボクは生きてる

 

ストローでカルピスソーダ飲みながら殺人事件のニュース眺める

 

エアコンの効いた部屋から「継投が遅すぎでしょ」とツイートをする

 

あいみょんがぼくに教えてくれたこと「恋」も「明日」も「乗り越える」もの

 

意味のないLINEグループ消すたびに二十歳の頃の自分褒めたい

 

後輩が稟議書上司にまわす顔 ヘラチョウザメの昼食の顔

 

Perfumeの「ぽちぽちボタンをプッシュなう」ぽちぽちボタンもなうも無き今

 

レジ打ちが社会のすべて知っているような顔してレシートくれた

 

教育は指示することと思いこむ教師せわしいグランドにぬこ

 

食べログの評価3.13がたったひとつの懸念材料

 

助手席に君を乗せてる高速を降りればカット野菜の畑

 

iPhoneの電池交換してみたらぼくのいのちも新品のよう

 

Foodieで撮ったうさぎのラテアート ストーリーズで子に囲まれる

 

Amazonのお届け物に起こされし休日の朝 ポタージュあちい

 

スピッツもCoccoも森見登美彦も新作出すしまだ生きとくか

 

 

《短歌アラカルト》

 

デスク飯 海苔がもうない100円のたまふりかけをふりかける昼

 

クーラーにゆれるくつしたハンカチを眺めていたい君とふたりで

 

ご近所の誰かからあげ揚げている五月の風がぼくにいたずら

 

決戦の時が来たのだ1000円の水爆銃をぽしゅぽしゅする子

 

んうぼわん、ぼくのゆぷねがたっぽよん、ぼくはてんぷくぷくぷくぽよん

 

永遠に触れた気がした 川底でプリズム浴びて眠るCD

 

押入れにほこりまみれのキンチョールぼくはずいぶんしあわせだろう

 

夢なんてない方がいい 短期結果短期結果と急かされるだけ

 

きれいだね ひとりぼっちの死者のためともに焼かれた白菊のよう

 

ぼくの死はきっと他人のものだからあんま気にせずいちごもぐもぐ

 

ヤフコメで叩かれているタレントもあの日聴いてた「波乗りジョニー」

 

アイロンのランプが消える音がしてタイムスリップ恋する夜中

 

助手席の窓開けたとき潮風が首をなぞった青い青い日

 

露店にて魯肉飯のタレだけをごはんにかけて食うような午後

 

小手先の進路目標決めるよりあなたはあなたそのままでグー!

 

夏の日に麻生久美子がサイダーを渡してくれたような木洩れ日

 

いぬぬこもいぬぬこゆえにかわよくてヒトもヒトゆえかわよくてグー!

 

久々にふとんカバーを干し終わり桐光学園2点先制

 

新入生代表のことば読み上げる生徒のように動じない木々

 

生まれてきて失敗だったと思うから共感できないいきものがかり

 

「おいしいね」なにも気遣うことなしにわらって食べることのはかなさ

 

早くあの口から排水溝的な臭いのするじょうあー消えてもた

 

明かり消すなみだの数だけ強くなるならばこの世はイージーモード

 

トーストとベーコンエッグを作る母冷えた夜明けのストーヴのように

 

「食べ物で遊ぶな」と子を叱りつつインスタ用の写真撮る親

 

幼児おさなごが水族館で午後五時に見たのは祖父の最期の姿

 

 

《浦和競馬短歌》

 

「来る馬は目つきが違う」とワンカップおじさん熱弁 たぬきそば買う

 

来るヤツはわかった後は買い方とモニター睨み馬そっちのけ

 

それぞれの想いをのせた14頭ゲートを嫌う美しき駄々

 

8-5-1なら3万もついたのにモニター越しに4着のバカ

 

1着の騎手は誰だか知らないが4着の騎手焼きつくフシギ

 

ゴマシオでシケた江戸川乱歩似のエビスも笑う浦和競馬場

 

オヤジども10番買ったかすぐ確認 皆で外せば怖くないから

 

牡馬9歳馬体8kg増を見て中年太りじゃないのと思う

 

レース後に1番人気の出遅れを悔いるあなたに何も非はなし

 

精算機前でカップル落胆しバイト頑張る宣言の17時

 

食堂でうどんを湯がくおばちゃんもあきらめ顔でバケツ片付け

 

 

《公文国際学園中等部・高等部短歌》

 

両親のプライドのため無理をしてただ無理をした中学入試

 

私立中合格通知は非日常そこから始まる終わりなき日々

 

教室の暴力性に気づく梅雨 女子の会話を聞かぬふりして

 

「かぶとむし」かばんで鳴った ぼくはいま女子の視線に殺されている

 

ひかりさすカースト上位勢爆笑 不登校児の味のない米

 

教師ドアを激しく閉めて追う生徒 残りの群れのあくびひやかし

 

眼の赤き体育教師我を見て隣席怒鳴る時の静けさ

 

チャーシューメン特盛の列 北乃きいのCMのような青春はなし

 

十時過ぎひとり校門ながめつつひとり駅までひきかえす梅雨

 

腰パンでDragon Ashを聴く奴の隣りで聴いたゆずのMD

 

口ごたえするなと怒鳴るジャケットの後ろ姿に糸くず見っけ

 

祈りつつ冬のグランド駆け出してハイパント蹴る16時2分前

 

トイメンの肩を指すとき両腕の「仲間」の文字は見ないふりして

 

右腕にすべてをのせて飛び込めばラインの外で聞いた歓声

 

水筒にオレンジジュース入れるから明日は学校行けたらいいな

 

ラグビーの勝ち方知れど勝つことの意味も知らない教師は嫌い

 

4Fの窓際の席 授業中、死後の世界を考えていた

 

放課後のずれたまんまのイスの背が夕陽を浴びて終わる一日

 

部活後にからあげクンを食べながらバスの車内で失恋を知る

 

誰にでもひとつは才能あるなんて理想論だというような夜

 

フラスコの内部反応覗きこむ君のまゆ毛は髪で隠れて

 

バスケ部が人権失うすぐ横を失礼したら見えし夕焼け

 

「受験生がんばれ!」中吊り広告を見て見ぬふりの冬がはじまる

 

窓越しに見た夕焼けの砂浜だ 一人足りない集合写真

 

父親が進路について語るときいつも松井がいい当たり打つ

 

一日が終わり教頭先生は信号待ちのハゲに変身!

 

さりげなくルーズリーフをくれたきみ むねのたかなりまでもらうぼく

 

多数決じゃんけんで決める合唱曲 日本の民主主義の限界

 

松葉杖ついて教室入る朝 笑いが起きてちょっと安心

 

わけもなく廊下を走る女子生徒 青春がただこぼれていたり

 

ラジカセで「青いベンチ」を聴いていた同窓会には呼ばれないボク

 

しあわせにいつかなれると思ってた学生時代はしあわせだったな

 

 

《短歌アラカルト 2》

 

我を見て「少し休んでいったら?」と母は気遣うマサラタウンで

 

生きろだの死ねだの子どもを作れだの他者も社会も言わないでけろ

 

新宿で降りる友達見送りて一人になりし時のぬくもり

(『NHK短歌』2020年5月号・大辻隆弘選「別」 佳作)

 

赤白く光るアロワナありがとう笑わなくともよいのだと知る

 

午前2時宮崎あおいはWOWOWで涙を流す誰かのために

 

ガニマタでチャリ漕ぐおやじうまそうにからあげクンを食って笑った

 

正座して頷きながらビール注ぐ村上春樹を叩く先輩

 

窓際のコーヒーの木が枯れていくようにぼくらのまごころは死ぬ

 

ありがとうございますよりアザッスと答えてしまう好きな先輩

 

飴色に冷えた麦茶を透かしつつ君の街まで向かう夕方

 

醤油バターしめじパスタのレシピです まずベッドから起き上がります

 

恋愛も差異作り出すものならば満たされ続けるわけがなくない?

 

友達の友達の死と友達の死は同じこと はたから見れば

 

鉄棒でコウモリとなり校庭を見れば流れる夕焼け小焼け

 

消えかけた横断歩道の白だけを跳んで向かった君の家まで

 

おっぱいのかたさもしらぬ青年が社会を語る串カツ田中

 

パンジーとビオラが風にあおられて拍手する春今日も生きよう

 

二十三時五十九分五十九秒明日のためにためらわず寝ろ!

 

フルーチェの風呂にぬくぬく入る夢ふかふかの布団蹴散らしてをり

 

明後日の予定慌ててリマインド「ポテトサラダとチーズはんぺん」

 

子供、子供、結婚報告、バーベキュー、スポーツ観戦、台湾、子供

 

夜が来る15分前 あじさいの染物のいろ壊れゆく空

 

少年と少女が夕陽を浴びながら待ち合わせするようなアネモネ

 

サルトルとボーヴォワールが歩くパリ 車道側にはどちらがいるのか

(『角川短歌』2020年4月号「角川歌壇」・松村由利子選 佳作)

 

意味なんてなくていいから君が今やりたいことをやればいいから

 

 

ほんとうのことは死してものこりゆくこころふるわすほんとうのこと

 

 

《あとがきにかえて》

シロクマぽよんぽ第一歌集『しろくま日和』を読んでくださって、誠にありがとうございます。

「シロクマぽよんぽ」というペンネームですが、僕は作品を作家論的に読まれることが嫌なので、性別も年齢もわからないようなものにしました。Twitterでも、ツイートした人がどんな人なのか知らなくても、心が動かされたり、ハッとさせられたりするじゃないですか。それなのに、短歌はまだまだそうなっていないことが多いと思います。ロラン・バルトじゃないけど、どんな詠み手なのかとか、詠み手はどういうメッセージを込めたのかとか、そんなことは本当にどうでもいいことだと思う。

俵万智とか穂村弘とか、まあ村上春樹でも夏目漱石でもシェークスピアでもいいんだけど、僕らは彼らの何を知っていると言えるのでしょうか。せいぜい顔と名前が一致しているくらい。もっと言えば、家族や恋人、学生時代の親友だって、せいぜい顔と名前が一致しているくらいなんじゃないかな。

できるだけ純粋な形で作品と読者が関係を持ってくれたら、僕にとってそれは、とてもとても嬉しいことです。そしてこれからも、そういう作品を作っていけたらいいな、と思います。ぽよんぽよん。

 

《著者》  シロクマぽよんぽ

(Twitter:@sirokumapoyonpo

2017年、「斗田翡翠ますだひすい」名義で、小説『左へカーブを曲がると』が『文芸川越』に掲載される。『9月3日のクリームソーダ』など小説多数(現在、オンライン文芸サイト「破滅派」にて公開中。https://hametuha.com/author/hisui_masuda/)。

2020年、短歌を始める。オリックスバファローズをこよなく愛するシロクマ。

 

《表紙イラスト》 sasaさん

https://www.pixiv.net/users/20203186

2021年7月26日公開

© 2021 シロクマぽよんぽ

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