いびつ
純白のシーツと彼の隙間にはさまって寝る。彼の腕は、私の頭に押されて、もう、壊死してしまった。私は無心で腕にぐりぐりと頭を押し付ける。腕の砕ける音がする。
切り込みを入れて、開きかけたオムライスの口を閉める。
呼吸のできなくなったオムライスは、彼の冷蔵庫のなかで、一口ひとくち、死んでゆく。
彼の、大好物。
ベッドには、彼のもるんとした尻がのっている。まるでプリンのようだ。くるりと撫でるとぷるんと波立つさまも。カラメルソースのかかったあの二色の色合いも。
まるい。茶碗で成形したチキンライス。しかし、真ん中は真空が詰まっている。表面だけ、米で覆われているのだ。
しかし、要は、私が作ったということ、その一点のみが重要なのだ。
物言わぬ彼を、慈しむような、ちょっと困ったような、顔で見つめる。
安らかに眠っている。安らかに。「どうぞ安らかに。」
すると突然、彼の口がぱっくりと開いた。「ええ。」
そんなはずは。そんなはずは、
私は思わず逃げ出した。
とろける日差しに、身を起こした彼の影。さんざん殴られた尻や背中と、しびれた腕を一瞥してため息を吐く。
不安定な彼と一緒に生きるというのは大変なことなのだ。特に彼はたちが悪い。
でも、彼は、先天的ストックホルム症候群なのだ、きっと。
今までも、いつもそうだったのだ。
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