新世紀元年のサラダボウル

アサミ・ラムジフスキー

1,216文字

部屋の片付けをしていたら11冊の大学ノートを発見。15~17歳のころの作と思われる200ほどの詩が書かれていたので、そこから比較的観賞に耐えうる短いものをピックアップして連作詩にでっちあげました。思春期の供養です。

グッドモーニング

 

地下鉄のホームに立って

落としものを拾い上げたよ

ちいさな赤い靴だったよ

目覚まし時計はもう買わない

二度と買わないったら

もう買わない

 

通学路にて

 

色を濃くしたアスファルトのうえ

宝石をばらまいた

ばらばらばらまいたら

きらきらきらめいた

じゃれじゃれじゃれあったら

どよどよどよめいた

雲の切れ間で

ビニール傘が立ちつくしている

忘れものが多いこのごろ

 

たのしい水泳教室

 

ゴミでできた城のなかで

ソーダ水を飲んで暮らす

そんな素敵な夢を見た

ソーダの泡に言葉は溶けない

だからいくらでも飲めるんだ

 

酸性雨でもおいしいね

おいしい水よりおいしいね

 

氷の隙間から

通り過ぎた季節が見えたよ

やけに変色しているのは

夕焼けのせいにしておこう

 

ふたご座

 

思い込みが海をばらまいたから

僕はまだびしょ濡れだ

あのちらちらと光る星が

溜息でできているのと同じように

 

どこかで見たような風景は

どこかで見たような風景だった

勘違いだったらいいのだけれど

勘違いじゃなかったら困るのだけれど

 

流れ星はすぐに消え去った

それを気にする理由はない

ひとつもない

 

ところで僕はいて座なんだけど

 

故意のダイヤル

 

指先ばかりが熱を失うのに

電話の声はどうしてそんなに明るいんだい

眩暈がしそうだよ

間違えましたごめんなさい

ごめんなさいごめんなさい

ごめ

 

2001年のナックルボール

 

水面をかすめた白い午後と

乾いたグラスに響く歓声

 

甦るのは夏の少年だ

咲かずに枯れたひまわりが

溜息ひとつまぶたをとじた

 

振り返るのは夏の少年だ

高く舞う白球の行方を見失い

二度と消えないかさぶたになった

 

スコアボードは動かないし

チームメイトは全員嫌いだった

 

よそゆき

 

趣味は糸の切れた風船を見送ることです

氷水のおいしい季節ですから

潮風のにおいが息苦しくさせます

届かぬ手紙の束をかかえていますが

紙飛行機にもなれない紙くずです

テレビの見過ぎで目を痛めました

しばらく読書はやめておきます

思い出ばかりが化石になります

 

手品

 

君の手帳から

今日

僕のイニシャルが消えるよ

 

微熱

 

風船がしぼんでいたよ

だれの抜け殻だろう

仔猫もうなだれていたよ

おまえには見えるのかい

なにが見えるんだい

 

風の形を教えてくれたのは

カーテンだけだった

おまけにカーテンときたら

いつまでも笑っているんだ

 

もう口笛の吹きかたも忘れてしまったよ

目覚ましが鳴り響けば

体温計がまた増える

2016年11月12日公開

© 2016 アサミ・ラムジフスキー

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