咎の園 人工楽園にて(2)

咎の園(第3話)

山本ハイジ

小説

17,928文字

R18/エログロ

 立ちあがり、舞台をおりて原稿を観客たちに捧げてから礼をする。そしてなにかの儀式のようにサテュロスの陰茎に口づけしてから、輪姦された。何人もの精水で浣腸されたあと、原稿に糞をするようにと言い渡される。
 すでに汚物と化している原稿の上に腰を落とし、力めば屁に似た音をさせながら精水がどろりと出た。つづいて細かな便が一つか二つ、排出されていく。ふと、これを口にしろと命令されたらどうしようかと不安になったが、その役は木口さまが挙手してくれた。
 ……狂宴が落ち着いてから旦那さまのもとへ行こうとしたが、宮沢さまに遮られてしまった。宮沢さまはスケッチブックを抱えている。
「入浴してからでは、ダメですか?」
「ああ、わたしの気が萎えぬうちに。性のにおいも消してはいかん」
 宮沢さまは小首を傾げてひげを撫でつつ「瑞樹も欲しいな」と言った。一緒に広間を出て、階段をのぼっている途中、俺は「楽しんでいる最中では?」と一応聞いたが無駄だった。
「そのときは多めに金を出して、よく謝る」
 瑞樹の部屋の前につくと、宮沢さまはドアを遠慮なく叩いた。少しして、瑞樹の客はずれた眼鏡を直しつつ――そういえばこの客の名はなんだっけ。あまり関わらないからな――迷惑そうに出てきた。
 ごねる客に宮沢さまは瑞樹を借りる値段を提示して、交渉をはじめる。そんなに時間はかからないから、絶対に瑞樹に手は出さないからと繰り返し、ようやく客は渋々瑞樹を差し出した。瑞樹は全裸に華奢なミュールを引っかけただけの姿だった。
 俺の部屋に移動する。宮沢さまの注文を聞いて、瑞樹はミュールを履いたままベッドにあがり、枕に頬杖をつく格好で横になった。俺はそんな瑞樹に子供が甘えるように擦り寄る。彼女の肌はほんのり汗臭かった。
「……外の世界はつまらないものばかり描かせる」
 スケッチブックを開き、鉛筆を走らせる宮沢さまのいつもの口癖。約束通り時間はかからず、瑞樹の体温の心地よさにやや眠気が差してきたところでスケッチはおわってしまった。肉体的快楽もいっさい求めてこなかった。

 

 それから寝てしまおうかと思ったが、もう瞼は重くならない。コルセットを自室に置き、朝と同じく好色な女の妖精に寄りかかって湯に浸かったあと、広間の隣の厨房を訪ねた。長い縮れ毛を一つに束ねた中年の使用人が一人、ザワークラウトを漬けている。
「戸渡さん、お酒をもらえないでしょうか」
 樽の中のキャベツに塩を撒きながら、戸渡は無言で銀色の冷蔵庫を指差した。開けて、適当に選んだのはミニボトルのワイン。アルコールならなんでもいい。安物のそれを持って、旦那さまの部屋へ向かう。
 ドアをできるかぎり静かに開けた。手探りで貝殻のランプを点けようとして、やめる。旦那さまの眠りを妨げてしまうかも知れない。かわりにテレビを点けた。彫刻の施された木製のテレビ台に載っている、極彩色の鳥の剥製をランプより弱い光がぼんやり照らす。揺り椅子に座り、ワインのスクリューキャップを外した。直接口をつけて風味の感じられない、渋いだけの液体を流し込む。
 ベッドの縁に少女が裸で座っている。面立ちは美しくないが、腰まで伸びた黒髪はよく手入れされているのだろう。天使の輪があった。ベッドのそばに立つ男はそんな髪を自らの赤黒い性器に巻きつけている。手で、というより髪で扱き、獣のようなうなり声。はっとしてテーブルの上のリモコンを取り、音量をさげた。
 ワインを一口飲み、チャンネルをかえる。若くない女がベッドの上、うつぶせた男の腹を膝に載せて、手を振りあげていた。おろされるたびパチン、と滑稽な音がかすかに響き、男の尻肉は揺れる。女の手の甲には、薔薇があった。
 ワインを一口飲み、チャンネルをかえる。痩せた男が女を正常位で抱いている。映像だと男の後ろ姿と女の開いた脚しか見えず、女の容貌はわからない。チャンネルをかえようと思ったが、ふと妙なことに気づく。女の反応、薄すぎないか。力なく脚を開いているだけでつやっぽい声一つ漏らさず、身じろぎもしない。やがて達した男は女から離れる。女は目を閉じていた。……男は疑似死体性愛か、睡眠愛好者なのかも知れない。
 ワインを一口飲み、チャンネルをかえる。老婦と老夫が交わっていた。ベッドのそばには少年が立っていて、じっと様子を傍観している。そんな少年の肩に薔薇を目視できた。少年に同情の念を寄せつつ、チャンネルをかえる。
 熊のような男が、同じく熊のような男を犯している。チャンネルをかえる。
 まるい紙皿に盛ったクリームが勢いよく、ショートヘアの女の手によって男の顔へ叩きつけられた。唐突すぎて思わず吹き出す。女は無邪気に笑っている。男も顔面が白いまま笑っている。男の裸の胸に垂れたクリームに、女はエロチックな所作で口づけた。
 ワインを傾け、次々とチャンネルをかえた。少女の細い腕が男の肛門に飲み込まれている。美しい女を正座させて、男は股間を勃起させながらその女の容姿を罵っている。肥えた女の胸に垂れる二つの脂肪の塊を、法悦の表情で男は揉んでいる。瑞樹と客はおとなしく寝ていた。なんとなくチャンネルを戻していく。今度は少年と老婦が性交して、老夫は傍観している。……。
 残り少ないワインを一息に飲み干した。いい感じに酔いが廻っている。外が白んできたのか、カーテンがうっすら透けて見えた。旦那さまの隣にこっそり潜り込んで寝るつもりだったが、これでは早起きできそうにない。テレビを消し、ワインボトルを持って部屋を出る。
 自分の部屋へ戻る途中、踊り場のポールに手錠で後ろ手にボンデージされて座っている少女を見つけた。つやつやの髪はおかっぱに整えて、両手で掴んだら指先同士が引っつきそうな腰には幼く甘い顔にそぐわぬエナメルのアンダーバストコルセット。アルコールのせいなのか魔が差した。しゃがんで少女の平らな胸に唇を寄せると、少女は怖いのか震えた。そばにボトルを置いて、髪を撫でながらもう片手で体を弄(まさぐ)る。少女の首筋にあった薔薇に舌を這わせ、手を股間に遣った。ショーツに小さなふくらみを感じる。少女ではなく、少年だった。
 構わず、ショーツを剥ぎ取る。床に膝をついて少年の股間に顔を埋め、かわいらしい幼茎を愛でた。唾液で後ろも濡らし、小指を挿す。少年が手錠の鎖を鳴らした。放出させてあげないとかわいそうだろうが、さすがに眠い。唾液をたして指を増やしつつ、自分のショーツを脱いだ。
 数回扱けば、問題なく立つ。木口さまに言った事柄は客に失礼にならぬよう気を遣ったことから、語弊があった。顔をあげて指を抜き、座ると少年の尻を膝に載せて、細い腰を浮かさせる。少年は床に爪先を立てていた。つらい体位だろう。やや苦労して、女形の穴に亀頭を入れる。
 押し進めば快感が走った。締めつけてくれる入り口付近を使って、陰茎を扱く。俺が楽しんでいるのに対して少年は睫毛を濡らし、苦鳴を漏らしていた。幼茎を愛撫してあげてもやわらかいままだ。ここに放置されていた時点で処女であるわけがないが、まだ慣れていないのかも知れない。
 そっと少年の唇に触れて、口内へ指を潜り込ませた。
「痛かったら噛んでもいい。……でも、これくらい耐えられなければ」
 なまあたたかい舌を指の腹でさする。小さな歯は弱々しく、くすぐったい。
「もっと、強く」
 舌をつねった。瞬間、指の二、三本に鋭い痛み。途端に俺の快楽は増大する。
 少年の中に注いでから、ふと悪戯心を起こし、ボトルの飲み口で精水が垂れる穴に栓をした。ボトルを捨てる手間が省けた。ショーツを穿いて自室に戻り、布団に包まると心地よい疲労感からすぐ眠りに落ちる。
 しかし何度も客に寝込みを襲われてしまった。眠気とアルコールが残った頭のまま交わり、ベッドを出たのは昼。客の手で浣腸を済ませ、食事はザワークラウトを挟んだサンドイッチ。客たちに快楽を供しつづけて、余暇に化粧をし、装いを変えた。
 娼婦のような真っ赤なコルセットと、ガータータイツと後ろが紐のようになっているショーツをつけて濃い口紅を引く。長い巻き毛のつけ毛もつけた。
「おお、高級娼婦(ココット)のようじゃないか」
「……よく観察されたら男娼だとバレてしまいますが。それに、どの辺が高級ですか?」
 客を伴い広間へおりると、ちょうど前座がはじまるところだった。ロック調のBGMが流れるなか、舞台の上では冒涜はなはだしい修道女――修道服の布地は非常に薄く、体にぴったり張りついていて、乳首が透けて見えていた――が二人、小振りのナイフを構えて対峙している。舞台の前では客の一部が集まって静観していて、使用人の合図とともに試合がはじまった途端、わっと盛りあがった。
 俺の客は興味ないらしい。テーブルの上の、色取り取りの食用花を添えた豚の生首を意味なく指で突っついている。使用人に原稿を預けて、生首の周りに置かれている岩塩焼きの豚肉と、ハイビスカスの花弁をまぜたドラゴンフルーツのサラダを取り分けている最中、気づいた。正面のテーブルの上、脚を開いてデザートを供する少女の奴隷に悪戯している、金髪の男に。
 向こうも俺に気づいたらしい。少女の股間を掻き廻していたスプーンをとめて、俺と目を合わせる。顔立ちは整っているのに治安の悪い不夜城が似合いそうな下品な雰囲気のせいか、美男子と形容できない。ガウンを着ているか、裸の客が多いなかスーツを着崩していた。
「久しぶり」
 返事をしようとした瞬間、響き渡る観客たちの興奮。舞台のほうへ目を遣ると、修道女が相手を殴り倒していた。相手の頭巾が取れて、金になるまで脱色した長い髪が散らばる。修道女は相手の体に乗り、ありったけの汚い言葉で侮辱したあと、ナイフで服を切り裂いた。露わになる、相手の乳房。
 そのあいだに男はスプーンを少女のかたわらの小皿に置いて、どこかにいってしまった。スプーンは赤く染まっている。再び騒ぎ出す観客たち。修道女が敗者を舞台から蹴落としていた。
 食事を盛った皿を客に差し出す。客は豚肉を食べながら、デザートの少女の隣、ワインを供している少年に興味を示した。前のテーブルへ廻る。器具で拡がった少女の膣から、シロップで漬けたチェリーが溢れていた。スプーンの赤は血ではなかったようだ。……うつぶせている少年のそばには、ワインボトルとグラスと浣腸器。客は真紅のワインをグラスに注ぎ、嬉々として浣腸器で吸いあげる。
 よく見たら、明け方に俺が犯した少年だ。注入して、少し我慢させてから出されるそれを客がグラスで受けとめる。一口飲んで、客は俺にグラスを向けた。笑顔で受け取り、口にして見せる。便はまじってはいなかったが、ほのかに感じる異臭。いや、生理的嫌悪感からくる錯覚かも知れない。
 夕食を済ませる。敗者への輪姦が落ち着いて、舞台の血が拭い去られ、椅子が設置された。原稿を受け取って、舞台にあがり頭をさげる。尻の溝に食い込んでいるショーツをずらし、座った。
「車はどんどん辺鄙なほうへ走っていきます。住宅街からも離れて、ついに山に入ってしまったときは変に感じました。整備のされていない道をガタガタ揺れながら進んで、窓の外は鬱蒼としていきます。……そして、樹木は急に開けました。
 たまにホテルと勘違いしてしまう人がいますね。車をおりて、門の両脇に立つエロスの像に祝福されながら、私は人工楽園の敷地内へ足を踏み入れました。使用人たちが旦那さまと私を出迎えてくれます。この白く、立派な建物に入ったとき、驚きましたよ!
 内装や広さに、ではありません。お金もちに対して抱くイメージ通りです。ただ、みんな裸なんですもの! 旦那さまに頭をさげる女性たちはくびれた腰に巻いているコルセット以外なにもつけておらず、乳房と下腹部が剥き出しです。当時は目の遣り場に悩みました。……旦那さまは私を使用人の一人に預けます。――綺麗にお化粧するように、と言って。その使用人に部屋へ案内される途中、私より年下だと思われる男の子が全裸で鎖に引かれて、四つ足で歩いているのを見かけました。鎖は、男の子の陰茎を締めているベルトにつながっていました。
 通された部屋は二階の私の自室です。……性行為さえできればいいので狭いんですよね。意外に感じつつ、使用人に言われるがまま荷物を置いてからベッドに腰かけました。かたわらには化粧箱と、折りたたまれた黒いレースがあります。使用人は化粧品を手に取り、私の顔に触れました。私はなんでこんなことをするのかたずねました。使用人は――旦那さまの子息となったあなたを紹介するパーティーがあるのです、と。そんなこと一言も聞いていなかったので面食らいましたよ。はて、男も化粧するものなのかと思いながら、私は素直に使用人の手に任せました。
 化粧がおわると、使用人はコンパクトの鏡を見せてくれます。驚くほど妖美になった自分の顔がそこにありました。使用人は次にレースを広げます。それはガウンでした。明らかに女性用の形をしたショーツが、たたまれていたガウンに挟まっていました。とても正装とは呼べないようなものでしたが、私は使用人に言われるがままシャツとズボン、下着を脱いで着がえました。なんてことはない、いつもと同じ大好きな嫌らしい格好です。
 そのまま部屋を出て、ここ、広間の前で待っていた旦那さまのもとに私は引き渡されました。広間に入るとガウンか裸の男性と、ランジェリーかドレス姿の女性たちは食事していた手をとめて、いっせいに私へ視線を向けました。旦那さまはよく通る声で――私の息子、影次です。みなさま、存分にお楽しみください。と礼をしたあと――ほら、挨拶しにいきなさい。と、私の背中を押します。旦那さまはついてきてくれません。
 私は緊張しつつ、お客さまの集まりの一つ一つ、または一人一人を廻りました。みなさま微笑みながら私のことをかわいいだの綺麗だのともてはやしてくれます。緊張はすぐにとけました。……脚や尻を撫でられたり、下品な質問をされたりと、こういう道楽者の方には天使の家の職員たちで慣れていましたから。もしもまじめなつまらないパーティーだったら、私はもっとがちがちだったでしょう。誘われれば抵抗なくお客さまの膝に座り、腿を触らせながらごちそうを食べました。すんなり馴染んだ私を見て、お客さまたちは驚いた様子でした。
 ところで、お客さまたちのなかに目立つ方がいました。男の子を連れている、栗色に染めた長い髪を頭頂部でまとめた女性です。目立つ理由は子連れだからというだけではなく、とても美人だったから。迫力のある目元は情熱的、でも小さく形よい唇には気品があります。コルセットで腰を締めて、豊満な胸を際立たせていました。そんな妖艶な肉体をさらに強調するように、細身のドレスを肌に密着させています。……ほかのお客さまは一応、名を伏せて語るつもりですが彼女は特別です。笹沼夫人、この初対面のときは二十代だと思っていましたが、当時三十代の笹沼京子さまです。エデンでの豪遊振りは有名でしたから、ご存じの方も多いのではないでしょうか。笹沼夫人とはとても仲良しでした。夫人はきっと、この催しで語られることを喜ぶでしょうから……。
 挨拶すると、夫人はにっこり笑って応えてくれました。夫人が連れの男の子へ私に返事をするように注意すると、上品なブレザー姿の、しかしどこか粗野な少年はそっけなく頭をさげました。しばし歓談します。少年は私と同じ年で、夫人の息子だということを知り、びっくりしました。学校の授業参観で見たクラスメイトのお母さまたちは、みんなおばさんという形容がぴったりでしたから私はこの二人を親子だとは思っていなかったのです。夫人は――まあ、お上手だこと。と、少女のような可憐な声でクスクス笑いました。
 私が別のお客さまのもとへ挨拶しにいく直前、夫人は――外から来た子でこんなに退廃している子はめずらしいわ、素晴らしい。と、言いました。ひとり言だと思って気にしませんでした。それから十分お客さまたちと嫌らしく戯れたあと、まだパーティーはつづく様子なのに、私は部屋に案内してくれたあの使用人の手で広間から出されてしまいました。――旦那さまのご命令です、と。部屋へ戻る途中、広間のほうからお客さまたちのざわめきと、旦那さまが大声でなにか言っているのが聞こえてきました。
 部屋のベッドの柵に、手枷と足枷の鎖がとめてありました。使用人は私の体を軽々と抱きあげベッドに押さえつけて、たやすく私の行動の自由を奪ってしまいます。突然のことに恐慌を起こし、わめく私を尻目に使用人は部屋を出ていってしまいます。……手枷の鎖を無駄とわかりながら鳴らしつつ、あまりの不安から私は恐ろしい空想をしました。小さなころ、年上の人たちがおもしろがって嫌がる私に無理やり見せた、家の居間のテレビに映るホラー映画を思い出し、ああ、私も拘束されて生きたまま解体されたヒロインのようになってしまうのか、と。
 そんな空想がおわるころ、ドアが開きました。笹沼親子と、金色の盥を持った使用人が部屋に入ってきます。夫人は満面に笑みを浮かべて、それとは対照的に少年は仏頂面で。使用人がベッドにあがり、私の脚のあいだに座ります。使用人のベストの胸ポケットから折りたたみナイフが出された瞬間、私はやめてとヒステリックに叫びました。が、残酷にも刃が出されます。鎖をめちゃくちゃに鳴らしました。
 切られたのは、穿いていたショーツです。使用人――動くと危ないですよ。夫人は私の股間へ好奇に満ちた視線を注ぎながら――おびえちゃって、かわいいこと! ……先にショーツを脱がしてくれればよかったのに。わけのわからぬまま拘束されて、いきなり刃物を向けられたら怖いですよ。そういうパフォーマンスなんでしょうけれど。
 私の恐慌はまだまだつづきます。ショーツが払われると、使用人が盥の中から液体の入った大きな注射器のようなものを三本……浣腸器です……と、タオルを一枚取り出しました。私は身をこわばらせ、ただされるがままでした。腸にぬるい水が注入されていく慣れていない感覚に耐えさせられたあと、少しして猛烈な便意が襲ってきました。使用人が私の腰を浮かして、盥を尻にあてがってくれます。一生懸命我慢していたのですが、夫人に悪戯をされた途端、屈してしまいました。夫人が私のうっすらふくらんだ腹をそっと押したのです。
 自失して、恥ずかしさすら感じません。少年は眉をひそめています。狭い部屋ですからにおいはひどかったでしょう。夫人は相変わらず笑っています。……残りの浣腸器すべてを挿されて、中を十分清めました。使用人が汚水の揺れる盥をベッドの下に置き、タオルで尻を拭いてくれます。そして使用人はポケットからプラスチックの小さな容器を取り出し、中のねばついた液体を私の肛門に塗り込みはじめました。指まで入れて、丹念に肛門をマッサージしてくれます。かすかに快感を覚えたところで、指を抜かれてしまいました。
 それから使用人はベッドをおりて、使った道具と盥を携え笹沼親子に頭をさげてから、部屋を退出します。――どうぞごゆっくり。という去り際の使用人の言葉と同時に、少年がベッドへあがってきました。少年は私を見下しながら、半ズボンと下着をおろします。少年の陰茎はいったいどんな改造を施されたのやら、大人のものと寸分違(たが)わないほど発達していました。腿を掴まれ、すでに反り返っている肉刀に情け容赦なく挿されます。
 使用人が肛門をよくほぐしてくれたのにもかかわらず、あまりの激痛に悲鳴をあげてしまいました。このとき少年は破顔しました。まるで、無邪気に虫をいたぶり殺す幼児のような笑顔です。慣れて、体内をえぐられる苦しみが薄れてくると、少年は私の腿をつねったり、手を伸ばして髪を引っぱってきたりしました。どうしても苦鳴を漏らさせたいようです。夫人は少年に、なにも注意してくれません。
 そのうち、少年が私の中へ注ぎます。こうして私の後ろの純潔は、同い年の男の子に奪われてしまいました。少年は無愛想な表情に戻り、陰茎を引き抜くと下半身の着衣を直して私から離れます。入れかわりに夫人がベッドにあがってきました。夫人はコルセットを外し、ドレスを脱ぎながら――どうだった? 兄弟の初物は。と、少年にたずねます。少年はなにも答えません。兄弟、についてはまああとで……。
 真っ赤なランジェリー姿になった夫人が、私を舌で愛撫してくれます。反応すると、夫人はショーツを脱いで私に跨がり、陰茎を繁みの中へ入れました。夫人は――あなた、高くて大変だったわ。と呟き、私の初物を楽しみます。
 夫人は自分で陰核をくすぐり、熟した膣には小さすぎるであろう幼茎を、括約筋を利用して締めつけてくれました。夫人はとても魅力的ですが、私は失礼ながら放出することができませんでした。少年に凌辱されたショックを引きずっていたのです。
 内腿を痙攣させて、夫人はほとんど自慰で達しました。こうして童貞は、夫人へ差し上げたのです。夫人は私にキスをして――あなたが素敵な奴隷になったら、また会いましょう。と言葉を残し、私の体からおりて着衣を元に戻すと、行為を静観していた少年を連れて部屋から出ていきました。すぐに激しい足音が響き、全身を褐色に汚した男性が部屋に入ってきます。私の糞を競り落としたのでしょう。
 男性は広間にいたお客さまです。お客さまはベッドに飛び込み、私を糞に塗れさせながら犯しました。それから次々とお客さまが訪ねてきます。途中、疲労からどうしても立たなかったので、女性相手にはディルドのついたベルトを巻かれました。男性でも後ろではなく前を所望する方と、女性でもペニスバンドを使って私を犯す方がいました。すべておわったあと、私の意識は自ずと途切れました。
 家で過ごした日々と、小夜子を夢に見たと思います。目覚めるとベッドのそばには使用人と旦那さまが立っていて、手足の枷は外されていました。着ていたガウンはともかく、体も綺麗に拭かれています。私がこれはいったいどういうことなのかと聞く前に、旦那さまが口を開きました。――すまないね、と一言言ってからパーティーの目的は私のオークションであったことと、人工楽園エデンという快楽施設の説明をしてくれました。そして、私の今後の運命を告げます。
 ――世話になるからには、ここで働かなければならないよ。甘やかしてばかりはいられないからね。と、冷酷に。エデンに入ったとき見かけた、裸で頭をさげていた女性たちのように私もなるのだと伝えられました。本格的に勤める前に講習を受けてもらう、と旦那さまは使用人を示しながら言います。
 私に講習をしてくれたのは先程から話に出てきた使用人と同じ、そこでカメラを廻している戸渡さんです」
 カメラを持っていた戸渡に一瞬、観客たちの視線が集まった。旦那さまは今宵、抜けられない付き合いがあるか、俺より興味を惹く光景でもあるのか不在のようだ。
「ややここに来たことを後悔しはじめていると、旦那さまはふっと表情をやわらげて――とりあえず昨日はご苦労だった。ご褒美だ。と、言うと戸渡さんがドアを開けます。奴隷の少女が三人、部屋に入ってきました。旦那さまと戸渡さんが去ると、少女たちはいっせいにベッドへ飛び込んできます。私の体の至るところを愛撫して、陰茎を膣へ誘い、いたわってくれます。ある程度、私の心は癒されました。
 楽しみがおわってから、私は戸渡さんの手で大浴場へと連れていかれました。拭いただけだから、清潔にしてきなさいと。様々な妖精の像が設置された噴水を湯船だと思えず戸惑ったり、お客さまが一人いて軽く悪戯されたりしましたがなんとか入浴を済ませます。糞を擦りつけられたことを思い出し、念入りに全身を洗いました。戸渡さんが水分をタオルでよく拭ってくれて、私の髪を乾かし、肌の手入れまでしてくれます。しかし着替えがありません。用意されていたのは、レザーのコルセット一枚だけでした。
 服はどうしたのかと聞きました。――あなたの荷物は処分しました。と、返ってきます。そういえばベッドのかたわらに置いたはずの、ほとんど衣類しか入っていない私の荷物、パーティーを抜けてから見ていないような気がしました。
 コルセットを巻かれます。巻かれただけでも結構苦しいのに、容赦なく背中の紐を引っぱられました。肋骨、折れるかと思いました。そのまま部屋へ戻されます。いつの間にかシーツをかえられていたベッドに座らせられると、戸渡さんは突然スラックスの前を開けて陰茎を取り出し、私に突きつけてきました。――吸茎してください、と。……その行為をされるのは慣れていましたが、するとなるとどうにも抵抗がありました。――あなたはこれから、性器より汚いものを口にしたりしなければならないのですよ。上手にできたら、コルセットを緩めてあげますから。
 腰を楽にしてくれる、という約束に惹かれて恐る恐る口をつけました。――あ、もしも噛みついたりしたら殺します。と、戸渡さんはナイフを出して私の首筋にあてがいました。使用人たちは元は怖い職業の人ばかりですから態度は執事のようでも、発する雰囲気で冗談ではないことがわかります。半分泣きながら吸茎を教わりました。
 ――手でするのと同じように、唇で扱いてください。――舌を亀頭の裏に押しつけて。恐ろしいのと、早くウエストを解放させたいのとで精一杯やりました。なんとかなしとげましたが、戸渡さんは陰茎を抜いてくれません。精水を飲み込むようにと命令されます。躊躇しましたが睨まれて、慌てて飲みくだしました。戸渡さんのはクセがなく、飲みやすかったと記憶しています。
 陰茎をしまい、戸渡さんは約束通りコルセットの紐を緩めてくれました。私が息苦しさからやや解放されてほっとしているうちに、朝食と冷たい紅茶を運んできてくれます。まず紅茶で喉を洗い流し、食事はコルセットのせいか半分ほど残してしまいました。戸渡さん――では、これからよろしくお願いします。
 躊躇いがちにうなずいて応えると、平手で頬を軽く叩かれました。――頭をさげて、教授してくれることに対するお礼を言いなさい。旦那さまの子供と言えど、あなたはもう私より立場は下なのです。……こうして約一ヶ月にも及んだ、講習の日々がはじまったのです。
 昨日の輪姦で傷ついた肛門に軟膏を塗り込められると、細いディルドが尻にあたる部分の内側についたショーツを穿かされました。そのまま、初日は舌使いの訓練で費やされます。ベッドの上でアドバイスを受けながら、戸渡さんの指をしゃぶりつづけました。舐めているときの表情の作り方なども教わりました。
 戸渡さんの指がいいかげんふやけてきたので、今度は足の指を舐めました。普段は靴を脱ぐ暇もないほどの激務をこなしていらっしゃいますから、においがきつかったです。
 夕食のとき、戸渡さんが衣服をすべて脱いでベッドに寝そべり、皿になってくれました。私は命令されるがまま、戸渡さんの肌に嫌らしく舌を這わせ、食物を啄むような動作で食べました。ついで吸茎をして精水を飲んだあと、戸渡さんの口にお茶を注ぎそれをすすります。そのまま接吻の練習もしました。
 夜が更けると、少女たちが慰安してくれます。入浴して、またコルセットを締めてからベッドに入りました。ウエストにくびれがつくまでは、寝るときですら外すことを許してもらえません。腰の圧迫感で寝づらいし、酷使した口はだるく、精神も疲れ果てていましたが食事はおいしいし、なによりご褒美がありましたからまあ頑張れるかなと思いました。
 日が経つに連れて、ショーツはディルドが太いものにかえられていきました。コルセットの締めつけも強くなっていきます。どっちも慣れてしまえば、耐えられない苦しさではありません。あんなにつらかったはずのコルセットは少しすれば体に馴染み、結構早くにフルクローズできたほどです。
 好きな講習さえありました。戸渡さんが指やエネマグラを使って、後ろを愛撫してくれるのです。――快楽を感じられる箇所は、広げたほうが人生楽しいですよ。と、囁きながら。戸渡さんの性技は素晴らしく、当時はまだ後ろだけだと達するほどではありませんが、喜びの音をあげてしまいました。
 十分肛門が開くと、戸渡さんは色々な体位で私を抱くようになりました。陰茎を挿入されるのはトラウマになっていましたが、もうさほど苦痛はありません。私のそこは膣として機能しはじめていました。
 性的なこと以外には、化粧の仕方なども学びました。たまに旦那さまが私の様子を見にきて、褒めてくれたり、慰めたりしてくれます。……しかし、講習はそんなに甘いものではありませんでした。
 初歩的なことが一通りできるようになると、エデンのお客さまには愛好している方の多い、汚穢趣味に付き合えるようになるための訓練がはじまりました。戸渡さんは私の口に陰茎を差し込むと、精水ではなく尿を放出するのです。噎せて吐き出すたび、ひどく叱られます。――尿は意外と無菌です! と、快感を得られるレベルではない、打たれれば青痣ができるくらいの重い鞭で罰せられました。この体罰は、ついで苦痛に慣れる訓練でもありました。
 なんとかコツを掴み、飲めるようになりましたが次はいちばん苦労した、食糞です。理由を聞かされないまま、しばらく野菜中心の食事がつづいたあとでした。浣腸されて、てっきりいつも通り抱かれるのかと思ったら、出したものを食えと言うのですから仰天しましたよ。さすがに抵抗しました。が、戸渡さんは床を鞭で凄絶な音を立てて打ち――最初のうちは半分食べられたら許してあげます。これ以上反抗するなら、三食を糞にかえますよ。
 スプーンを使って、嗚咽を漏らしながら盥の中の汚物を口へ運びました。苦いですよね、糞って。細菌を殺す薬を飲まされてから、反抗した罰として鞭を一発受けました。この汚穢講習中、戸渡さんの糞を食することもありました。
 ほかは旦那さまの飴と、戸渡さんの鞭で養われた奴隷精神が混乱してしまうような講習がありました。――お客さまのなかには受動を好む方もいます。と、戸渡さんは私に鞭を渡してから裸になると、四つん這いになってしまいました。戸惑っていると怒鳴られて、慌てて筋肉のついた雄々しい尻を打ちます。私はどうにも攻撃が苦手で、何度もくすぐったいと叱られては、泣かされました。
 後ろの愛し方も教わりました。……こればかりはお仕置きを受けたところで、どうしようもありません。ペニスバンドの使用を許されました。
 未熟だった私の精神はすっかり疲労困憊して、もう慰安婦を遣されても回復しきれません。訓練に身が入らず、失敗を繰り返し怒られてばかりいました。戸渡さんは焦ったのか、ある日私を部屋から連れ出し地階のリンボへと案内してくれます。お客さまのほとんどが好奇心でおりてみたことがあると思います。よほどお気に召したのか、地上では遊興しなくなるお客さまもいらっしゃいますね。狭い階段をおりると、幼児のはしゃぎ声が響いていました。広がった光景は、そんな無邪気なものではありませんが。
 並んでいる檻の前、一つに戸渡さんは足をとめ、中をよく見るようにと言いました。檻の中では女性が二人、金属の台の上で交わっています。受動側のほうはにきびがひどくて醜く、その相手は男のような骨格をしていました。いえ、よく見たら男です。貝合わせをしているのかと一瞬思ったのですが、相手は縫い痕の目立つ乳房を揺らしながら本物の陰茎を抽送していました。
 台のそばには、棘のついた凶悪そうな鞭を持った使用人が一人立っています。二人とも肌は傷痕で汚らしく、無言で機械的に性交しています。……さらによく見て気がつきました。私はこの二人を知っています。天使の家の児童だった、あの三人のうちの二人です。色々なことがあったものだから、私は旦那さまに雇われていった卒園生のことをこの瞬間まですっかり忘れていました。戸渡さん――男のほうはお客さまがつきそうなので、のちに烙印を押してリンボ専用の奴隷にするつもりです。でも女の子のほうは出産さえおえてしまえばたぶん処分されるでしょう。
 処分という単語になにかとても恐ろしいものを感じ、質問しようとしましたが、その前に戸渡さんは隣の檻へ移動してしまいます。そこには最後の一人がいました。私は彼女の姿を見た瞬間、恐怖という感情を通り越し呆然としてしまいました。
 彼女は台に寄りかかり、腿を開いてだらしなく床に座っていました。そして、膝から下がありませんでした。柵から顔を逸らし、湿った股間を隠そうともしません。女陰より包帯に覆われた断面をしばらく凝視してから、視線を彼女の顔に移しました。彼女はひどく緩慢な動きでこちらに顔を向けます。目が合いました。……元々陰りのある、伏し目が似合うような目元をした女の子でしたが、今ではいっさいの生気が抜けています。しばらく見つめあってしまいました。すると突然彼女の目がぎらつき、口が裂けて狂笑が響き渡ります。私が誰なのか認識したのでしょう。
 そのときは気でも狂れたのかと思いましたが、彼女はきっと私もリンボに堕ちたのだと思ったのでしょう。戸渡さんが彼女を指差し、私を横目で見ながら言いました。――本当はあなたもこんなふうになるはずだったのです。……彼女の笑い声に負けないように声を強めて、戸渡さんはつづけました。――旦那さまがあなたを見初めて、養子縁組という気紛れをもしも起こさなかったらあなたは体を改造されたり、種馬として利用されたり、最悪の場合殺されたりします。あなたが卒園するころになったらこの三人と同じように適当に騙して、ここリンボに連れてきてね。
 そして戸渡さんはリンボという場所について丁寧な説明をして、私にホラー映画の空想は地下ならありえないことではないのだと思い知らせてくれました。――エデンの奴隷としてうまく適応できないようなら、リンボに堕とされます。旦那さまは惜しみつつもあなたを手放すでしょうね。とんだ期待はずれだったのですから。
 ……笑い疲れたのか、彼女は再び虚ろな目をしていました。戸渡さんが――犯してみますか? 彼女を。と、とんでもないことをすすめてきましたが、断りました。でもこの出来事からずっとあとで私はふと、彼女を抱かなかったことを後悔しました。
 それからはまじめに講習を受けました。脳裏では常に彼女の脚の切断面と、廃人のような目と、リンボに堕ちて壊された私の姿のイメージが過ぎります。少し前までは外へ逃げ出せないかと何度か愚考したこともありましたが、そんな甘い考えはすっかり恐怖に打ち砕かれました。
 脅して、無理やりにでも私のやる気を出させるという戸渡さんの意図は見事成功したのです。恐怖は私を追い込むだけではなく、ほかの効果も与えてくれました。精神が快楽に逃避したがっているのか、あるいは脳に焼きつけられた彼女の無残な様子が私の官能をくすぐっているのか――感度がよくなりましたね、と、戸渡さんが褒めてくれるようになったのです。愛撫を受けているとき以外、たとえば罰の鞭で打たれるときや、排泄行為をしたり糞尿を口にしたりするときでも表情に色気が出てきたとのことでした。
 講習最終日には体中を清潔にして、化粧をしました。仕上げとして私はエデン内を引きずり廻されたあと、大勢の使用人に輪姦される予定でした。全裸で行われるはずだったのですが、私が女の子の格好がしたいと希望を口にすると、戸渡さんはやや呆れつつも承諾してくれました。
 用意してもらったのは黒い総レース地で私の体より少し小さなサイズのワンピースと、レースがそろいのヘッドドレスです。ガータータイツを穿いてからそれらを身にまとい、コルセットを締めました。そんな私の姿を見た戸渡さんが、私の髪の毛先を緩く巻いてくれます。
 犬用の首輪をして、四つ足になりました。ワンピースの丈が短いせいで尻が露わになります。そのまま部屋を出て、通りがかったいろんな方に嫌らしい視線を向けられたり、悪戯されたりします。お礼に口を使うとこれまでの訓練の成果か、上手と褒めてもらえました。
 厨房を訪ねると、使用人たちと旦那さまが待っていました。戸渡さんが首輪の鎖から手を離し、私を促します。まずは口で使用人たちの陰茎を立たせました。旦那さまは相変わらずまざる気はないようで、傍観していました。次に自らショーツを脱いで、調理台の上に腹這いになり尻を差し出します。
 犯されているあいだ私はなんとなく、かたわらにあった俎板と包丁を見ていました。刃物からリンボを連想して、恐ろしさが込み上げてきます。使用人たちの攻撃にへたばらないように一生懸命がんばりました。そのうち使用人の一人が私の陰茎が硬くなっていることに気づき、私の体を仰向けにすると、ショーツを拾って付属のディルドを肛門に抽送しつつ陰茎を扱いてくれます。私は快楽に喘ぎながら、自分によく似た女の子が切り刻まれているところを妄想していました。……いえ、似ているというか自分自身のつもりです。私の性癖はリンボの件以来、妙な進化をとげていました。
 調理台から床に倒されて、輪姦は長々とつづきます。受け身になりすぎないように手を使い口を使い、ときには足を使いました。使用人たちの精水が涸れれば、今度は尿を胃に受け入れます。
 牛乳を浣腸されて、腸内に放たれた精水と、かすのような糞がかすかにまじったそれを皿に出し、飲み干して見せたときでした。全員私に笑って拍手を送ってくれます。戸渡さんが目を細め、優しい表情で――お疲れさまでした。しかし今まで私が教えてきたのはごく基本的なことのみです。これからは様々なお客さまたちと接して、学んでいってください。と、激励してくれます。なんとも言えない達成感がありました。
 旦那さまが戸渡さんに、私へ冷たい水を一杯よこすようにと命令します。それから旦那さまは私の頭をそっと撫でて――明日はゆっくり休みなさい。明後日、私の手でエデンの奴隷の印を押すからね。烙印が赤いうちにお前を買いたいという客もいるんだよ、と。
 翌日は一日中、遊んで過ごしました。そして私が奴隷になった日。旦那さまが私の部屋で、金属でできた大きなはんこのようなものをライターで熱します。私はショーツ一枚だけを穿いた姿でベッドに寝て、怖々とその様子を眺めていました。奴隷に押される烙印については説明を受けています。けれどいざそのときになると、予防接種の注射を刺される直前以上の緊張に襲われました。烙印は見ての通り、左腿に。押された途端、一瞬息がとまりましたよ。何十秒か経ってから離されると、薔薇の形に焼けた皮膚が剥がれます。
 旦那さまが私の真っ赤な薔薇を指の腹でなぞり、口づけを落としてからかんたんに手当てをしてくださいました。火傷がひりひりしているうちに、私は紐を締めきったいつものレザーのコルセットの上にガウンを羽織った格好で旦那さまと、旦那さまの部屋でお待たせしているらしいお客さまのもとへ連れ立ちました。
 旦那さまいわく私を水下げしてくださるお客さまは、旦那さまにも快楽のお供をするようにご要望しているとのことです。なにをすればいいのか、お客さまはどんな方なのか不安はたくさんありましたが、隣の旦那さまの存在に安心感を得ることができました。旦那さまのコレクションで埋め尽くされた、室内自体がオブジェのような部屋へ通ります。笹沼夫人、夫人の夫君、ご子息がお茶を楽しんでいました。
 夫人は一昔前の洋画などで貴婦人がよく身に着けている、やや肩が張って見えるデザインの上品なスーツを着て、造花を飾ったつばの広い帽子をかぶっていました。――お久しぶり、と微笑みかけてくれたあと、夫人は私たちもお茶の席にまざるようすすめます。さほど広くはないサイドテーブルをかこんでいる椅子の空きは一脚だけでした。夫人に言われて、例の少年は父君の膝の上に移動します。戸渡さんの教育で控え目になった私は、立っていますと遠慮しましたが夫人は――いいの、いいの。そっちのほうがやりやすいから、と。
 夫人の夫君がご子息の半ズボンの前を開き、陰茎を取り出すと愛撫をはじめました。私はもうたいして驚きもせず、少年が尻であたためていた席につきました。控えていた使用人が、飲みかけが入ったままのティーカップにお茶を注いでくれます。旦那さまには新しいカップとお茶が用意されました。
 そのまましばし歓談します。その会話のなかで、少年の父君は実の父君ではないことを知りました。夫人が茶菓子のチョコレートをつまみながら――影次、もうリンボにはおりてみた? あたしね、夫との子供を、夫が見ている前でリンボで堕胎したの。夫は直前まで本当におろしてしまうのかと悲しんでいたけれど、あたしの中から自分の種で実った胎児が掻き出されるのを目にすると泣きながらも手淫して、放出してしまったわ。……夫君は赤面してうつむいてしまいました。夫人が夫君の手で陰茎をふくらませているご子息を指差して――で、普通に産んだこの子の種は清十郎さんのものだったりするわ、と。だいぶ前に夫人が私と少年を兄弟と称したのは、つまりそういうことだったのです。ふいに、夫人はため息を吐いて――ああ、あのおろした子、食べておけばよかったわ。なんで思いつかなかったのかしら、と残念そうに呟きました。
 そのうち、父君とご子息は旦那さまのベッドに移動します。夫人も私に口淫をするように求めてきました。――お手並み拝見させていただくわ、とシガレットケースから出した煙草をくわえて。そばの席についていた旦那さまが使用人よりも早く、マッチを擦り夫人の煙草に火を点けました。
 椅子からおりて夫人の足下にひざまずき、恐る恐るスカートをまくらせてもらいました。夫人は、ショーツを穿いていませんでした。夫人が自ら座っている椅子を斜めにずらし、私の体がサイドテーブルの下から出られるようにしてくれます。――四つん這いになって、舐めてちょうだい。その注文通りに、慰安婦たちと戯れることで自然と訓練されていた女陰の愛し方で、夫人に奉仕しました。
 夫人は潤ってくれました。でも、濃厚なにおいを発する夫人の女陰から愛液を溢れ出させている源泉は私の舌にではなく、この状況にあったのだと思います。ベッドでは不義の子に抱かれて、夫君が喘いでいました。――まったく、ひどい妻と息子を持ったものだよ、ああ。……夫人はそれに同調するように鳴いています。――清十郎さん、影次に挿入して! と、夫人が呼吸を荒げながら申しつけました。
 旦那さまが席を立って私の背後に廻り、膝をつく気配を感じます。ショーツを腿までおろされて、そのまま抱かれました。この家族の交わりの様子は使用人がカメラに収めていました。……これが私の初仕事です。ではこの辺で。今宵は少し長くなってしまいました。次回は趣向を変えて、奴隷生活のなかで接してきたお客さまとの交わりの様子を、いくつか取り上げてご紹介したいと思います」
 立ちあがり、舞台をおりて原稿を観客たちに供してから、サテュロスに口づけを。それから舞台の椅子に座るためにずらしたショーツを直さないまま、客たちと下品に交わる。解放されてから、夕食をともにした客が帰宅の様子だったので、広間を出て大理石のエントランスで見送った。
「相手、してくんない?」
 見張りの使用人が開けたドアから客が外界に消えて、媚びて振っていた手をとめてから、かけられた声に振り向く。男はスーツをさらに乱した姿で、傷んだ金髪を適当に手で整えている。とても、議員の息子だとは思えない。

2015年6月19日公開

作品集『咎の園』第3話 (全9話)

© 2015 山本ハイジ

読み終えたらレビューしてください

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

この機能は廃止予定です。

タグ

この投稿にはまだ誰もタグをつけていません。ぜひ最初のタグをつけてください!

タグをつける

タグ付け機能は会員限定です。ログインまたは新規登録をしてください。

作者がつけたタグ

官能 少年 耽美

"咎の園 人工楽園にて(2)"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る