ぜんぶ、色眼鏡、カソリック!
「こうして、悪い魔法使いは正義の異端審問官様によって、やっつけられました。めでたし、めでたし」
僕は、その言葉で終わる物語ばかり読み聞かせられて育った。
僕が3歳のとき、魔法使いが引き起こした流行病で、両親は死んだ。
孤児となった僕を聖神教会が運営する孤児院が引き取ってくださった。
僕が15になった時、僕は異端審問官になった。
孤児院で育った者として、僧侶となる選択肢もあった。
僧侶は別名プーリストとも呼ばれ、魔法使いに害された人々を救済する者だ。
異端審問官か僧侶、どちらにも適正があった僕は、2つの選択肢から選べるなんて果報者だな、と思った。
しかし、心はとっくに決まっていた。
僕の両親は魔法使いに殺された。
ならば、仇を討つのが親孝行というものだろう。
それに、赦せないのだ。魔法使いの存在が。
魔法は、”聖神の定めた法”や”人の道理”から外れている。
なぜなら、魔法とは邪神の加護を受けることによって発現するのだから。
邪神は、諸悪の根源であり、人々を滅ぼさんとするもの。
そんな存在を、力を得るためという私欲で信仰するなんて……とうてい赦されることではない。
魔物が良い例だ。彼らとは分かり合えない。
魔物も所詮、言葉を話せる程度の浅知恵と、邪悪なる魔法を得ただけの獣にすぎないのだろう。
魔法使いも、魔物も、その存在すべてが赦せない。
だから、僕は彼らを狩る異端審問官になった。
異端審問官は、大いなる聖神から加護を賜る。
邪神からの加護とは全く異なるものだ。正反対と言ってもいい。
僕は、同期たちの中でも特に加護が強かった。
そのため、卑怯な術を使ってくる魔法使いどもにもおくれを取らなかった。
ある日、僕はひとりの人物と出会った。
魔法が存在しない異世界、【二ホン】から来たという彼は身寄りがなかった。
だから、教会に属するものとして、僕は彼を保護した。
そうして、魔法なき世界について語り合い、いつしか親友になっていた。
しかし、彼は魔法使いを擁護するようになった。
あの忌々しい奴のせいだ。
奴は、彼を悪の道へ引きずり込んだのだ。
彼と刃を交えるようになったとき。
彼は必死に僕へ訴えかけてきた。
「魔法使いは、邪神を崇めているわけではない」だとか「魔法使いの仕業とされているものは、ほとんど嘘だ」なんて、
到底信じられないことを。
嗚呼、残念だ。
彼とは、わかりあえたと思っていたけれど……それは、僕の勘違いだったようだ。
その思考を最後に、彼に剣で貫かれた僕は死んだ。
そのはずだった。
神と魔は水と油のごとく(仮代)
「敬虔なる信徒の魔法学園潜入」
「魔に属する者、ことごとく滅ぶがいい!」
かつて、彼はあらゆる異端を狩る神官であった。
言ってしまえば、強権的な教会の有する軍隊の所属。
彼は教会から吹き込まれたことを神の教えと盲信していた。
教会が自らの地位を揺るがしかねない魔法を恐れ、扱える者たちを迫害しはじめたとき、
彼は魔法を神の理に反する絶対悪だと信じ込んだ。
その果てに、唯一無二の友人と決別し、剣を交えて殺し合った。 当然のように彼は負けた。
何故なら、その友人は神を崇めずとも、神に最も愛されていたのだから。
そうして、彼は死んだはずだった。
しかし、彼が再び目を開くと、そこは剣に魔法が並び立つような世界であった。
あんなに迫害されていた魔法が市井に当たり前のように受け入れられている。
調べてみると、彼が生きてきた時代より600年の月日が経っていた。 教会の威信は失墜し、
今では神を信じる人の方が少ないという。
彼の信じる神が忘れ去られ、彼の信仰に答えて起きる奇跡は魔法として認識された。
そうして、口々に「その魔法の才を伸ばすべきだ」と魔法学園への入学を勧めた。
彼は内心で怒り狂ったが、教会を復興するため魔法学園へ潜入する。
友人の故郷「二ホン」のように魔が存在しない世界へと正すために……。
"いや、おかんがいうには、私は教会で洗礼もうけたプロテスタ――"へのコメント 0件