聡明な王女

合評会2022年11月応募作品

諏訪靖彦

小説

1,363文字

2022年11月破滅派合評会参加作品。お題は「童話」。
対象年齢は未就学児です。お父さんかお母さんに読んでもらってね。

 

その王女おうじょ誕生日たんじょうびでした。

毎年まいとし王女おうじょ誕生日たんじょうびには国中くにじゅう人々ひとびとよろこびます。それは王女おうじょがとてもあいらしかったからです。

王女おうじょもまた、誕生日たんじょうびこころからよろこびました。それは王女おうじょたのしませるために、おおくの国々くにぐにから曲芸師きょくげいしあつまるからです。

王女おうじょはいつもおもっていました。

「なぜ、誕生日たんじょうび一年いちねん一度いちどしかないのだろう?」

王女おうじょりませんでした。それは王女おうじょなかのことをほとんどらない子供こどもだったからです。

しかし王女おうじょ聡明そうめいでした。なかのことをすべりたいと、いつもおもっていたのです。あさ目覚めざめたときも、騒々そうぞうしいひるあいだも、ごはんをべているあいだはさすがにわすれていましたが、ねむりにつくころ、またかんがえていました。

大人おとなたちの挨拶合戦あいさつがっせんわると、いよいよちにった曲芸師きょくげいしたちのもよおしものがはじまりました。

最初さいしょ登場とうじょうしたのは青色あおいろひとみ呪術師じゅじゅつしです。

呪術師じゅじゅつし呪文じゅもんとなえると、からのグラスがワインでたされ、いていない蝋燭ろうそくあかりがともりました。

王女おうじょ呪術師じゅじゅつしえる呪文じゅもん不思議ふしぎでしかたなかったのですが、一番いちばん不思議ふしぎだったのは呪術師じゅじゅつし青色あおいろひとみでした。王女おうじょんでいるくに人々ひとびとはみな黒色くろいろひとみをしていたからです。

王女おうじょ呪術師じゅじゅつしきました。

「そなたのひとみではよるるのをいかにしてるのか?」

すると呪術師じゅじゅつしこたえました。

わたし青色あおいろひとみではしずむのをることはできません。しかしひる永遠えいえんのものになります」

王女おうじょ青色あおいろひとみのことをかんがえていると、つぎおもおしものがはじまりました。

つぎ登場とうじょうしたのは茶色ちゃいろひとみ画家がかです。

画家がか両手りょうて器用きよううごかし、王女おうじょ肖像画しょうぞうがをものの五分ごふんげました。

王女おうじょ画家がかふでさばきが不思議ふしぎでしかたなかったのですが、一番いちばん不思議ふしぎだったのは画家がか茶色ちゃいろひとみでした。王女おうじょんでいるくに人々ひとびとはみな黒色くろいろひとみをしていたからです。

王女おうじょ画家がかきました。

「そなたの茶色ちゃいろひとみではむかし記憶きおくをいかにしてすのか?」

すると画家がかこたえました。

わたし茶色ちゃいろひとみではむかし記憶きおくおもすことはできません。しかしカンバスにえがいたわたし過去かこおしえてくれます」

王女おうじょ茶色ちゃいろひとみのことをかんがえていると、つぎもよおしものがはじまりました。

最後さいご登場とうじょうしたのは緑色みどりいろひとみ人形にんぎょう使つかいです。

人形にんぎょう使つかいは三体さんたい人形にんぎょうを、あしくち使つかって、まるで三人さんにん人形にんぎょう使つかいが別々べつべつうごかしているようにあやつってせました。

王女おうじょ人形にんぎょううごきが不思議ふしぎでしかたなかったのですが、一番いちばん不思議ふしぎだったのは人形にんぎょう使いの緑色みどりいろひとみでした。王女おうじょんでいるくに人々ひとびとはみな黒色くろいろひとみをしていたからです。

王女おうじょ人形にんぎょう使つかいにきました。

「そなたの緑色みどりいろひとみでは木々きぎの色いろづきをいかにしてるのか?」

すると人形にんぎょう使つかいがこたえました。

わたし緑色みどりいろひとみでは木々きぎいろづきをることはできません。しかしさむきびしいふゆかんじずにみます」

王女おうじょすべてのもよおしものがわったあと、曲芸師きょくげいしたちのひとみいろのことばかりかんがえていました。ごはんをべているあいだはさすがにわすれていましたが、ねむりにつくころ、またかんがえていました。

青色あおいろひとみでは水面みなもうつ自分じぶん姿すがたをいかにしてるのか?」

茶色ちゃいろひとみでは琥珀こはくうつくしさをいかにしてるのか?」

緑色みどりいろひとみでは果物くだものじゅくすのをいかにしてるのか?」

こたえは出ませんでした。しかし聡明そうめい王女おうじょひとつだけたしかなことをりました。それは、自分じぶんている世界せかいすべてではないということを。

 

――了

2022年11月12日公開

© 2022 諏訪靖彦

これはの応募作品です。
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"聡明な王女"へのコメント 10

  • 投稿者 | 2022-11-19 14:39

    独特の雰囲気で素敵です。
    瞳の色から語られる言葉が美しい歌詞のようです。
    最後の一文が特に良いです。もう少しお話を続けてほしかったです。王女様が成長した後のエピソードとか。

  • 編集者 | 2022-11-19 20:11

    大猫さんのご指摘どおり唐突に終わった気がします。成長した王女に作者が興味を失ったのかもしれない……と訝しんでしまいました。

  • 投稿者 | 2022-11-20 01:00

    随所にちりばめられた繰り返しがいい味を出してますね。繰り返しは童話の王道要素だと思います。
    ただ未就学児にはちょっと難しい文章かな、と思いました。

  • 投稿者 | 2022-11-20 09:42

     童話の王道ともいえる、繰り返しパターンを経て結末に至るという構成。〔目〕のつけどころは面白いと思うが、子どもたちが真に受けて、瞳の色によって見えるものが違うという思い込みをし、偏見を助長しないかという不安を覚えた。/400字詰原稿用紙5枚以上10枚以下のルールは守るべき。

  • 投稿者 | 2022-11-20 09:45

    画家の答えた内容に何故か知らないけど嗚咽が出た。出ました。画家の答えた内容が好きです。

  • 投稿者 | 2022-11-20 10:33

    文章が美しい。大人が読むものならこれで良いと思いますが、童話なのでもう少し物語とオチが欲しい。

  • 投稿者 | 2022-11-20 11:34

    学びがあって良いですね。雰囲気もきれいで、しっかり整っていて。絵本で読みたいです。
    たしかに子供には難しいかもしれませんが、むしろシンプル&直球に気付きを促すラストを素直に受け入れてくれるかも、と思いました。
    対比的に自分が見えてる世界が全てだと思っている人が出てきたらわかりやすい、とも思いましたがそうすると世界観が壊れそうでうーん、となりました。

  • 投稿者 | 2022-11-20 15:36

    詩的な童話もまた美しくよいものです。青と茶と緑という瞳の色が、どんなエゲツない裏設定を抱えているか私には見抜くことができませんでしたが、きっと世界のさまざまな問題を暗喩しているのでしょう。

  • 投稿者 | 2022-11-20 19:50

    すごく良い前振りという感じでして、ここから展開した話が読みたく思いました。

  • 投稿者 | 2022-11-20 20:24

    瞳と同じ色のものが見えないのがいいアイデア。色つきサングラスをかければ見えないものも見えるのかしら。

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