団塊をぶち殺せ

天汁ちしる

小説

1,515文字

ここまで日本を経済発展させて、豊かな暮らしができるようになったのは誰のおかげだと思っているんだ!

 

またあの世代か。

レジで店員を怒鳴りつけている年輩の男性を見ると、ため息が出る。

自分が優先されていないと感じると、すぐに怒って立場の弱い人間に喰ってかかる。──いわゆる団塊思考というやつだ。日本のど真ん中を歩いてきて、昭和から平成になり令和になって、身体や脳が弱って世の中の流れについていけなくなっても、まだ自分たちが主人公かリーダーだと信じて疑わないあの思考回路。彼らが絶滅するまでにはあと二十年くらいかかる。なにしろ数が多いから。死んでも死んでもまだ生き残っている。若い人の倍以上はいる。

選挙で彼らは勝ち続ける。なにしろ数が多いから。世代間票の格差という指標があれば、若い人は彼らの半分も票を持っていない。しかも選挙に行かないから尚更だ。コロナのワクチン接種の彼らの優先されっぷりと若い世代の後回しにされっぷりを見て、若い世代も思い知っただろう。選挙に行かないということは、多数決で手をあげないということなのだ。しかも彼らはやたらと数が多い。多数決で決めれば、ぜんぶ彼らの思う通りになる。

十七歳以下は選挙権がないのだから、七十三歳で選挙権を失うようにすればいいと思う。もしくは世代間別人口格差をもとにした票数の格差是正措置を講じるべきだ。たとえば二十代が七十代の半分しかいなければ、二十代の票を倍にするか、七十代の票を半分にすべきだ。なぜなら、若い世代がこれからの世の中を生きるのだから。ツケを払わずにそのまま死んでいける人たちに大事なことを決めさせてはならない。

 

そんなことをつらつらとツイッターに散発的に書き綴っていたら、脅しのようなダイレクトメッセージがバンバン来た。彼らは皆怒っていた。ここまで日本を経済発展させて、豊かな暮らしができるようになったのは誰のおかげだと思っているんだ、という論調が主だった。そう言われるとぐうの音も出ないし、その事実が彼らのいわゆるそういう思考を生み出してきた。

かく言うわたしも団塊世代の恩恵を受けている。父母がもろ団塊ど真ん中で、自身は団塊ジュニアというボリュームゾーンに属している。ここだけ人口曲線がポコンと飛び出している。団塊世代の手で育てられ、団塊世代のお金で食わせてもらって大きくなった。死んでも彼らに頭が上がらない。

彼らが現役バリバリの頃は日本は中国にも勝っていた。いまの若い世代には信じられないだろう。アメリカに次ぐ経済大国というフレーズが我々の子供の頃によく聞かされていた。今や三位も怪しい。インドになんかがぐんぐん追い上げているから、これからもっと下がっていく可能性が高い。なにしろ人口がどんどん減っているのだから。

 

またそんなことをツイートしてたら、今度は右の方々から脅しのダイレクトメッセージが届き始めた。住所と名前調べ上げてさらし者にするぞ、とか、お前中国人だろ、国へ帰れ、ぶっ殺すぞとか。

非常にダイレクトで分かりやすい。湧き上がってきた怒りを行動で示そうとしている。とにかく日本の悪口を言うなということだ。日本は我々が大切に育ててきた子供のようなものだから。子供の悪口を言われれば、親は怒る。当前のことだ。怒らない親の方がどうかしている。

 

もういいや、と思ってツイッターをスマホからアンインストールした。これで誰にも文句を言われない。

多数決で勝てないのだったら、どうすればいいのか。

この国のルールを決めるのに、多数決で全部が全部彼らの思惑通りになるこの現実をどうやったら変えられるのか。

そんなことを考えていても答えも出ないしどうしようもないので、ビールを飲んでオナニーをして寝た。

 

[了]

 

 

2022年5月17日公開

© 2022 天汁ちしる

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