お前とセックスしてると神社の裏で浴衣の女をおかしてるような気になる

千本松由季

小説

6,850文字

エロ本を書きたいという欲求が満たされてよかったです。

出会い系で理想の若い女を手に入れた男のフェティッシュが暴走していく。

#ネムキリスペクト八月応募作品。テーマは「懐中電灯」。

ほんとは浴衣で騎乗位をやりたかったんですけど、上手くいかなかった。また今度にします。すみません。

 

一、スポットライト

 

天井から下げられたスポットライトが、美愛(みあ)の目に刺さる。

「どうせ日本の男はみんなロリコンだから」

美愛は、男の目を睨みつけて、そして目を逸らした。

「君な、そういうのはな、レッテル貼りって言うんだぞ」

「貴方なに? 心理学の先生?」

馬鹿にされてると思った美愛は、不貞腐れてアイスコーヒーをグルグルかき回した。暗いコーヒの渦に氷がぶつかる音。電話が掛かってきて男は、ゴメンな、と謝って暫く話をしていた。携帯を持ったままブリーフケースをかき回して書類を探す。その時、男の整った横顔が見えた。タブレットを出した。その時、また横顔が見えた。

 

渋谷のカフェ。美愛はわざと人の多い所を選んだ。知らない大人の男に会うのだ。眩し過ぎるスポットライト。美愛は顔を手で覆う。男が携帯を切って、テーブルに置く音が聞こえた。

「どうした?」

美愛はライトを指差す。

「ほら、席を変わってあげる」

椅子に男の体温を感じる。きっと美愛の体温も感じてる。

「確かに日本の男にロリコンは多いかも知れないけど、全部がそうじゃないだろ」

セーラー服を着た美愛と一緒にいて、それには説得力がない。今、八月の終わりだから、セーラー服を着ていられるのもあと七ヵ月だ。

「君、ほんとの名前なんて言うの?」

「それ教えたら何くれるの?」

「俺の名前も教えてやる」

また電話が掛かってくる。なんの話か美愛には分からないが、たくさん数字が出てくる。

 

男の名前は類(るい)という。祖母がインドネシア人だという。

「美愛なんて名前つける君の御両親、きっとインテリだな」

美愛の母親は大学で音楽理論を教えている。父親は映画監督だ。父に聞いたこと。昔の大女優、ビビアン・リーの祖先にインド人がいた。だからあんなに綺麗なのだ。美愛の好きな映画『哀愁』。幸せなバレリーナだったビビアン・リー。何度も観た、最後の自殺のシーン。大きなトラックの前に身を投げる。ヘッドライトに照らし出されて。

類の完璧に整った顔にも、馬鹿にしたような口調にも、魅かれている美愛だった。出会い系に登録して、でも会ってみたいと思ったのは類が初めてだった。

「俺、もう未成年と寝るつもりないぞ」

もう、ということは前にもあって、きっとそれでマズいことになった。

「十八だし」

「十八でも、高校生と寝るつもりはないし」

夏休みなのに、わざと制服を着た。男はみんなこういうのが好きだと信じていた。

「処女じゃないし」

「関係ない」

 

二、懐中電灯

 

そう言った割には、類はカフェを出ると、美愛の背中に手を置いて、神泉の方向へ歩き始めた。

人通りが少なくなった。類は立ち止って、美愛に学生証を見せてくれ、と頼んだ。彼はそれを長い間見詰めて、引っくり返して見て、溜息をついた。やっぱり余程ヤバいことがあったのだろう。

「その服をなんとかしないとな」

類は美愛の手を引いて、ブティックに入って行く。店員が類を見て挨拶をする。そこにはメンズもあって、類も時々買いに来るのだ。

服を買ってくれると聞いて、美愛は初めて笑顔を見せた。彼女が試着している間、類の携帯が何度も鳴った。彼女は琥珀色の、身体にピッタリと張り付くワンピースを選んだ。よく似合う。類は急に大人びた美愛と一緒に歩くのが照れ臭かった。まだ成熟しきっていない身体。処女じゃないって本当なのか、と彼は怪しんだ。急に罪悪感が生まれる。

「なんで俺だったの?」

答えを言う前に、また電話が掛かってきた。

「忙しいんだったら、また今度でいいのよ」

「もう、こんな時間だから」

 

美愛は携帯を見た。五時だった。電話は長くて、「なんで俺だったの?」という問いを考える時間はたっぷりあった。類は歩いたり、立ち止まったりして、二人はなかなか先へ進まない。

出会い系で見付けた類の写真は、斜め前から撮ったもので、ぼかしてあったからよく見えない。それでも精悍さは見て取れた。

なんで彼がよかったのだろう。よく覚えてない。美愛は携帯を操作して、類のプロフィールを読んだ。「リヒテル」、そうだ、ピアニストはリヒテルが好き。そう書いてあった。リヒテルは一九一五年に生まれ、ロシアで活躍した。親日家で、ゲイで、ブルース・リーのことを世界で一番美しい男だと言っていた。美愛は聴く度にあのクレッシェンドの響きに震えた。美愛の母は、コンサートに行ったことがあるという。世の中にリヒテル好きは多いけど、あんな出会い系サイトに書くということは、そういう話のできる人を探してる。

類は電話を切った。

「リヒテル」

唐突に言うので、類はしばらく黙って美愛の顔を見た。

「ほら、なんで俺だったの? って」

「そうそう、なんで俺だったの?」

「リヒテルが好きだって」

 

三、バッテリー

 

どんなラブホテルに連れ込まれるのかと思っていたら、そこは類のマンションだった。このマンションの住人は暇を持て余した主婦が多くて、セーラー服の子といるのを見られると、大変なことになる。

この人は大丈夫だと、意識の底で美愛は警戒心を解いた。なにがあったとしても自分で選んだことだ。美愛は覚悟を決めた。

リビングにミニグランドが置いてある。美愛の家には本物のグランドピアノが二つある。近付いて音を出す。悪くない。類が次の部屋を開けて見せる。

「俺、株屋だから」

株式市場のニュースに出てくるみたいな風景だった。それぞれ違う時間を示した時計が並んで、テレビスクリーンがたくさんあって、世界中のニュースが映し出されている。

 

また電話が掛かってくる。

「Sorry, I can’t talk to you tonight. Some kind of emergency… Shut up! You go to bed!(今夜は立て込んでるから……うるさい。お前こそさっさと寝ろ!)」

類は笑いながら電話を切って、携帯を消音にした。

「もう掛かってこないから」

美愛は豪華な彼の住まいを見回した。

「貴方こそなんで私なの?」

類は美愛に近付いた。こんなに近付いたのは初めてだ。躊躇いがちに彼女の長い髪に触った。美愛の背は彼の肩くらいしかない。

「こんな若い子。普通なら接点ないし」

類は美愛の胸のボタンを外す。三つ目で、美愛は彼の手を止めた。

「ロリコン」

「ロリコンはな、もっとずっと幼いのがいいんだ」

「若くなくなったら私、捨てられるんだ」

こんな男、好きかどうか分からないのに、若くなくなったら捨てられると知ってるのに、美愛は自分から彼に抱き付いた。キスされて、手を引かれて、ベッドルームに連れて行かれた。

 

四、海の太陽

 

類がスイッチを入れると、爆発するような音がした。ライト。たくさんの。複雑に交差するスポットライト。真っ白なLEDライト。クリスタルのシャンデリア。なにかが動いている。細かい光の粒が回っている。ミラーボールだ。

巨大な水槽がある。上から太陽みたいな明るさの光が照射されている。こんなものが生きてるとは思えないほどカラフルな魚が泳いでいる。イソギンチャクの中で、ディズニーに出てきた、あの縞々の魚が遊んでいる。

高い天井の、壁面を覆う硝子のキャビネット。その中にありとあらゆる種類の懐中電灯が飾られている。博物館みたいだ。見たこともない数々のミニチュア懐中電灯。電池もたくさんある。懐中電灯と電池の膨大なコレクション。

美愛は一番大きな懐中電灯を見付けた。

「それは防水のサーチライト。海底を探索する時の」

類がキャビネットを開けてサーチライトを取り出す。

閉める時、硝子と硝子がぶつかる鋭い音がした。警告音だった。美愛は引き返せない境界線を超えた。

 

美愛がサーチライトのスイッチを押すと、強いビームが飛んで壁にぶつかった。質量のある光。美愛の身体が後ろに動いた。

「ちゃんと電池が入ってるんだ」

「そう。この全部に電池が入ってる。俺、ライトが好きなんだけど、一番好きなのは懐中電灯。それに電池も好きなんだ」

類がリモコンを押すと、寝室とさっきの世界時計のあった部屋の仕切りが開いて、世界中のニュースの、その色が走って入って来る。ガラスのキャビネットを通過して入って来る。

「懐中電灯のいいところは、触った時の冷たさなんだ。それから電池を入れた時の重さ。そして光がでた時に一番興奮する」

正気じゃない。美愛はサーチライトを撫でている類を見た。

「可笑しいだろ? 俺のフェティッシュ。寝る時も全部つけて寝るんだ。つけてないとセックスもできない」

どんな顔で言ってるのだろうと不思議に思って、美愛は類を見た。目を合わさない。真意は分からない。

美愛は水槽を覗いた。シャイで隠れてしまう魚もいるが、餌をねだって寄って来るのもいる。一匹一匹デザインが違う。神様のお使いの天使達が楽しんで、思い思いの絵を描いたみたいな。

「それは海水魚。海と同じ濃度の塩が入ってる。そのライトは太陽と同じ波長になってる」

類は巨大な水槽が乗っている台を開ける。海水が泡立ちながら下に落ちて来るのが見える。

「ここがフィルターになってて、水はここを通って、濾過されて、また水槽に戻るんだ」

 

美愛の父は映画監督で、小さい時から撮影に連れて行かれて、俳優にもスタッフにも変人はいた。美愛が最初に寝た男も、そういう中の一人だった。慣れているとは言え、これだけ金のかかった異様な道楽は初めてだ。

クーラーが効いているのに、この大きな寝室の温度は上がっていく。

大型ベッドが窓側に置いてある。窓にぴったりくっついて置いてある。

温度が上がるにつれて、類の息が荒くなる。全身がライトを吸収している。美愛は強い光が苦手だ。両親が結婚前にヨーロッパに住んでいたこともあって、今でもリビングには淡いオレンジ色の間接照明が使われている。美愛は日本の煌々とした蛍光灯照明が嫌いだ。

類は上半身に着ている物を脱いだ。薄っすらと汗をかいていた。クーラーをつけたまま無数のライトで室温を上げるのは、どう考えても尋常じゃない。彼もきっとそれは分かっている。類は美愛の反応を伺った。この若い女は、類の狩った女は、自分のことをどう見ているのか知りたかった。

 

五、天照大神

 

美愛の学校が始まっても二人の関係は続いた。制服の美愛に同じブティックで服を買って、同じライトの下で、同じ行為をする。美愛にワンピースを着せたまま、類は足を開かせて、彼女の秘められた身体の部分を懐中電灯で探る。キャビネットのコレクションから選んだ、懐中電灯の銀色の冷たさが、その重みが、電池の重みが、懐中電灯の光が、その照らす先が、類を興奮させる。

類が窓を開ける。都会の喧騒が雪崩れ込んで来る。そこは二階だ。どうして窓を開けたのか、美愛には分からなかった。でも直ぐに分った。声を出しちゃいけないんだって。声を出せなくなって、声の行き場がなくなって、苦しくて、でも身体はもっと感じてる。

 

「若い子って身体が硬いんだ。それがいいんだ」

終わったあと、類は美愛を強く抱いた。

 

美愛は大人になったら捨てられるんだと悲観した。それから食べることができなくなった。身体の力が弱くなっていくにつれ、頭は逆に冴え渡った。いつも類のことを考えていた。狂気じみたあの部屋のライトの、偽物の太陽の光を浴びた珊瑚礁の、水槽のフィルターの水音の、懐中電灯に晒された彼女の女の部分の。

二人の身体が馴染んでいくにつれ、二人のリズムが溶け合うにつれ、美愛は強烈なオーガズムを得るようになった。昇り詰めると身体中が震えて、特にお腹が痙攣して、何度もいかされるともっとお腹が痛くなって、もっと震えて、美愛は類に、お願いだからもうやめて、と言って泣いた。

 

「君とセックスしてると神社の裏で浴衣の女をおかしてるような気になる」

類は若い身体の中に深く自分のものを沈めながら言った。彼の動きが速くなっていく。ベッドの上には五つの懐中電灯がある。そこから光が出て、美愛の身体を照らしている。

 

美愛の体重が減ったと最初に気付いたのは、いつも裸の彼女を抱いている類だった。問われて、美愛は正直に話した。私は類に捨てられる。類は少し考えて、でもこんなに俺達いいだろ、離れられないだろ、そう強く言い切って、それでも美愛は食べないことからくる、快感のようなものに浸るのを止められなかった。

音大に推薦が決まって、美愛はもっと類と時間を過ごすようになった。少しずつ食べられるようになった。それでも美愛は大人になって捨てられる、という幻想を払いきれなかった。類の懐中電灯との遊びにはまっていった。

 

六、懐中電灯の光の出る硝子部分

 

夏の終わりの祭りの日、美愛は母に浴衣を着せてもらった。大輪の百合が描かれていた。満開の花の深くに花芯が見える。類と一緒に祭りに行って、カラフルに音を立てる祭りを通り過ぎて、二人は類の車で郊外に行った。もう使われない朽ち果てそうな神社だった。だが、その威厳は保っていた。よく調べて選んだその神社。周りには、細い道に沿って弱い街灯がついているだけだった。神社の裏は小高い山に繋がっていて、そこは完全な暗闇だった。

類は三つの懐中電灯を持って、痛いほど美愛の手を握って、神社の裏に連れて行った。自分で帯が結べないから解かないで、と美愛が言った。類は彼女をうつ伏せに寝かせた。地面には背の低い雑草が一面に生えていた。二つの懐中電灯を地面に置いた。石を組んで、その一つはこれから入れる、女の秘部が見えるように置いた。もう一つは美愛の顔が見えるように置いた。尻を持ち上げて、浴衣の裾をまくった。帯の下ぎりぎりのところまでまくった。下着を剥ぎ取った。三つ目の懐中電灯を握って、濡れた部分をまさぐり、そこにいきなり指を沈めた。美愛が甘い声を上げる。

 

類は懐中電灯で美愛の若い尻を照らした。掴んでみたらそれには成熟する前の女の硬さがあった。彼女の類を待ち焦がれて濡れる敏感な場所を照らした。懐中電灯の熱で美愛が、ああ、という声を出す。彼のものは既に待ち切れなくなっていた。類は懐中電灯で、自分のものが、外に流れるほど濡れた割れ目に少しずつ入って行く様を見詰めた。そして持っていた三つ目の懐中電灯を地面に置いた。

美愛は、いつもよりとても大きくて、いつもよりとても硬いものが入って来るのを感じた。神社の裏の静寂に、二人の結合する音が響いた。濡れたその粘膜が男性器に掻き回される音と、二人の身体がぶつかり合う音。

美愛は声を出した。声は次第に大きくなった。類は自分のものを一度抜いて、彼女の尻を更に高く上げた。再び彼女の中に分け入った時、美愛が悲鳴のような喘ぎ声を出した。類は自分の体重をかけるように、美愛の中で乱暴に動き続けた。動く度に浴衣の帯の蝶結びが激しく揺れた。

類は地面に落ちている、つけっぱなしの懐中電灯を見た。その途端、彼はコンドームの中に放射した。美愛は浴衣の裾を下ろして、仰向けに寝転がると、まだ息を弾ませている。

 

類は新しいコンドームをつけると、また美愛の尻を自分に向かせた。浴衣の裾を極限まで捲り上げて、さっきと同じ姿勢にする。地面に転がっている三つの懐中電灯。一つは神社に向いている。二つ目は美愛の側にある。彼女の細い身体が逆光になって闇に浮かび上がる。類は美愛の尻を愛おしく撫で回す。三つ目は石に置いて、結合部に当たるようにした。

三つの懐中電灯の光が類の脳髄の快感中枢に入り込む。目から入った光は類の性器の先端を刺激する。美愛が身体中を痙攣させる。類は自分を止められない。美愛のオーガズムが続く。類は男の性器を女にめり込むほど強く叩きつける。

もうだめ、って美愛が懇願する。俺、もう少しでいくから、と類が答える。三つの懐中電灯から放射される光を見て、彼は絶頂に達する。

 

二人は懐中電灯を持って、おそるおそる神社内に入ってみる。荒れ果てていても、畳の縁飾りには朽ちた豪華な金色が見える。埃だらけの畳に座って、二人は抱き合って、お互いの膝で相手の局部を刺激する。美愛は類のキスが好きだった。乾いたキスを散々して、胸が高まって、それから深く美愛の口の中に入り込んで、性欲を掻き立てる。

美愛は、私はもう駄目、と囁く。類は再び美愛の浴衣の裾を持ち上げて、今度は彼女を仰向けに寝かせた。また硬くなってきた自分のものを懐中電灯で照らしながら美愛の太ももをなぞった。

神社の裏で浴衣の女をおかす、という夢が実現した。また美愛をうつ伏せにして、白い尻を懐中電灯で照らした。尻に自分の先端を打ち付けて、自分の手でしごいて、また尻に戻って、三回目の絶頂を迎えた類は、自分の液を懐中電灯の光の出る硝子部分に向かって出した。

 

 

 

(了)

2021年8月30日公開

© 2021 千本松由季

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