後編 どこまで純真になったら君みたいになれるの?

千本松由季

小説

7,757文字

女性画家、翔はインスピレーションを得るため、若い男漁りに精を出す。超純真な高校生、空に告白され、遂に年貢の納め時となる。
#ネムキリスペクト 応募作品。テーマは「招待状」。
初めて本格的な三人称で書いた作品です。軽いコメディですのでサクサク読めます。

空の目の縁に、赤い物が横切る。赤いドレスを着た人。あの服はカットが大胆過ぎて、うちの店で全然売れなくて、最後に凄く安くなったんだよな、って空が思い出していると、それは翔だった。隠れなくったっていいんだけど、空はその背の高いハーフの人の陰に隠れた。

翔ってどんなにドレスアップしても、……品が無い訳じゃないんだけど、どっかやさぐれた部分があるんだよな、空はそう考えた。でもそれって、どういう意味の言葉かいまいちなんだ。空は携帯を出した。やさぐれる、とは……「投げやりになる」「不貞腐れる」。……そうそう、確かにそう。それが翔。空は携帯をしまった。

ハーフの人はまだ一緒にいる。

「あの、お名前聞いていいですか?」

「海。Kai。うみって書いて」

「僕は空。おそらのそら」

空と海なんだ。僕達。

「君はなにしてるの?」

「僕、高校の三年です。夏休みだからバイト中。ファッションの勉強したいから、ブティックで働いてるんです。そうだ、英語の勉強もした方がいいですよね?」

「ま、君まだ若いから」

空と海は、まだその絵の前にいた。空に似た、その絵。空の高校は校則が厳しくて、彼の巻き毛がいつも問題になる。そうすると、たった一人いる幼稚園から一緒の友達が証言してくれる。空の母も巻き毛で、巻き毛が家に二人いると、絡まって、お風呂の排水溝が詰まって大変だって文句言ってるけど、生んだのあっちだし。

 

 

空の手を後ろから、冷房で少し冷たくなった手で握る人がいる。空は見なくてもそれが誰だか分かる。暫く握られて、何秒? 数秒。涙が出る直前に、その人は手を離してくれた。

海が躊躇いながら聞く。

「知ってるの?」

「職場の人」

翔がいつものネックレスをしてる。遠くから見て、丁度光が反射して。こんな時でもしてるんだ。こんな時だからしてるのかな? いつか空が聞いた時、翔はそれを見せてくれて、それはロケットで、開くようになってて、開けて見せてくれたら、それは猫の小さな写真で、純白の猫で、一緒に育ったの、って彼女は微笑んだ。

海はその後もずっと一緒にいてくれて、翔の短いスピーチがあったり、飲み物や簡単なオードブルがあったり、二階に行ったら母がいて、そろそろ帰るわよ、って。

 

 

六 どこまで純真になったら君みたいになれるの?

 

 

さっきの空という若者は行ってしまった。海はアートディーラーとして、翔の絵をもう一度最初から見た。ニューヨークでも売れるだろう。買うのはゲイだな。だったら持ち込むギャラリーも決まって来る。キャバ嬢に、っていうか、またほんとの名前忘れたけど、許可を貰って、早速ニューヨークのそのギャラリーに画像をいくつか送ってみた。泣いているペニスのアップも送った。直ぐ返事が来た。感触は良かった。もしかしたら商売になるかも知れない。

灯りが半分消された。人々が硝子のドアを擦り抜けて、その人それぞれの日常に帰って行く。キャバ嬢が鍵をかける。海だけまだそこにいる。オープンする前からいて、クローズしてもまだいる。海は苦笑して、入り口に置いてある椅子に座っている翔の方を見た。疲れたのかな、流石に。機嫌が悪そう。やっぱりこいつはやさぐれている。

海はあのあとも、ずっと内心キャバ嬢と呼んでいて、ほんとの名前をほんとに忘れてしまったから、ポケットの中の名刺をチラっと見る。千景、それがキャバ嬢のほんとの名前。海は千景を呼んだ。

「あ、パーカーさん」

「クーパーです。カイ・クーパー」

海は千景と商談した。お金のことを色々と。ギャラリーのマージンが高くて、直ぐには動けない。こういう時は、アーティストを落とすこと。それが一番早い。

 

 

千景がいなくなった隙に、海は翔に声を掛ける。ストレートに。ここは一発勝負!

「お疲れ様」

翔は瞬きを二回してそれに答える。そして履いていたハイヒールを脱いで蹴飛ばす。またやさぐれている。海がそれを床に綺麗に並べてやる。赤の反対色の青緑の。パーティーが終わったあとで、翔の口から初めて出た言葉。

「雨……」

大粒の雨が、ガラスのドアを叩いて落下する。翔はそれを目で追っている。アーティストの目で、なにか他の人達には見えないものを見ている。海は翔の画家の部分をまだ知らなかったことに気付いた。

「君は今、何をしたい?」

「……眠りたい。明日も仕事で、夜またここに来て」

「君の職場はどこ?」

「この近く」

「住んでる所は?」

「遠い」

「早くバイト辞めさせないとな」

翔は皮肉な笑い方をする。君の絵をニューヨークに送る。俺が君をシンデレラにしてあげる。翔はもっと皮肉を込めて笑う。

「当てにしないで待ってる!」

「この近くで寝るとこ探そう」

海はそう言って、雨に出て行った。激しいにわか雨でタクシーは捕まらなくて、びしょ濡れになってる海を翔は見ていた。

 

 

タクシーが捕まって、翔は小さなキャリーケースを持って、靴を手に持って、土砂降りの中を裸足で走った。これがいつかガラスの靴になるのかな? 海は日本のラブホテルはしゃらくさくて嫌いだ。まあ、いきなりそんなとこに連れ込むつもりもないが。タクシーの運転手に聞いて、ビジネスホテルを教えてもらった。直ぐ近くだった。海のチップをあげてしまう癖がなかなか抜けない。御釣りはいらない、と言うと、若い運転手は喜こびながら走り去った。

翔は半分目を閉じたまま、ドレスを脱いで、その他も全部脱いで、全部床に投げ捨てて、海なんてまるでいないみたいに、ベッドに入ると寝てしまった。

 

 

明るくなって、シャワーの音が聞こえる。翔はまた真っ裸のままで、海の前に現れる。彼はまだベッドの中にいる。この女はやっぱりどうかしている。女らしいカーブがあんまりない。だけど悪くはない。なんていうか、難しいんだけど、性的な対象としてのエロい存在感がある。

「君、仕事、何時?」

「ここから歩いて直ぐだから」

女はベッドに腰掛ける。海に背を向けて。乾かし切らない髪が、背中を濡らす。尻の割れ目まで丸見えだ。

「君なあ、俺のこと男だと思ってないだろ?」

「年下としかやらないし」

「そういうの、クーガーって言うんだぞ」

アメリカのスラングで、年下をハントする女性のこと。

「クーガーっていうのはな、バーのカウンターの椅子にじっと座って見張ってて、若い男が来たらアタックするんだ」

「知ってる。誰かに聞いた」

「そういうけど俺、ミックスだから老けて見えるぞ」

「いくつ?」

「二十五」

「月は?」

「五月」

「日は?」

「三日」

翔は裸で振り向いて、ベッドに横になった。海には彼女の全部が見える。

「俺、年下?」

「二日違いでね」

 

 

海はベッドから出て、掛けておいたジャケットのポケットに、紳士の嗜みを探した。招待状が出て来た。雨で。絵も。サインも。切手も。宛名も。色が混じって。もうほとんど乾いてるからそんな訳ないんだけど、海にはそれがアニメーションになって、ゆっくり色達が混じり合って流れて行くのが見えた。幾筋にもなって。

海は女も色々知ってるけど、翔みたいなのは知らない。彼の身体を見て、執拗に触って、男のカーブに沿って舐めて、あの危ない先端の所も触った。やっぱり違うわね、日本人と。色が違う。乳首ピンクっぽいし。海は笑った。今時ハーフなんて珍しくないけどな。

「でもなあ、これじゃあ……。君が俺を抱いてるんだ」

「クーガーだから」

「セックスはいつも自分の絵のため、それだけなんだろ?」

翔はキスで海を黙らせた。キャリーバッグを開けてスケッチブックを出して、ベッドの上に胡坐をかくと、海の勃起した物を描いた。

「もうちょっと上の方に持ち上げてみて……」

注文もうるさい。猫でもあやすような甘い声で。

「あーあ、動いちゃだめってば」

「これは、酷だろう。いくらなんでも……」

「なんで?」

「裸の女が側にいて……」

海を物質としか見てない。海の先端から涙のような雫が垂れた。翔は性器に接近して、それを描いた。描いたら彼女はそれを舐めて味わった。猫みたいに。舌を左右に動かして。

海はいつか自分も彼女の絵のコレクションの一つになるのかな、と考えた。キャンバスに取り込まれる。そんなホラー映画を何処かで観た。

「写真撮るから」

命令口調で。断ることは許されない。彼女は憑かれたようにシャッターを切った。

「あ、そろそろ行かないと。ホテルのお金出してくれてありがとう」

「それって、払えって言ってるんだろう?」

「だから、どうもありがとう」

翔は慌てて服を着た。

「俺をこのままここに置いて行くの?」

「だって仕事だもん」

海は勃起したままの自分の物に触れた。

「酷い女だな! いくらアーティストだからって……どこまで純真になったら君みたいになれるの?」

 

 

七 純白の猫

 

 

お父さんが珍しく早く帰って来て、ビールを飲みながら晩御飯を食べている。空のお父さんは、母と違って工学系で、電気自動車の開発をしている。電気自動車って聞いた時、空は冗談だと思ったけど、もうそれが実現しようとしてる。

SF映画みたいだ。SFって、いつもほんとに実現するものなのかな? お母さんの言ってた、あの映画の、何だっけ? 人類の希望? そういうのってほんとになるのかな?

「お父さん、初恋ってどうしても実らないものなの?」

空のいきなりの質問に、彼の手酌が宙で止まった。

「そんなことばっかりじゃないだろ?」

父はそれ言ったまま、食事に戻り、空はその続きを勝手に考えた。そんなことばっかりじゃないんだ。当たり前だよな……。世の中には色んな人がいる。でも翔みたいなやさぐれた大人の女とどうすれば付き合えるのかな?

「その人ね、年上でやさぐれてんの」

父は笑った。

「やさぐれてんだ」

「アーティストだから。いつも死んだ猫の写真が入ったロケットをしてて」

「ふーん。じゃあ空がその猫になって、そのロケットがいらなくなるまで」

それって、超難しそう。

 

 

その日はバイトのお休みだったので、近所の同級生、田端の家に行った。猫を飼っているというので、イメージトレーニング。それは茶髪でトラで、どう見ても可愛いとは言えない。田端がそれを抱き上げて、空はそいつと握手をした。冷たい廊下でも歩いたのか、その肉球が少し冷たかった。翔の猫は真っ白で品がいい。田端は白い猫は大抵、目がとても綺麗だよ、と言った。さすが猫に詳しいみたいだった。目が綺麗。ふーん、そうか。イメージトレーニング。目の綺麗な白い猫。

翔は毎日仕事の帰りにギャラリーに行ってるようだった。空はできるだけ彼女の仕事を手伝ってあげた。

そのお休みの日、空は翔の仕事が終わるくらいの時間に、ギャラリーに行った。翔はまた派手過ぎて誰も買わなかったから、凄く安くなったワンピースを着ていた。大きな赤い花の絵が入った。なんだか着物みたいな形。横の所で蝶結びになってる。後ろ手を組んで自分の絵を観ている。空が入って来たのに気付いて、とても嬉しそうで、意外なほど嬉しそうだったから、空は驚いた。

ギャラリーの奥の方で、こないだも見た、空は行ったことがないけど、キャバクラにいるみたいな感じの人と、あの時会った、ハーフの海さんという人が一緒にいた。空は小声で聞いた。

「翔の言ってた元カレってあの海っていう人?」

翔は全然それには答えなかった。

「ほら、こうやってお客さんの振りしてると、人が入って来やすいからさ」

空も一緒になって、後ろ手を組んで順番に絵を観る。昼間観ると余計そのいかがわしさが増す。反対周りに絵を観てた翔と、丁度ぶつかった。

「これから週刊誌の取材が一本あるけど、そしたら食事に行こう」

そう言ってくれた。翔とはもう終ってるの知ってるのに、空はドキドキだった。「友達でいましょうね」とは言ったんだけど。

 

 

スキャンダラスな画家がいると聞いて、その週刊誌はやって来たのだった。取材するのは石川という記者で、その大手週刊誌でもう五年も働いているベテランだ。画家はまだ若いのに、随分やさぐれた感じの美人だ。一通り絵を観て回った。一緒に連れて来たカメラマンのシャッター音がいつもより激しく感じられる。これは絵になる、石川は経験上そう思った。携帯を録音モードにして画家に近付く。

「君は彼氏さんですか?」

石川は、いきなり側にいた空に携帯を向ける。空はさっきから、人相のよろしくない二人から、翔の肩に手を置いて、守るように立っていた。空は彼等に強い違和感を感じた。なんて言っていいのか分からないけど、その石川という男には、動物のメスを追うオスみたいな怪しい感じがある。

空が何かいう前に、翔が答える。

「そうです。若い男性が好みなので」

翔がすましてそう答えた。石川はまたなぜか空に質問する。

「君はいくつ?」

また空が何か言う前に翔が答える。

「十八です。ずっと家庭教師をしてて、十八になったので手を出しました」

「何を教えてたんですか?」

「色々です」

空は、翔がすらすら嘘を言えるのにびっくりした。

経験豊富な石川は、翔の言ってることが皆、嘘だと知っていた。女なんて信用するものか。自分がやっと手に入れた若い妻は、彼の金を使ってホスト遊びをしている。

空はずっとまだ彼女の側を離れない。彼は気が付かないうちに写真を撮られたような気がした。僕の写真も週刊誌に出ちゃうのかな? 彼氏とか言って。でも空は翔の側を離れたくなかった。

 

 

キャバ嬢が来て挨拶され、翔のプロフィールを石川に渡す。石川はなんとなくお絞りが出て来るんじゃないかと錯覚して、手を差し伸べようとした。見てくれのいいハーフみたいな男がいる。横から見る。流石にいい盛り上がった尻をしている。ガタイもいい。あいつはただものじゃない、と彼の第六感が言っているが、今夜の取材はこの嘘つき女だ。どうして年下が好きなのか聞いてみた。

「理由なんて単純ですよ。貴方だって若い女が好きでしょう? フレッシュで元気な子種。子孫繁栄のためですわ」

そう言ってケラケラ笑う。石川は妻のことを思い出して不快になる。

「この絵はどう描かれるのですか? モデルさんがいらっしゃるのですか?」

「はい。脱がせて自分も脱いであそこをたたせてスケッチして写真も撮ります」

「へー、そのあとは?」

「そこまですると、時間がなくなっちゃうから」

「置き去りですか? それは可哀そうだな」

なぜかそこでハーフみたいな男が皆を振り返る。

 

 

長い取材が終わった。空は翔と歩いていた。青山通りの街灯が一斉に灯った。空はこれを偶然、翔と一緒に見たことがロマンティックな出来事と思わないように努力した。

翔も街灯を見た筈なのに黙っている。空達は少し歩き回って、結局コンビニで、お弁当を買ってギャラリーで食べることにした。空はトンカツ弁当で、翔はなんだかお洒落な野菜沢山のパスタを買っていた。

「週刊誌にあんな嘘ばっか言って」

「あいつらどうせろくな事書かないんだから、なに言ったって同じよ。欲しがることを言ってやるの。適当に。宣伝になればそれでいい」

「翔ってあんなに嘘が上手いんだ……。あれ、だったらもしかして……」

翔はなんとなく嫌な予感がして、一生懸命食べている振りをした。

「だったらもしかして……」

空は話題を逸らさない。若いカップルが入って来た。彼女が彼のペニスはこれに似てるとか、あれにそっくりとか、騒いで楽しんでいる。二人は笑いながら出て行った。翔は嬉しかった。自分の絵をあんな風に楽しんでくれる人がいて。

空が同じことを繰り返した。

「だったらもしかして……あの時の話も嘘だったんですか?」

その「だったらもしかして」は三回目の「だったらもしかして」だった。翔は空の言いたいことはよく分かってて、もうこうなったら逃げられないのも分かってた。

「翔が、あの時、元カレが帰って来たとかなんとか言ってたの……」

「ゴメン」

翔は、自分が窮地に立たされたことに気付いていた割には、あの時隣に主婦のグループがいて、変な話をしていたのを思い出した。

「男の人ってさ、何日かに一回出さないといけないらしいじゃない? 空は何処でどうやって出すの?」

「僕、そういう質問には答えられません。あそこにいる人に聞いてください」

空は携帯をいじってる海を指差した。

 

 

翔は最後までパスタを食べて、それから海の所へ行って、同じ質問をした。

「なんでそんなこと知りたいの?」

「こないだ主婦の人達がさ、自分とはさっぱりなのに、夫が何処でどうやって出しているのか考えると腹が立ってくるって」

「そういうことは君の専門だろ?」

翔は誰も教えてくれないのにがっかりした。どんな奴なら答えてくれるか考えたら、さっきの石川っていう記者がいいと気が付いた。

「さっきの週刊誌に聞いてみる」

「なんて?」

「さっき質問するの忘れたんですけど、最近よく考えてることがあって、男の人って何日かに一回か出さないと駄目らしいですが、貴方は、いつ、どんな所で、どうやって出すんですか?」

翔はほんとに石川にテキストを送っている。海が覗いている。

「変な事聞いたら、週刊誌に書かれるぞ」

「いいわよ。答えが分かるなら」

 

 

空の頬に、一筋の涙が。翔は、これは非常にまずいと、戸惑う。

「僕、あの後、一晩真剣に泣いて、目が凄く腫れて、アイスパッド使って、そしたらお母さんが映画でも観ろって言ってくれて、それ観てまあちょっと良くなったけど、でもその後もその元カレのことを考えたら、苦しくて……それ、皆、嘘だったんですね?」

「ゴメン」

「僕ね、あの時は潔く引き下がりましたけど、今回はそういう訳にはいかないです」

気が付くと、海が近くで聞いている。

「何があったの?」

翔が俯き加減で、海に説明を始める。

「だからさ、この子が私のこと好きだって言うからさ、元カレが帰って来たからって嘘ついて……」

「君、よくそんな嘘つけるな!」

海は空の味方みたいだった。空はさっきよりもっと泣いている。

「僕、翔のこと、もう絶対諦めないです!」

海が、泣いてる空の顔を、哀れに思いながら覗き込む。空の巻き毛を大きな手で撫でてくれて、髪がクシャクシャになる。

「でもさ、君さ、こんなやさぐれた女のどこがいいの?」

翔はハーフ顔の海が、やさぐれた、と言ったので、ちょっと笑う。空は、ここって笑う場面じゃないよなって、思って、涙越しに翔を睨む。

「翔は綺麗だし、インテリだし、アーティストで素敵です。確かに若い男に手癖の悪いとこは噂で知ってましたけど……」

翔は遂に、年貢の納め時かな、って覚悟を決める。

「分かった。降参した……。君とちゃんと向き合うから」

空は号泣状態になった。キャバクラの人が冷たいお絞りをくれた。海は、ほんとにお絞りあったんだな、と驚いた。翔はお絞りを取って、空の涙を拭いてあげた。でも涙はとめどなく流れた。翔と、キャバクラの人と、海と、三人一緒に叫んだ。

「どこまで純真になったら君みたいになれるの?」

 

 

 

 

(了)

2021年6月28日公開

© 2021 千本松由季

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