UFOを操縦するカナリアボーイソプラノ 2/5

千本松由季

小説

7,744文字

カナリアだけに感染する疫病。ワクチンが足りない! 幻のソプラノ歌手、加南は不安障害を抱えながら寄付金を集めるためにコンサートツアーに出掛ける。彼女の幻覚に現れる色とりどりのカナリア。ワクチンで助かった雛達がUFOを操縦してボーイソプラノで歌いまくる。

 くしゃみを一つしたら、女性の警官が二階に連れていってくれて、変なガウンみたいなのを着せてくれた。病院の服みたい。狂人っぽい。狂人だけど。

 下に戻ったら、井川さんが私のことを調べている。

「君は歌手なんだね。クラシックの。渋谷のスクランブルの真ん中で歌って補導されそうになったって」

あの時はまだ未成年だった。セザール・フランクの『天使の糧』を歌いたくなった。渋谷で、人が大勢いて、普段なら人前では歌えないのに。それは教会のミサの歌。曇り空が偽物のキャンバスで、上のところが切り裂かれて、本物の青空がでて太陽が眩しくて、スポットライトみたいに私に降り注いで、自然に歌がでた。スクランブルを渡る人が何人も私にぶつかった。

 信号が赤になっても歌は終わらなくて、交番からお巡りさんが何人も走りでて、携帯で録画してる人もいて、ネットであれは誰? って大騒ぎになった。その時、今のエージェントがついた。長い間ファンに追いかけ回された。大人になって、もっと不安感が強くなって、もう表にはでてないし、熱心なクラシックファンにメールをもらうくらいに落ち着いた。「幻のソプラノ」っていわれてる。

「さっきの紙に書いてあるの、ちゃんと最初から歌ってくれない?」

初めて井川さんの顔をちゃんと見た。私が爪でつけた傷も。折角のいい男。彼の心が読める。この人の心は読みやすい。悲しみが見える。なにかは分からないけど、レクイエムを歌ってあげた。それからセザール・フランクの『天使の糧』も歌ってあげた。悲しみを癒す天使の歌だから。至福の歌。さっきあんなに吠えたのに、声帯は無事だった。二階の人達も降りてきて聴いてくれた。

 誰かがいった。今の歌、カナリアみたいだって。カナリアが囀ってるみたいだって。そしてまた誰かがいった。カナリアだったら、山崎さんのところにいっぱいいるよな。井川さんがいった。

「うちの管轄にカナリアのブリーダーさんがいるんだ」

「父がカナリア好きで、だから私の名前も加南で。でも本物は飼ったことない」

父はカナリアをコンピューターで画像を観る。何時間も、何時間も、何時間も。狂ったように叫ぶ。ソプラノの小鳥。それが彼のアートで。彼のインスピレーションで。

「すぐそこだよ。君のうちの人まだこないだろ? 見にいく?」

井川さんがまた私をパトカーに乗せる。

「ほんとにいいんですか?」

「パトロールの時間だから。そこらにまた水死したい美女がいないかなって」

私は死にたかったんじゃない。お父さんを困らせたかったんじゃない。車を取り上げられて、私は好きなところへいけなくなって。回ってる銀河の下や、天使が飛ぶ草原の真ん中や。私が大声で歌って、狂って叫びたい時。

 

 古風な日本家屋。パトカーを降りて庭に回る。カナリアの声が聴こえる! ブリーダーの山崎さんは三十くらいの人で、思ったより若くて、それにしては渋みのある人。高い生垣があって、小学生くらいの男の子が、木の下に小さな十字架を刺している。よく見ると十字架はたくさんある。数えきれないほど。

 映画で観た。フランス映画。動物に墓を作って。『禁じられた遊び』。戦争で、犬が殺されて、お墓に入れて、でも独りじゃ寂しいだろうって、動物の死骸を集めて、たくさん十字架を刺す。

 私が男の子に話しかけると、恥ずかしそうに逃げていってしまう。

「せっかく見にきてくれたのに」

山崎さんがいった。

「カナリアの悪い病気が流行ってて。新しい子を入れた時、きっと入ってきて。大分、亡くしました」

治療法が分からなくて、広がるのが速い。見ていることしかできない。

「ワクチンができたそうなんです。外国から入ってきたって。高価だから手に入らない」

カナリアはあんまり歌ってなくて、くちばしを背中に入れて、うつらうつらしているのも多くて。

「親戚や友人の家で預ってもらって、感染を防ごうとしているのですが」

私はもう一度、十字架を見た。たくさんの。細い木でできてて、重なるところを紐で縛ってある。

「うちでやってるのはローラーカナリアで、鳴き声が最も美しいと呼ばれる」

確かに姿は地味で、茶色や、グリーンが混ざったような色。

 病気の小鳥が鳴きだして、父が観てるチャンピョンみたいな迫力のある鳴き方で、ソプラノで。

「この子も感染して、症状も重くて。今のは貴女のために歌ったんですよ。歓迎して」

私のために力を振り絞って歌ってくれた。涙がこぼれた。『レクイエム』を口ずさんだ。

 

 うちの運転手の吉野さんがきてくれて、私は彼とメルセデスに乗って、会社の若い人は知らない新人で、私のミニクーパーを運転してくれた。車の中で考えた。あんな十字架なんて見なければよかった。病気の小鳥なんて見なければよかった。あんな草原なんていかなければよかった。窓を開けてセントポーリアをだめにしなければよかった。

 死んだカナリアが歌っている。レクイエム。死んだもの達を慰め、祝福する、教会の音楽。その大教会にはステンドグラスがあって、色が重なり合って、ほんとの色より色がたくさんある。

 私は車の後部に座っていて、あんまり叫び過ぎて、警察で歌った時はそうでもなかったけど、今になって喉が痛い。私のドレスはまだ濡れてて、私はあの変な病院服みたいのを着てて、濡れたポケットからレクイエムの歌詞を書いた紙をした。

 フランス語の発音は、フランス人の先生に教わった。何度も直されて。あんなに短い歌なのに。ちゃんと歌えるようになるまで、三ヵ月かかった。うちまで二時間あるから、またそれを歌った。

「お嬢さん、その歌で人類も救えますよ」

 今、なにかをいわれた。なにか特別なことを。頭が混乱した。そういう時はあんまり考えちゃいけないって。運転手の吉野さんは、私が小さい時からうちにいる。

 声がちゃんとでるかなって思って、もっと色んな曲を歌った。モーツァルトの『ハレルヤ』を歌った。それからヘンデルの『ハレルヤ』を歌った。

 四つのタイヤのホイールの中心のところからなにかが聴こえる。それは四匹のカナリアのボーイソプラノだった。ちゃんと教会で着るような、白いガウンみたいなのを着ている。一緒に歌って、伴奏もしてくれる。時々間違えちゃう子もいて可愛い。それはタイヤからで、車の下から入ってきて、車中に響き渡った。四匹が熱心に歌ってくれるから、私はとうとう、うちに着くまで歌っていた。

 吉野さんは無口で、本当はヤクザだっていう噂もあって、なんだか知らないけど理由があって、うちにいる。

「お嬢さん、ちゃんと歌ったらいいじゃないですか?」

でもエージェントがCDとか動画とか出してるし、私にお金が入ってくるように考えてくれる。

「生で聴くとこんなに違うんだなって」

 いえに着いて、どこか外にいる父から吉野さんに連絡があって、二人はしばらく私の話をして、吉野さんはまた車に乗って、どこかへいってしまった。

 

 次の日、私はカナリアが見たくて、デパートのペットショップにいった。それだけのために外出したのに、あんまりドレスアップしてて変だった。電車の中吊り広告に、写真週刊誌に、よく知られた女優とあんまりはっきり写ってない男性が手を繋いでいる写真が載っている。レストランみたいなところで。パティオみたいなところで。「宝石商の御曹司」という言葉がある。そのはっきり写ってない写真にはタキシードを着た男が、父がよくやるように、ボウタイを崩して、肩にかけて、一番上のシャツのボタンを外している。

 心臓が速くなる。脳の血が引いていく。頭が冷たい。呼吸が苦しい。その場に座り込みたい。電車は混んでて座る席がない。いく駅まで待てなくて、次の駅で人ごみに押されながら降りて、週刊誌を買った。宝石商の名前まで載っている。やっぱり父だった。「女優は以前から四十間際で男性との噂がないことを取り沙汰されていた」

 頭が混乱した。そういう時は考え過ぎないように。子供の時からドクターにいわれ続けたから、それは自然にできる。でもこの方法だと、なにかを探していて、なにを探していたのか忘れてしまって、そのうちなにかを探していたことまで忘れてしまう。

 でも、だから、記事のことは忘れようとして、一つ不自然なことに気が付いた。都心の、それも人目に付くパティオで会っていたのはなぜだろう? 昔から客には芸能人が多かった。父の顧客だから、一緒にいたのかも知れないと思った。……でも手を握っている。

 考えてはいけない。考えずに、最後まで読んで、考えずに、写真も全部観て、駅のベンチの上に置き去りにした。

 結局その駅で降りて、昔よくきた表参道を歩いた。ショウウィンドウを見て歩く。私の後ろに同じ若い男がいつも映る。昔はよくそういうことが起こった。でも私ももういい年なのに。

「どこかで会ってませんか?」

男は後ろから声をかけてきた。モデルスカウトにしては悪くないアプローチ。こいつと話したら、父のことは考えないだろう。いつもなら走って逃げるのに。この高いヒールで走る勇気はなかった。こういうことは私が十四才とかそのくらいが一番多くて、でかける時は、うちのお手伝いさんが一緒にきてくれた。

 もう大人だし、こういう連中も軽くあしらえる自信もあった。

「そんなことないと思いますけど」

私は笑顔で答えた。男は単刀直入にきた。

「貴女、どこかのエージェンシーと契約なさってますか?」

私はクラシックの音楽家のプロモートをしている、私のエージェントの名前をいった。「そんな名前聞いたことないけど。小さいとこ? 新しいとこ?」

彼は携帯で検索を始めた。話をストップすると、また父のことを考えてしまう。女優の名前は、若林春奈【はるな】という。好きな女優じゃない。純真ぶって。

「君、歌手なんだ、クラシックの。凄いな!」

こいつとしっかり話をしよう。じゃないと泣いてしまう。こんなところで。相手をよく見た。流行の、カジュアルな服装。お洒落なメガネ。ファッション業界にお勤めみたいな感じ。

「この写真、よく撮れてる。誰が撮ったの?」

私のプロフィールの写真。私は写真家の名前をいった。

「その人だったら、何度も一緒に仕事してる」

そんなこと信じられない。一流の写真家だから。そいつは名刺をくれた。聞いたことない。小さいとこ? 新しいとこ?

「小さいとこ? 新しいとこ?」

「参ったな……。うちは、小さいとこで、新しいとこ」

私は少し笑って、笑ったらほんの少し気分が軽くなった。

「話、聞いてもいいわよ」

一緒にいてくれると考えなくて済む。すぐその角に、昔よくいったカフェがある。二人で入る。入ったら途端に父の彼女を握った手を思いした。私だけのものの。ほずの。メニューを見る。ずっと見る。目にも頭にも入ってこない。

 ウエイターがきて、男がアイスコーヒーを二つ注文する。こいつ馬鹿じゃないな、私が混乱してるの分かってる。

 電話が鳴る。父かと思って取ったら、井川です、と電話がいう。緊張気味に。井川って聞いたことある。あの時の警察官です、という。どうしてるかと思って……。どうしてもこうしてもない。父は私にどうして欲しいんだろう? 涙が下瞼に溜まって、もういき場がなくて、こぼれて頬を伝う。

 男はきちんとアイロンのかかったハンカチを渡す。そのハンカチを見て、男を見たら、清潔感のある、チャラいけど、いい男。

「なんかあったんでしょう? 別にいわなくてもいいけど、あの週刊誌でしょう?」

駅に置き去りにした週刊誌。この人あんなとこから私のこと見てたんだ。

「あんなとこから見てたの?」

驚いたことに男は、ブリーフケースから、あの週刊誌を取りした。

「できることならなんでもするし。あの時の、深刻に人生を考えてるような表情が凄くよかったんです」

 電話してたのを思いす。泣いてるうちに忘れてた。井川さんが、もしよかったらお会いしたいんですけど、という。私なんかとどうして会いたいの? 心配だから。今は誰にでも会いたい。誰かといると考えなくて済む。父に会いたくない。今晩はうちに帰らないことにする。この人、警察官だから、きっと私のこと守ってくれる。

「渋谷の路上で歌っているところをスカウトされたって。ドラマティックだな」

私のプロフィールにまだそんなこと書いてあるんだ。あの時は頭が変で、偽物の曇り空から太陽が見えて。あの時はなにを歌ったんだった? 

「カナリアが囀るようだって。聴いてみたいな」

デパートのカナリアを見にいくことを思いした。

「貴女のエージェントに電話しますからね。いいですね?」

いいですね? なんて。強引な男だな。まあこういう仕事するんだから強引じゃないと。男は電話で、契約とかの話をして、あと三年あるって聞きだして、それは私も知らなくて、じゃあなにかコラボレーションできるかもしれない。歌えるモデルとして、楽器メーカーとか、今すぐ思いつけないけど、色々できると思います。うちは企業の広告や、ファッション関係には強いから。

 

 私はカナリアを見にいくために立ち上がる。男はお金を払って、私についてくる。電車に乗って、そのデパートまでついてきて、一緒に屋上のペットショップに上がる。カナリアがいない! 一つ一つの籠を覗く。もっと地味な鳥もいるし、もっと派手な鳥もいるけど。カナリアがいない!

 店主が客と話している。

「カナリアだけに感染するんですよ。うちの鳥は全滅です。ワクチンはできたんだけどまだ高価で」

客は残念そうに帰っていった。スカウトの男は興味を持って、なにがあったのか店主に聞いている。

「新種のウイルスにやられて、カナリアがみんな死んでしまって」

誰かにいわれた、最近。「その歌で人類も救えますよ」。運転手の吉野さんにいわれた。人類が救えるなら、きっと鳥類も救える。屋上の真ん中の夏にビヤガーデンになるところに立った。

 薄雲の中から囀りが聴こえる。何百も何千も聴こえる。モーツァルトの『ハレルヤ』。死んだカナリアが神を讃える歌を大合唱している。私もあとからついて歌う。雲の隙間から太陽のスポットライトが降りてきて、カナリア達も降りてきて、バタバタ宙を舞う。レモン色のもオレンジ色のも赤いのも白いのも、人間の手で作出された。色の。一番声が高いのが、ブリーダーさんのところで見た鳴きカナリア。緑色の。緑色の『ハレルヤ』。

 緑色の雛が二匹ずつ私の両方の手に乗る。あ、あの時、車の中で、ホイールの真ん中にいて、一緒に歌ってくれた。ボーイソプラノの。四匹で違う歌の練習をしている。変なの。こんなに小さいのに死んでしまった。みんな天使になってしまった。最初から羽はあるから便利。羽が生えるまで待たなくていい。なにかの歌詞にあった。「ねえ。歌って。私の背中に羽が生えるまで」。

 誰かが私の肩に手を置く。あのスカウトの男。すっかり忘れてた。

「僕ね、最後まで聞かれないと困るからいっときますけど、名前、優夜【ゆうや】です。名刺、ちゃんと持っててください」

私は雛達に歌を教える。嘴を大きく開けて。音階を教える。一番低いとこから高いとこまで一緒に歌う。風がでてきて、カナリア達は風に巻かれて空に帰っていく。色が全部混じって、グレーがかった水色になる。このペットショップにいた鳥達もきっとあの中にいる。四匹の雛も風と一緒に空へ戻った。ふわふわの羽が落ちてくる。ゆっくりと。

 優夜の方を振り返る。

「私、なんでもやるわ。カナリアを救うため。連絡する」

「ほんとですね!」

 嬉しそうな優夜にサヨナラをいった。私には考えることがたくさんある。カナリアを見ると父を思いだしそうになる。触発されるといって、デザインを描く時、よく画像で観ていた。狂ったように鳴くカナリアを。それからナイチンゲールを。今日はうちには帰らない。私は学校にいってないから友達がいない。親戚のところにいったらすぐチクられてしまう。

 ポケットの中で電話が鳴った。運転手の吉野さん。

「お嬢さん、どこですか?」

知らない。ここって、どこ? 父だったら絶対でなかったから、それは正しい作戦。

「お父様が心配なさって」

知らない。そんなこと。電話を途中で切って、店主にお悔やみをいって、デパートを背にしてまっすぐ歩く。ホテルがある。俳優が飛び降りて死んだところ。四十七階から飛降りてプールサイドに落ちた。魅惑的なできごとで、一時私はそのことに夢中になった。三十一才だった。双極性障害で。私のと似た病気。前からじゃなくて、後ろ向きに飛んだことの衝撃さが私を一番惹きつける。

 一人でチェックインした。荷物がなにもない私をじろじろ見る。私は病気で学校にもいってないから幼く見える。身分証の提示を求められた。ホテルに泊まるのに身分証はいらない。私はクレジットカードだけだした。それでも身分証を求められたら、ここには泊まらないつもりだった。

 

 一人でベッドに座った。一人でいたら、父のことを思いだす。私は生まれた時から父のものだった。父だけのものだった。週刊誌の写真を思いだす。なるべく上の階にしてもらった。窓辺から地上を見た。ここは四十五階。プールに黄色いライティングがしてある。もう薄暗い。混乱したら考えちゃだめだって。いわれたのに。もういいやって思って。思いっ切り思いだそうとしてやった。

 最近は私は一度いったら父が触っただけで何度もいくようになった。何度も触られて、私はすっかり疲れて、いくのに疲れて、身体が震えて、身体が痛んで、父が私の身体を横にして、私の足の間の一番奥のところに自分の足を擦り付けて、私はまた何度もいって、父がカナリアみたいな声だって、もっと聴きたいって。私はこうやって育った。父の胸で。

 電話が鳴った。井川さんだった。

「加南さん、今どこですか?」

知らない。みんながどこかって聞く。私は知らない。

「吉野さんから電話があって。こっちにいるんじゃないかって」

あの時、蛭に吸われた痕が醜くなって、まだ痛む。警察官だったら私がどこにいるか分かるのかな? 私は電話を切ろうとした。

「待って! 俺、今日は仕事だけど、明日なら会えるから」

会ってどうするの? 

「会ってどうするの?」

明日中、一人でいたら、きっと寂しい。絶望的に。街を彷徨って。

「君を一人で置いとけない」

私、大人だし。

 レモン色のカナリアが窓枠にとまる。こんなに高くまで飛んでこられるのかな? 見ていたら少しずつ姿が薄くなって、消えてしまった。そうだ、私にはやることがある。カナリアは忘れないでっていいにきた。

「私、明日はやることがあるから」

あのモデル・エージェントの男、なんて名前だった? すぐ忘れる。ポケットから名刺をだした。優夜。

「私、明日はほんとにやることがあるから」

「俺は君に会いたい」

「会ってどうするの?」

また同じ質問。馬鹿みたいに川の中にいて、強健な腕で水から引き上げられた時のことを考えた。

「私、カナリアを助けるために働くの」

「どうやって?」

知らない。

「寄付を集めたり、そういうの」

そうだ、叔父さんにも寄付してもらおう。あの宝石屋、お金ありそうだし。そんなことしたら捕まっちゃう。そうだ。警察。

「私、貴方に会ったら捕まってうちに戻されるの?」

「君の嫌がることはしない」

2021年5月8日公開

© 2021 千本松由季

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