シルクロード 〜 残された道 〜

西向 小次郎

小説

3,479文字

とある実験のさなか、滅亡したテキス島。その研究員らが自らの蘇生用に作成していたプログラムRTCs (Return Technology Classics)が漏洩し、世界が混沌と化すこととなった。研究員らも蘇生を成功させるが…

システ教授の指示のもと、その研究は行われた。研究目的は、食糧不足の解消という大前提があったが、副産物として、2000年後の地球に立つことの出来る可能性があった。対立していたのはメテオ教授。人道を逸脱する行為であると糾弾。しかし、人間のもつ性格に沿って、研究は実行された。

研究の記録に関しては、完全に消失している。

唯一、システ教授からメテオ教授に書かれた封筒のみが厳重に管理され、現在に残っている。

その歴史を紐解く鍵がシルクロード伝説にあった。

 

「あまりにもばかばかしいなぁ、誰だこんな記事を上げたのは」

 

月刊『モー』の編集長、実咫等葉みたらば想志そうし (52) 独身。休日は双眼鏡をぶら下げ、東京八つ目の不思議を探している。かなりオタッキーな男だ。

 

富岡とみおかくんですよ」

 

アイドルブロマイドの隙間に実咫等葉の茶を置いたのは給茶係のながれゆかり (29)  女性でこちらも独身。現在はライターも務め、ライター名は、げんごろう。

 

「げんちゃん目撃?」

 

目撃というのは『モー』編集部内では本当に?の意味で使われる。

 

「んー、編集長が出社した時間の30分前くらいに。あわててたから入稿分かと思ってました」

 

選び抜かれた香水の為せる技だろうか、僅かながら湯気に虹が浮かんだ。

 

「んなわきゃない。富岡があわてたのは、昨日あたりげんちゃんの夢でもみたからじゃないか?」

 

このあたり、流石の実咫等葉編集長。スイカ割りを横一文字で成功させる剣客の読みは都市を俯瞰するだけに留まらない、月刊『モー』の大黒柱たる所以である。

 

「どうですかねぇ。もう少し私生活が垣間見えると判定も出来ますが、なーんかジメッとしてますよね。姿勢悪いし」

 

手厳しいご意見。それもそのはず。パンツを縫っているのですから。あわてていると二重三重、四重五重、パンツを重ね着するんじゃないですよ。分かりますよね。

 

「今ごろパンツでも縫ってるんじゃないか?」

 

オイッ。そんな適当があるかい!

 

「戻ってくるのかなぁ?」

 

置いた!置いたよメモ!

 

「ない!俺のスティックシュガーがないぞ!」

「新品の箱、まだありますけど?開けます?」

「怪事件だ。今すぐ事務所のなかカメラ回して!スマホでいいから!」

「目撃?」

「目撃だよ!」

 

一般的には大袈裟に映るかもしれないが、月刊『モー』に所属する者にとっては、よくある光景である。流さんは初めてっぽいが、上手く状況を収められるだろうか?

 

「流、こっちだ!」

“カシャ”

「アレッ、写真撮っちゃった」

「動画だ、動画!早く!現場レポート、現場レポート。本日2021年の4月16日、時刻は8時。私、実咫等葉のデスク上にあったハズのシュガースティックが消失しました。これより、編集部内の捜索にあたります。デスク上にはアイドルの”乙まんたつ”のブロマイドとライター富岡の原稿が並んでおります。本来シュガースティックは、このカップに収納されていました。映して!…空です。おそらく、これは異星人による我が編集部への襲撃によるものと思われます。ヘタをすると、富岡隊員は既に異星人によって連れ去られた可能性もあります!早朝の富岡隊員を目撃した人物がおります!流隊員カメラ変わって!」

「ハイ、隊員の流です。富岡隊員を目撃した時刻は7時を少しまわった頃でした。向こうの編集部の扉を開けて、そのまま実咫等葉編集長のデスクに向かったと記憶しております

「実咫等葉隊長

「実咫等葉隊長のデスクに向かったと記憶しております」

「その時の彼の様子はどうだった?」

「非常にあわてた様子でした。もしかすると、その時には既に異星人からシュガースティックの要求があったのかもしれません。私もそこまでは頭が回っていませんでした」

「いやあ、無理もない。とにかく流隊員が無事で良かった。そうだ、コンタクトをとってみよう!流隊員!電話!富岡隊員に電話だ!」

「ハイ」

「異星人の鳴き声が収録される歴史的瞬間です!」

…プルルルル

「繋がりました!」

「良かった。まだ成層圏内にいることは確かなようだ」

…プルルルル …プルルルル …プルルルル

「実咫等葉隊長…」

「これはやはり…」

「私たち、月刊『モー』隊員は、3コール内で電話に出るというルールがあります。既に5コール、6コール…7、8、

「そのまま数えて!サインかもしれない!」

「9、10、11、12、

“こちら富岡の携帯です。音声ガイダンスに従って、メッセージをどうぞ。それでは、3、2、… ”

「12コール目で留守番電話に切り替わりました!」

「とみおかー!!!たっしゃでなー!!」

「富岡隊員、異星人のレポート、上げて下さいね!…隊長どうしましょう?」

「緊急招集だ!全隊員を招集し富岡隊員の亡骸を探し出す!」

「分かりました!」

 

お気づきと思われるが、私富岡、本日休日である。留守番電話の内容からして流さんに特集を組ませるようだ。こうゆう時は、連絡が来るまでほっとくのが吉。なんたって、月刊『モー』なのだから。やっと長期休暇だ…。

 

「現場に残った富岡の原稿!これは異星人が何者かを伝える富岡最期のメッセージで間違いない!」

 

ライターNo.〇〇一 深海ナカト

「シルクロード伝説。ちょっと僕の専門外ですねぇ」

深海ナカト (40) 男性、既婚。”ジンジャー&ジンジャー” で、一躍刻の人となる。普段缶コーヒーしか飲まないので、編集部内では”ポッカ”や”ボス”などと呼ばれている。

 

ライターNo.〇〇二 ガルゾウ

「えっと、、なんスカ?」

ガルゾウ (40) 男性、既婚。”ギラつくバイクツーリング”の編集長でもある。とにかく写真資料をめちゃくちゃ溜め込んでいるのでお世話になることもしばしば。

 

ライターNo.〇〇三 零封めん

「空いてますよー」

零封めん (37)男性、既婚。”妖怪平手打ち”の取材中に本当に妖怪らしき写真を撮ってきた男。”目撃”という言葉は、その時の一声によるもの。本人は平手打ちより写真を撮ったことを後悔している。

 

ライターNo.〇〇四 説明書黄泉

「げんごろは?」

説明書黄泉 (35)女性、既婚。流が入社するまでは紅一点を務めていた。現在”まなまわり”という連載記事を入稿されている。二児の母。

 

ライターNo.〇〇五 ぼーだほん

「海外特集?」

ぼーだほん(38)男性、独身。とりあえずサッカーが好き。ベッカムが好き。ロナウドが好き。海外が好きな男。海外から帰ると落武者の様なヘアスタイルになっている。どうやら向こうではちょんまげスタイルになっているとのこと。

 

ライターNo.〇〇六 富岡一丁

消息不明

富岡一丁(25)男性、独身。”同時多発冥界”にて月刊『モー』の読者投稿記事賞を受賞する。掲載記事がその月の一番人気記事となり、月刊『モー』のライターとしてライターデビューする。今回のシルクロードも同時多発冥界にて入稿予定だった。

 

ライターNo.〇〇七 げんごろう

「実咫等葉編集長より異星人入りました!」

げんごろう(29)女性、独身。今回遂にライターNo.〇〇七の登録となった。説明書の”まなまわり”が好きで、必ず取材に来るだろう場所の予想を編集部に送っていた。3号連続の的中で月刊『モー』から表彰状を頂く。実咫等葉編集長曰く、普通に霊能者らしい。

 

こうゆー人物説明って意外と読んじゃいますよねー。

 

ライターNo.〇〇〇 実咫等葉想志

「今回コレこうや!」

実咫等葉想志(52)男性、独身。自叙伝に”上京七不思議””あきらめらら””ただいま”がある。いらない出費にはとことんうるさい。そのくせメシには時間と金を惜しまない様にとの指示あり。なんだかんだで浪費家。太っている。

 

ガッケンシドモ、コレガアタリダ。

 

スプリガン、正確にはスプリングマンであった。スプリングとは、ビョインwビョインwのあれな。ダイハードではなく、ダイオードでもない、ダイデードだ。

 

「ここから先は異星人との接触なしには無意味なこと。しかしなぁ、諸君も知っての通り、圧倒的に無力だろ。不都合というのは。そいで、用意はしてある。富岡には伝えて無かったが、私が考案した対異星人用体術。題して、卑劣。耳障りの悪いこと、それを超えて理解。馬鹿タレの言葉、調べようではないか」

2021年4月16日公開

© 2021 西向 小次郎

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