カローナに乗って

西向 小次郎

小説

905文字

映画「街の上から」がすごく良かったので、少し対抗心が湧いた。

「つうか、オマエ誰だよ?」

この展開に行き着くまでには、それなりに苦労した。

「誰って、アナタもその言い方は無いんじゃないでしょうか!?私は私の思ったままに言ったまでの話でしょ?」

田舎道。車内。お互い怒号の飛ばし合いとなった。

変なところに一人でほっつき歩いてる女が居たから声を掛けてみただけだったのに。

話を聞くと、一人で花見をしたらしく、その調子で山道を登って来たらしかった。

「変でしょうか?」

女は、僕が声を掛けた理由をひどく気にしているようだった。

「変ではありません。すみません!珍しいかったので、あれですよ、僕が声を掛けること自体が珍しいことってのもあるんですよ」

初対面にて、僕は道に迷った女性を助けた側の人間のハズ。ええと、やっぱり変だ。

「普通ですか?」

少し話を変えようとラジオを回した。

「僕も似たようなことしたりしますよ。ただ、車に乗せて貰える算段がないんで無茶に足を延ばすことはしませんが、あの、別にあなたをバカにしたいわけじゃないですからね?」

やっぱり変だと言い直した方が良かったかもしれなかった。自分の発言をフォローするつもりが、余計に侮辱的とも…いや余計とかつけると更におかしな反感をかう。女のスマホのバイブが何度か鳴った。どれだけ山の中だったか分かるだろうか?

「私、この道歩いて来たんですね。時間を遡る感じがします」

遡ってはいないでしょ。

「結構時間掛かったでしょ?お腹空きませんか?もうすぐ、コンビニがあるんですよ」

僕の記憶の中に、コンビニが初めて登場した時があった。わざわざコンビニに家族揃って車で出掛けた。

♪〜有吉さんご結婚のニュースです。

山を降りた。一つ目の信号。

「私、忘れ物をしたかもしれません」

「どこに?」

「分かったら忘れ物って言わないですよね」

当たり前みたいに言われたが、僕もその意見は押したい。

「何忘れたんですか?」

「イヤフォンを」

時間を遡る。岩石。

「分かりました。まあ、イヤフォンとかって結構高いからね」

「貰い物なんです」

貰い物。……

「重要アイテムですね!」

その時だった。

「僕も何か忘れてそうだ。しかも、全く思い出せない。なんだったかな…」

僕らは、その後それぞれの忘れ物を探した。

2021年4月14日公開

© 2021 西向 小次郎

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