「おめぇら、クセーぞ?」
故郷『岱明軒』の味と全く同じ味。四月。空助は薫風討伐隊シリアスに囲まれていた。
「薫風隊一番隊隊長もっぱらの空助だな?」
「こんな狭いとこで三対一とは、帝国府もいよいよだぞ」
『ラーメンショップどじっこ』の出入り口まで座席数にして5席。その3席目に一人、それを超えて8席目に一人、更に店主。
「帝国府防衛省長官の命令だ。悪く思うな」
「おめぇらなぁ、薫風隊が解散したことくらい知っとるっぺ?らーめん食って、何が悪かと!?」
対抗の構えをみせるも、膝が抜け、思考が停止を始める。
「わざわざ取り寄せたんだ。なまゆを、やひりわ…………」
「おまえ、今寝てたよな?」
空助の頭の中、”あたりめーだ”を何回連呼しただろうか?
「それ、起きろって言うのが普通ですよ」
一日に5食も6食も喰わされて、動き回った挙句の無音静止。
「いい加減にしろ!」
「そりゃ、アンタだ。千日手だよ。何真面目な顔して居座ってんだい」
「おれは特別だからいいんだ」
「先にソレ言っとけ」
「……てたほうがむにゃむにゃ」
「空助、空助!」
薫風隊特有の脚香が漂う。
「クッセ、クッセ、ゴホッゴホッ」
「空助!おれだ!」
「おめっ?まっぱの同人か?」
「久しぶりじゃねぇか!」
「むー。薫風隊が帝国府相手に簡単にやられすぎてる」
「それもそうだが…空助!帝国府の奴等はここ数日求人誌を配布してやがるんだ」
「求人誌!?」
「あぁ。ゴミ当番に風呂掃除、朝、昼、晩のメシの用意までさせられて。まるで地獄を見てるようだぜ」
「薫風隊の弱点を突くやり方か……なんて真っ当な奴等だ!」
「毎日パンツを履き替えさせられるんだ。3日目のしっくり感を知らねーんだよ!」
「シッ!誰か来るぞ、」
「消臭隊の奴等だ」
「クンクン…チッ、脚を出せ!」
「へいボス!」
「おまえもだ、脚を出せ!」
「おれの分はいいから、コイツに分けてやってくれよ」
「チッ、ほら!」
「すまねぇ」
「一時間後、今日はお前らが風呂掃除だ!早めに準備しとけよ!分かったか!」
「(あんまりだ…)わ、分かりました」
「へいボス!」
「今日の入浴剤はジャスミンだ!ラベンダーじゃなくて良かったな」
「あ、アンタ、名前は?」
「名乗るほどの者じゃないさ」
「(キザな野郎だな)じゃ、じゃあ、じゃあ、、じゃあじゃあめんってのはどうだ?」
「じゃあじゃあ麺?薫風隊はそんなんが好きらしいな。かまわん、早く準備しろ!」
「へいボス!」
「(準備ったって、ボタン一つ押すだけだろ?)い、一時間後、それまでは?」
「世間話でもしとけばいいだろう?」
「た、例えば?」
「例えばって、薫風隊は世間話も出来ないのか?」
「薫風隊は、薫風隊は、心を許しちゃいけないんだ」
「(空助!そこまで言うことはねぇ!)」
「薫風隊なぁ。まぁ、指定討伐隊ということだから、実際には我々にも知らされないこともあるのかも知れん。しかし…よくにおう奴等だ」
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