薫風-Kunpū-

西向 小次郎

小説

1,190文字

大戦のさなか、僅か数十名の部隊で帝国軍を壊滅寸前にまで追い詰めた集団があった…その名は『薫風隊』
かろうじて戦争に勝利した帝国府は、彼らのチカラを恐れ討伐に乗り出した。
今、本当の薫風を知る者は少ない。

「おめぇら、クセーぞ?」

故郷『岱明軒』の味と全く同じ味。四月。空助は薫風討伐隊シリアスに囲まれていた。

「薫風隊一番隊隊長もっぱらの空助だな?」

「こんな狭いとこで三対一とは、帝国府もいよいよだぞ」

『ラーメンショップどじっこ』の出入り口まで座席数にして5席。その3席目に一人、それを超えて8席目に一人、更に店主。

「帝国府防衛省長官の命令だ。悪く思うな」

「おめぇらなぁ、薫風隊が解散したことくらい知っとるっぺ?らーめん食って、何が悪かと!?」

対抗の構えをみせるも、膝が抜け、思考が停止を始める。

「わざわざ取り寄せたんだ。なまゆを、やひりわ…………」

 

「おまえ、今寝てたよな?」

空助の頭の中、”あたりめーだ”を何回連呼しただろうか?

「それ、起きろって言うのが普通ですよ」

一日に5食も6食も喰わされて、動き回った挙句の無音静止。

「いい加減にしろ!」

「そりゃ、アンタだ。千日手だよ。何真面目な顔して居座ってんだい」

「おれは特別だからいいんだ」

「先にソレ言っとけ」

 

「……てたほうがむにゃむにゃ」

「空助、空助!」

薫風隊特有の脚香が漂う。

「クッセ、クッセ、ゴホッゴホッ」

「空助!おれだ!」

「おめっ?まっぱの同人か?」

「久しぶりじゃねぇか!」

「むー。薫風隊が帝国府相手に簡単にやられすぎてる」

「それもそうだが…空助!帝国府の奴等はここ数日求人誌を配布してやがるんだ」

「求人誌!?」

「あぁ。ゴミ当番に風呂掃除、朝、昼、晩のメシの用意までさせられて。まるで地獄を見てるようだぜ」

「薫風隊の弱点を突くやり方か……なんて真っ当な奴等だ!」

「毎日パンツを履き替えさせられるんだ。3日目のしっくり感を知らねーんだよ!」

「シッ!誰か来るぞ、」

「消臭隊の奴等だ」

「クンクン…チッ、脚を出せ!」

「へいボス!」

「おまえもだ、脚を出せ!」

「おれの分はいいから、コイツに分けてやってくれよ」

「チッ、ほら!」

「すまねぇ」

「一時間後、今日はお前らが風呂掃除だ!早めに準備しとけよ!分かったか!」

「(あんまりだ…)わ、分かりました」

「へいボス!」

「今日の入浴剤はジャスミンだ!ラベンダーじゃなくて良かったな」

「あ、アンタ、名前は?」

「名乗るほどの者じゃないさ」

「(キザな野郎だな)じゃ、じゃあ、じゃあ、、じゃあじゃあめんってのはどうだ?」

「じゃあじゃあ麺?薫風隊はそんなんが好きらしいな。かまわん、早く準備しろ!」

「へいボス!」

「(準備ったって、ボタン一つ押すだけだろ?)い、一時間後、それまでは?」

「世間話でもしとけばいいだろう?」

「た、例えば?」

「例えばって、薫風隊は世間話も出来ないのか?」

「薫風隊は、薫風隊は、心を許しちゃいけないんだ」

「(空助!そこまで言うことはねぇ!)」

「薫風隊なぁ。まぁ、指定討伐隊ということだから、実際には我々にも知らされないこともあるのかも知れん。しかし…よくにおう奴等だ」

2021年4月3日公開

© 2021 西向 小次郎

読み終えたらレビューしてください

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

この機能は廃止予定です。

タグ

この投稿にはまだ誰もタグをつけていません。ぜひ最初のタグをつけてください!

タグをつける

タグ付け機能は会員限定です。ログインまたは新規登録をしてください。

作者がつけたタグ

---

"薫風-Kunpū-"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る