柚佳は明るくて、よく笑って、ヘンな本ばかり読んでるちょっと変わった女の子で、柚佳みたいな女の子はきっと他にもいるんだろうけど、そういう女の子でぼくが知っているのは柚佳だけで、ぼくは彼女に魅了されてしまった。
柚佳より可愛い子なんて沢山居るし、それに美人って感じでもないからあいつの見た目で「萌え!」って思う所なんてほんと数える位しかなくて、でもその分、そういう所が強烈に愛おしかった。って思い出したらまたちょっと「ぅえぇぇぇ……ひぐっ」ってぶり返した。
悲しみが真夜中の神社にビビってた気持ちを凌駕する。
ぼくは上手くやれなかった。
大好きだったから愛情を注いだ。
でもダメだった。
そのことがぼくに無力感を与える。
石畳の道を進んで行くと、階段の前に出た。ここまで来たら当然、とぼくは「いーちにーさーん」とクセで数えながら十三段を上りきると、息を吐いて顔を上げた。
石床が3mほど続いた先に、木造の立派な本殿が姿を見せる。
それは闇夜の中で圧倒的な存在感を持ってぼくを威圧する。けど負けない。鼻水を拭って賽銭箱に向かう。折角来たんだから祈ろう。願いを叶えてもらうんだ。苦しいときの神頼みだよ!! 涙がこぼれる。
でも近くに行ったら判った。
賽銭箱だと思っていた物は、三つ並んだ木箱だった。
そして箱の上には、赤い着物(べべ)着た金髪のおかっぱ頭の女の子が素足で寝転んでいる。
おかっぱ頭×赤い着物×神社×深夜から、導き出される解は「こんなのまるで怪談じゃないか!」しかないから、ぼくは一応その言葉を心の中で繰り返し呟く。だけど棒読み。
理由は分かる。この子は何か怖くない。感情は直感の鏡で、ぼくの心が不安で波打たないのはきっとそういうことなのだ。そしてそんなことより、素足が寒そうなことの方がぼくは気になる。
寒そうな女の子がいるんですよ〜。
ぼくがそう思った瞬間、少女はガバッと起き上がると
「なーにー! やっちまったな!」
ヘリウムガスを吸ったような声で叫んだ。
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