第七章 第三節 決戦

暗黒竜の渇望(第27話)

西向小次郎・らんた

小説

1,553文字

あれが暗黒竜の城……。
大軍の騎馬隊が固唾を呑んだ。
その城には人柱にされたもの、石化された人間の首、ありとあらゆる毒草……。
様々な魔の彫刻。
醜悪で尊大な邪悪が集大成させればこうなるのであろうか。寄せ集めた悪の美の結
晶でもあった。城下町にはだれもいなかった。彼らの井戸を見ると毒匂がただよい、
緑の液体があった。
つるしてある肉には人間とおぼしきものがあった。丸焼きにされたものもある。
これが魔界……
そこに人間が喜びを感じさせるものを期待することが間違っていることはわかって
いた。しかし、あまりのおぞましさに吐いた騎士がいた。

そこにおどろおどろしい声が響き渡る。
―偽善に満ちた人間よ、闇に消え去るがよい!
城を背景に翼をそなえた巨大な3首の暗黒竜が現れた……。
それぞれの口の口腔に赤き光を充満させ、瘴気が充満させる。
三口から巨大な光が放たれた。悲鳴を上げながら半狂乱に逃げ込む騎兵達。
「間に合え!」
ミスラの光をほとばしり全身を光に染め、光を爆発させた。
赤き光の一部を受け止め発散させた。だがほとんどの部隊は赤き光と共に消えてい
った。残されたのは光の大蛇の傍にいた小隊のみであった。
光の力を弱めてみると、そこに城下町の姿はもうなかった。代わりに焦土と化した
クレーターがそこにはあった。
だが、……絶望的光景はそれだけではなかった。
「魔がもう一匹現れたぞ!」
なんと騎兵隊が自分に弓矢を放って来、さらに剣で己の体につきたてようとするで
はないか!
声が轟いた
―くかかかか。それがお前の守りたい人間の正体よ。我と交わりし者よ。
なんだって!?
いや……やっぱり……?
ある程度覚悟していたアルトゥスだがショックは大きかった。
―あの者の血がそなたの体の一部となっていた。私は光の力で増幅させたのじゃ。体
内に剣を納めた状態でミスラが思念を通じて答える。
―実は自分はすでに竜になって飛び立った時、ミスラの力によってヴィシャップ、い
やマーサ時代の記憶が瞬時に蘇っていたのであったが。大蛇と交じったおぞましき夜
の記憶も。
……。
「ああ、知ってたさ」

開き直った。
「ああ、そうさ。お前と交わったことも。その血のおかげでこうして龍になったこと
も。この忌まわしき『血』によってな!」
騎馬隊が騒然とする。
「我らの主が魔だったなんて!」
「なんてことだ、この世はもう終りだ」
「中から魔が取り込んでいたのだ。これは罠だったのだ」
―断じて違う!
騎馬隊に一喝した。
―愚かな人間よ、お前らから先に死ぬが良い
破壊の悦楽を求める竜が再び口腔から瘴気がこもった赤き光が充満し、放たれた。
恐慌状態に陥る騎馬隊。
それを光の渦を作り出し、再び発散させる。
騎馬隊を守ったのだった。
「どんな姿であろうと、俺は魔を滅ぼしに来た。信じてくれ。」
「いくぞヴィッシャップ!」
逆にこちらが口腔に光の渦を溜め込み、吐き出した
巨大な光の渦が一直線に暗黒竜に向かっていく。
それを今度は暗黒のバリアで跳ね返そうとする。
だが……。
光の力はどんどん強まっていった。
行け! 俺の思い。俺の希望! 光に帰るんだ。魔女マーサ。
知っていたのさ。血をもらい受けたときに人の血が混ざっていることを。絶望と悲
しみの中に愛があったことを。その心を受け止められない自分がいたということも。

騎馬民族がそれを絶望と闇に変えてしまったことを――
だから光に返す義務があることを。この暗黒竜は人間の憎しみを反映した姿にすぎ
ないということを。
―届け!俺の思い!
闇のバリアは耐え切れなくなり、光の筋を真っ向から浴びた暗黒竜。
やがて、言葉では言い表せない断末魔が大地に響き渡った。
光の筋がなくなると暗黒竜はそこにはもういなかった。城ごと光が消し去ってしま
ったのだ。
赤みがかった光の大蛇は力を失い、元の姿に戻った。だがそれ以降の記憶はなかっ
た……。

2020年12月6日公開

作品集『暗黒竜の渇望』第27話 (全39話)

© 2020 西向小次郎・らんた

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