第二章 第一節 闇の安らぎ

暗黒竜の渇望(第6話)

西向小次郎・らんた

小説

1,776文字

闇の者は闇があれば暗黒の宇宙でさえも自由にどこへでも行ける。それは精神体で
もあり、肉体でもあった。闇にとろけさせる時が至福の時であった。闇の者が闇その
ものになり同化するときは、闇はこれ以上の絶望を与えることはない。闇の中にいれ
ば喜怒哀楽も何もない。それはすべての平和。すべての安息も約束され、もはやそこ
には不幸はなかった。魂はこの世界では生きない。死にもしない。永遠に存在し、あ
り続ける。
それが最高神アーリマンの究極の世界であり、求める世界であった。それが人間を
はじめとする全ての生き物の福音であることを求め続けた。
この世は常に戦いに満ちた修羅であった。修羅ならば闇であるほうがよいではない
か。人間、希望を持ってはいけないのだ。新たな光と希望は人間を不幸にし、また魔
の大好物となるだけ。
闇のものは闇からこの世の闇に出るとき、喜怒哀楽を復活させる。ただし、闇であ
るものの本能からか憎悪が先行しがちであるが……。
タルウィのその1人である……。
―闇との友情
ザリチュは魔になったばかりのタルウィに実戦を教えることとした。
「人の作りし矢がささるようではいずれ命を落とす。そこでお前に実戦を教える」
それ以来、洞窟の魔で特訓が始まった。
タルウィは「返り討ちにしてくれる」と言い、不気味な咆哮を上げ、翼をたためか
せ突進していく。
だが、爪ははじかれ逆にザリチュの爪が翼を切り裂く。
次に、尾で打ち付けられ、動かないところに炎を浴びせられた。
最後に死の眠りの息を喰らうタルウィ。
……こうして何度も瀕死になっては闇のしずくでもって元に戻った。それは死をも

覚悟しての特訓。特訓の最後にはザリチュが瀕死を負うことも少なく無かった。
洞窟に不気味な咆哮や笑い声、断末魔は幾度も無く響き渡る。
闇の者どもは笑みを浮かべながら見ているだけである。
闇の者にとって破壊と殺戮は悦楽であり、歓喜であった。歓喜のもとで闇の力を高
めていく。
タルウィは特訓により鋭利な方法による爪で切り裂く方法、翼の展開、効率的に尾
でなぎ倒す方法、不気味な咆哮を上げる方法など。牙で人間を破滅させる方法。
やがてその身で炎のみならず高温の熱風を撒き散らすことも出来るようになった。
さらに2匹は時折特訓の成果を人間界に出ては遊戯感覚で実戦し、様々な被造物を
破滅させ、植物を滅ぼし、砂漠に戻した。タルウィが持つ人々を眠らせる息は実は毒
草をも生み出す息であることをザリチュに特訓で身をもって教わった。2匹はときお
り砂漠で特訓の成果を試すべく死の息を撒き散らした。
タルウィとザリチュは砂漠を始め毒草を成長させ、さらに人々を絶望においやるこ
とに成功した。2人の間には次第に友情が生まれていた。
全てを破壊した土地をタルウィとザリチュはそこを「平和」と呼んだ。そこにはも
う人間も闇のものどもの戦乱も何もなかった。
人や家畜を食い殺しては成長し、とうとうザリチュの体躯はより禍々しくねじれた
角が生え、黒き鍵爪がさらに伸び、背には青ががった黒いせびれが次々生えてきた。
暗黒竜は環境により変化する生き物でもあるのだ。
―くくっ。あのころのザリチュに戻りつつあるな。それでこそわが本望―
タルウィがゆがんだ笑みを浮かべた。
―これで再び友と交われる。闇の悦楽が楽しめるな……。
ザリチュは「闇」と「死」の友人たるその笑みを不思議がることはなかった。闇の
ものにとって惨酷とは糧にしかならなかった。たとえそれが背徳や企みであろうとも

砂漠化と破壊の功績は闇の世界中に轟き、暗黒竜王に認められた。タルウィはいま
やとうとう師であり友ともいえるザリチュと同じ7大大魔になる閲覧式を控えていた
。初めて7大大魔の長である暗黒竜王アーリマンを見ることがとうとうできるのであ
る。
全てのダエーワが暗黒竜王の姿を見られるわけではない。闇の中の闇であり相当の
魔力の闇の力でないと配下になるどころか閲覧すらままならないのが現状だった。
ザリチュが言った。
「タルウィ、そろそろアーリマン様がお見えになる。闇の間で待っている。今日はお
前を大魔にする日だ。失礼のないようにな。それから今日からお前を大魔タルウィと
呼ぶ。大魔としてふさわしい者となって闇の者を増やし、闇の者を率い、闇の福音を
もたらすようこころがけよ」
―この日を待っていたのだ。タルウィがタルウィに戻り、わが友愛となる日を。

2020年12月6日公開

作品集『暗黒竜の渇望』第6話 (全39話)

© 2020 西向小次郎・らんた

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